あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 part-4
2021.01.17

あっと! ヴィーナス!!(52)


partー4


「ゼウスの神殿へ行くには、二人の女神にやってもらおうか」
「ですが、我々には呪縛が掛かっております。移動の神通力がありません」
 ハーデースの神殿でもそうだが、天上界以外の自分の領域でない場所では神通力は制限されるのが普通だ。
「おお、そうだったな。今解いてやる」
 何やら仕草をすると、二人の女神の呪縛が解けた。
「ありがとうございます」
「それでは頼むよ」
「かしこまりました」
 二人の女神が祈りを捧げると、弘美の身体はゼウスの神殿へと運ばれた。

 突然、弘美たちが姿を現して驚くゼウスだった。
「おお、ファイルーZの姫君じゃないか」
 ヴィーナスとディアナがいるのを見て、
「そなたらが連れて来たのか?」
「左様にございます」
「さて、一応要件を聞こうか」
 斯々然々(かくかくしかじか)と説明する弘美。
「なるほど……。で、アテーナーの説得に応じるとして、当然儂にも利するものがあるのだろうな?」
 と弘美を凝視するゼウス。
「そ、それは……」
 言葉に詰まる弘美。
 ゼウスの考えていることは予想できる。
 それを弘美が受け難いことも分かっている。
 しかし、海底神殿には囚われの愛ちゃんがいる。
 その責任の根本が自分にあることも重々承知だ。
「分かった……好きにすればいいよ」
「そうか……約束だぞ」
 しばらくして、ゼウスの元にアテーナーとデメーテルが呼び出された。
 アテーナーは、最初の妻メーティスが身ごもった折に、その母体ごと飲み込んだのち、ゼウスの額から飛び出したと言われる女神である。パルテノン神殿に祀られているのがそれである。
 デメーテルは、ゼウスの姉でもあるが、ポセイドーンを酷く憎んでいる。
 その二女神を前にして、事の次第と説得を試みるゼウスだった。
「アテーナーよ。そなたはポセイドーンとの賭けに勝って、名を冠したアテーナイと呼ばれることとなった地に、パルテノン神殿を得た。ポセイドーンのことは許してやってくれないか?」
「なりませぬ! 我が神殿においての穢れた行為は言語道断である。許せるはずのものではない」
「そ、それはそうだろうが……なんとかならんか?」
 しかし、答えるように激しく睨みつけるアテーナーだった。
 こりゃだめだ!
 と感じたゼウスは、デメーテルに言葉を振った。
「デメーテルよ。お主が告げ口をしたらしいが……」
「告げ口なんて、そんな言い方はしないでください。見たままを報告しただけです」
「ほんとうに見たのか?」
「私を疑うのですか?」
 こちらも厳しく睨め付ける。
 何せポセイドーンには恨みつらみ満載であるから、弁護側に回ることを期待するのは無理だ。
 ゼウス、しばらく沈黙していたが、
「と、そういうわけだから。儂にはどうすることもできん」
 あっさりと引き下がり、弘美に仲裁失敗を告げる。
「そうか……」
「ともかく、ハーデースの元に報告するがよい。愛君が解放されたなら、再び戻ってきてくれ。約束だからな」
「ああ……分かっている」
 というわけで、海底神殿のポセイドーンに報告する一行だった。
「そうか……だめだったか……」
 それを聞いてうな垂れるメデューサ。
「ともかく約束通り、愛君は解放しよう。それもこれも、すべて自らが招いたもの。潔く運命を受け入れよう」
「そうか……」
 ほっと、安堵のため息を漏らす弘美だった。
 これで、ともかくも愛ちゃんは助かり地上へと戻れる。
 自分は……。ポセイドーンではないが、運命を受け入れるしかないだろう。
 そもそもがファイルーZなどというものに名を連ねることとなったのがそもそもの不幸の始まり。
 女にされるわ、あれやこれやされるや……。
「そうだな。この神殿を尋ねた記念に宝箱をあげよう」
 と言うと、人魚に持ってこさせた。
「ちょっと待て! それってあれか? 乙姫の玉手箱って奴か?」
「玉手箱? なんか知らんが……その宝箱は、困り果ててもうどうすることもできない、という状況に陥ったら開けるがよい」
「やっぱり玉手箱じゃないか!」
「きっと役に立つから、持っていきたまえ。ついでだから、邪魔なアクアラングも持って行ってくれ」
 ということで、強引に宝箱を持たされた。
「女神たちよ、よろしく頼む」
「かしこまりました」

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v



にほんブログ村 本ブログ 小説へ
にほんブログ村



梓の非日常
2021.01.14

梓の非日常

只今、執筆中です(*^^)v
第二部/第八章・小笠原諸島事件新連載(毎金曜連載)

以下、ホームページ版から順次転載します。

新連載!
梓の非日常/第二部 第八章 小笠原諸島事件 (一)

学園小説/梓 第一部

・序章・ 

・第一章 

・第一章・生まれ変わり
・第二章・スケ番グループ(青竜会)
・第三章・ピクニックへの誘い
・第四章・スケ番再び(黒姫会)
・第五章・音楽教師走る
・第六章・ニューヨークにて
・第七章・正しい預金の降ろしかた
・第八章・太平洋孤島事件
・第九章・生命科学研究所

学園小説/梓 第二部

・序章・命つむぐ
・第一章・新たなる境遇
・第二章・宇宙へのいざない
・第三章・スパイ潜入!
・第四章・峠バトルとセーターと
・第五章・別荘にて
・第六章・沢渡家騒動?
・第七章・船上のクリスマス(1)-(6)


↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v



にほんブログ村 本ブログ 小説へ
にほんブログ村



あっと!ヴィーナス!!第四部 第一章 part-3
2021.01.13

あっと! ヴィーナス!!(51)


partー3

 そうこうするうちに、ポセイドーンが戻ってきた。
 その表情は暗く、打ちひしがれている。
「どうやら、負けたみたいね」
 愛ちゃんが弘美に囁く。
「そうだね」
 ポセイドーンは、玉座に着くなり
「負けたよ」
 と一言だけ呟いた。
 しばらく黙り込んでいたが、ぼそりと話し始めた。
「アテーナーは、オリーブの木を出してきたよ」
「石油、燃える水は出したんだろ?」
「ああ、だが負けた」
 うなだれているポセイドーン。
「明かりの燃料ならオリーブで十分だし、暖房用に燃える水を使いたくても設備がな……」
「ああ、ボイラーという燃焼専用のものが必要だからな」
「空飛ぶ機械や海に浮かぶ鉄の船も説明したのだが、皆一様に『なんのこと?』とばかりに首を傾げるばかりじゃった」
「そりゃそうだろう。飛行機や蒸気船が発明されたのは、18世紀以降だからな。古代ギリシャ・ローマ時代にはないものだ」
 オリーブの木は、古代ギリシャでは盛んに植樹されて、やがて地中海全域に広まった。
 食料としてだけでなく、明かり用の燃料、化粧品・薬品・石鹸の原料としても利用される。 酸化されにくく、常温で固まりにくい性質のため重宝された。
 スペインとイタリアだけで世界生産の半分以上を生産しており、食事の際にはたっぷりと使用されるのが常だ。
 国際連合旗にもデザインされている通りに、食品油としては断トツの有名度である。
「そっかあ……オリーブは当時としては、万能食品だったんだろうな」
「石油は食べられないものね」
 愛ちゃんが言う通り、古代ではまず生きるための食糧としての価値の方が大切だったのだろう。
「二番手アイテムとして、馬を出してみたんだが、やっぱりだめだったよ」
「済まなかったな。助けにならなくて」
「いや、気にするな」
「で、これから俺達をどうするつもりだ? ハーデースの元に返すのか?」
 肝心かなめのことを質問する弘美。
「それはない! ハーデースは嫁を貰ったんだ。それで十分だろ」
「じゃあ、地上を返して返してくれるのか?」
「まあ、待て。賭けに負けたので、別の頼みごとをしよう」
「まだあるのかよ」
「実はだな……賭けに負けてイライラしている時に、アテーナーの神殿でやっちまったんだよ」
「やっちまった?」
「ああ、こいつとな」
 と、メデューサを見つめる。
 頬を赤らめるメデューサ。
「まさか……?」
「ああ、そのまさかさ」
「それで、どうしろと?」
「神殿での情事を誰かに見られたらしいのだ。それをアテーナーに密告した者がいる。おそらく儂を憎んでいるデメーテルだと思う」
「デメーテル?」
「ああ、儂は気に入ってな、日頃から口説いていたのだが、雌馬に化けて逃げ回っていたのじゃが、この儂も牡馬に化けて近づいて、やっちまったんだ」
「やっちまった、って言葉が好きだな」
「以来儂を憎んで居る」
「そりゃ、誰だって憎むだろ」
「アテーナーは処女神だ。自分の神殿での情事に怒りまくっているらしいのだ」
「それで?」
「さて、ここからが本題だ。アテーナーはゼウスの娘だ。そして君は、ゼウスのお気に入りだ」
「つまり俺に、ゼウスに取り入って仲裁を頼んでくれというのか?」
「そうだ!」
「断ったら?」
「永遠にここからは出られないだろうな。何せ海の底だ、人間が脱出できるところじゃない」
「脅迫するのか?」
「こっちも必死なのだ。アテーナーを怒らせたら、何されるか分らんからな」
「アクアラングがあれば? 出られるぞ」
「タンクの中の空気はもうないだろ。それに水圧には耐えられない。あの亀はシェルターの効果を持っておったのだ」
「あの亀がか?」
「さてどうする? お主はともかく、そこの娘も永遠に出られないのだぞ」
 愛ちゃんを見つめる弘美。
 自分のせいで巻き込まれただけなのに……。
 彼女だけは助けたい。
「分かった。協力しよう」
「そうか、頼むぞ。ただし、そこの娘は人質として預かっておく」
「それはないだろう?」
「仲裁に成功しようが失敗しようがいいんだ。君がゼウスに交渉してくれれば、この娘を解放しよう」
「本当だな?」
「インディアン嘘つかない」
 またそれかよ。
 という言葉を飲み込む弘美。
 機嫌をそこねたら、元も子もなくなるかもしれない。
「分かった。ゼウスに会って交渉してやるよ」
「ありがたい! 今は、呉越同舟(ごえつどうしゅう)協力すべき時なのだ」
 ゼウスが無理難題を言ってくるのは明白であろう。
 弘美にとっては屈辱的な結果となるかもしれない。
 だが、愛ちゃんを解放するには、自分が犠牲になるしかないのだ。

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v



にほんブログ村 本ブログ 小説へ
にほんブログ村



- CafeLog -