あっと!ヴィーナス!!第三部 第二章 partー10
2021.01.02

あっと! ヴィーナス!!(44)


第二章 part-10

「儂が愛君を誘拐し、弘美君を呼び寄せたのには訳がある」
 ハーデースが切り出した。
「訳だと?アポローンのゼウスに対する復讐じゃないのか?」
「アポローンの復讐は、君がここへやってきたことで、すでに成し遂げておる」
「成し遂げた!?どういうことだ?」

「実を言うと、愛君が食べたものには、冥界の果実ザクロが含まれていたのだ」
「どういう意味だ?」
「ザクロを食べたものは、地上には戻れない」
「ヴィーナス!本当なのか?」
「ああ、一応そういうことになっておるな」

「馬鹿な!ちゃんとした人間の食べ物と言ったじゃないか!?」
「ザクロは人間界にあるものと全く同じだ。だから人間の食事と言ったのだ。ただ、冥界で食べたことが問題なのだ」
「結局騙したのと同じだろう!?インディアン嘘つかないって、嘘だったのか?エピメニデスのパラドックスじゃないか」
「パラドックス?ああ、確か『クレタ人はいつも嘘つき……云々』というやつか。自己言及のパラドックスだな。が、嘘つかないという場合は違うだろ?」
「そうなのか?ええい!どっちでもいいわい!!」
「まあまあ、落ち着きたまえ」
 ハーデースが場を取り持つように発言した。
「そうだな。君たちが儂に協力してくれるというなら、地上に返すこと考えてもよいぞ」
「協力?」
「儂がペルセポネーに惚れているのは知っておろう」
「ペルセポネー?」
「ゼウスとデーメーテールの娘よ」
「と言われても分らんぞ」
「分からないなら、黙っているのね」
「だが、ペルセポネーは処女神であることを宣言して、儂のことなど眼中にないのだよ」
「でしょうね。まずは、地の底へ来ようと思う神はいないわね」
「そこで、ペルセポネーが儂の方に振り向くように策を労じて欲しいのだ」
「まさか、ゼウスの娘を篭絡することで、天地海分けジャンケンの時の復讐をするつもり?」
「ちがう!ちがう!!儂は本気でペルセポネーに惚れておるのじゃ」
「本当かしら?」
 一同疑いの目。
「頼む!協力してくれはしまいか?」
「つまり俺らに、恋のキューピッドになれということか?」
「有体(ありてい)に言えばその通りだ」
「具体的にどうすれば良いのだ」
「ここは一番愛と美の女神に手助けをしてもらおう。そのために、愛君と弘美君を餌にしたのだ」
「え?わたしですか?」
 ヴィーナスが意外という表情をしている。
「ヴィーナスの手下にエロースがいるだろう?」
「ああ、アポローンの目の前でダプネーに鉛の矢を討って、アポローンをダプネーに恋慕させるようにした悪戯(いたずら)少年ですね」
「ああ、思い出したぞ。ダプネーはアポローンから逃げ回って、結局追い詰められて月桂樹にしてもらった、という奴だな。おい、アポローン。そうだろ?」
「あ、ああ……」
 苦虫を潰したような表情になるアポローンだった。
 アポローンは女漁りが日常の女好き。
 それがエロースの罠とはいえ、真剣にダプネーに惚れて追い回したのだから。
「ともかく、エロースを呼んでくれないか?」
「いいけど……」
 というわけで、エロースが召喚された。
「なんで僕が協力しなくちゃいけないの?」
 突然冥府に呼び出されて、協力を打診されたエロースは不貞腐(ふてくさ)れている。
「だいたい僕を嘲(あざ)笑ったアポローンの手助けもすることになるんだろ?いやだね!」
 エロースは、その弓と矢で男女の恋心を弄(もてあそ)んで楽しんでいたのだが、アポローンに叱責された恨みがある。
 その復讐で、アポローンを弓で射って操ったのだが……。
「そこをなんとか……」
 ハーデースが懇願する。

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v



にほんブログ村 本ブログ 小説へ
にほんブログ村



11
あっと!ヴィーナス!! 第三部 第二章 part-9
2020.12.29

あっと! ヴィーナス!!(43)


第二章 part-9


 椅子から飛び降りると、ハーデースに向き直った。
「やい!愛ちゃんをどこに隠した!?」
「隠す?」
「そうだ!今すぐ、愛ちゃんを出せ!」
「隠していないが……その者なら、隣の部屋でくつろいでいるがな」
「隣の部屋だとI?」
「ああ、そこの部屋だ。鍵は掛かっていないぞ」
 ハーデースが指さした扉に向かう弘美。
 取っ手に手を掛けようとするが、ヴィーナスが忠告する。
「開けるのか?罠かも知れんぞ」
 するとハーデースが応じる。
「その心配はない!」
「信じられるのか?」
「インディアン嘘つかない」
「お、おまえもかよ!!天上界では、よほどローンレンジャーが流行ってるんだな」
 といいつつ、取っ手に手を掛けドアを開けた。
 そして、弘美の目に飛び込んできたものは?
「なんだこれは?」
 広間の中央にデンと置かれた大きなテーブル。
 その上に、これでもかと並べられた食事の数々。
「まあ、ゆっくりしていきたまえ」
 と、声を掛けたのは、
「アポロン!!」
 誘拐犯の主犯、その人であった。
「あ、弘美ちゃん!遅かったじゃないの」
 と、声を掛けたのは双葉愛だった。
 食卓の末席で、食事を頬張っていた。
「愛ちゃん!なんでだよ!?」
「来るの遅いから、先に食べちゃったわよ」
「た、食べて平気なのか?」
「うん。おいしいわよ」
「確か、神の食事って人間が摂ると不死になるとか……有害じゃなかったか?」
「まあな。人間にとっては危険ともいうべき食べ物だ」
 ディアナが解説する。
「心配するな。愛君の食べているのは、ちゃんとした人間の食べ物だよ」
 アポロンが解説した。
「本当だろうな?あ、インディアン噓つかないって言うなよ。当たり前だのクラッカーもダメだ」
 機先を制して口封じする。
「まあ、私を信じたまえ。愛君の隣に座ればよかろう。そこが人間の席だ」
 指定された席に着く弘美。
 ともかくも、洞窟を歩き疲れて腹も減っていたのだ。
「腹が減っては戦は出来ぬというからな」
 目の前の人間用の食事を手に取る。
 それを見届けてから、二人の女神に向かって、
「ヴィーナスとディアナもどうだね?神の酒(ネクタル)と神の食物(アムブロシア)も用意してあるぞ」
 とアポロンが勧める前に、ヴィーナスが神の酒を既に飲み始めていた。
「ちゃっかりしてるやっちゃな。ヴィーナスは」
「酒には目がないからな」
 ディアナも救い難いという表情をしていた。
「おまえらも飲むか?」
 ヴィーナスが弘美たちに、神の酒を勧めようとする。
「あほか!神の酒が飲めるかよ。不死になっちまったら人生終わりだ。だいたいが、俺達未成年だ!」
 やがて、ハーデースも主席に着いて、宴が始まった。
 弘美も取りあえずは空腹を満たすために、目の前の食事に手を付けている。
「おい。そんなにがっつくと太るぞ!」
「そうそう、せっかくのプロポーションが台無しになるじゃないの」
「知るかよ。空腹を満たすことの方が大事だ」
 仮に太ったとしよう。
 弘美は、ファイルーZリストに載っている人間だ。
 女にされた時に、見目麗しき姿に変身したくらいだ。
 醜態な状態になれば、ゼウスが放っておかないだろう。
 必ず、再び元の美麗な姿に戻すと思われる。
 それを知ったか知らずか、気にもせずに食べ物を口に運んでいる。
「ところで愛ちゃん」
「なあに?」
「どうやってここに連れてこられたの?」
「そうねえ……(としばし思い出そうとする)家に帰って玄関の扉をくぐったら、ここに出ていたのよ」
「つまり玄関扉が、どこでもドアになっていたということか……」
「どこでもドア?」
「分かりやすく言うと、転送装置だよ」
「ああ、そういうことね。でも、どうして私を?」
「人質になっていたんだよ」
「人質……私が?」
「俺……じゃなくて、あたしを連れてくるためにね」
 神の前では『俺』と称する弘美だったが、弘美の前では『あたし』と称している。
 愛ちゃんは、弘美を女の子と思わされているから、その前では俺とは言えなかった。
「さてと宴もたけなわ、本題に入ろうか。アポロン議事進行!」
「え、自分がでありますか?」
「やりたまえ」
「分かりました」
 すると、食事を乗せていたテーブルが、音を立てて床の下へと沈んでゆく。
 代わりに現れたのは、会議テーブルだった。
「ああん。もっと飲みたかったのに~」
 ヴィーナスが名残惜しそうに床の下を見つめている。

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v



にほんブログ村 本ブログ 小説へ
にほんブログ村



11
あっと!ヴィーナス!! 第三部 第二章 part-8
2020.12.25

あっと! ヴィーナス!!(42)


第二章 partー8

「そこはそれ、さっきリレミト呪文使っただろ?あれだ」
「あれはMPが必要だ。さっきのでMPは尽きた」
「たった一回でか?」
「ああ、ドラクエは初心者だからなMPは少ししかなかった」
「ヴィーナスはどうなんだよ?」
「私は、そもそもドラクエの呪文は知らないし」
「ならば神通力を使えよ。それならば無限にあるんだろ?」
「いやなに。最後の城門をくぐったらもはやハーデースの領域だ。我々天上界、一介の女神の力などすでに封印されておるわ」
「あんだとお!?なぜそれを早く言わないんだ」
「聞かないからだ」
「聞くも何も、知らなきゃ聞けないだろが!!」
 侃々諤々(かんかんがくがく)、大広間に響き渡るほどの声でまくし立てる。
 実は、一行を取り囲むようにして、無数の魔物たちが蠢(うごめ)いているのにも気づかない。
 知らぬが仏、能天気な会話を続けながらも前に進む。
「お!前方に何かあるぞ!!」
「あれは、人?……いやハーデース様のようだ」
「なに!ハーデースだと?」
 途端に歩みが早くなって、とうとうハーデースの前に立ったのである。

 玉座に腰を降ろして、一行を出迎えるハーデース。
「よくぞ参った。疲れただろう、そこに電気按摩椅子を用意してある。身体を解(ほぐ)すがよかろう」
 指さした所には、某メーカーのマッサージチェアが置いてあった。
 どこから電気を引き込んでいるのかは謎であるが……。
「まさか、座った途端。手枷足枷が出て拘束されるんじゃないのか?」
「それはないぞ」
「さらに、電気椅子になっているんだろう?数千ボルトの電気が流れてあの世行きとか。ああ、ここがあの世だっけか……」
「だから違うと言っておる」
「電気椅子と言えば、送電施設を交流直流どっちにするかで、直流を推すエジソン陣営と、交流を推すテスラ&ウェスティンぐハウス陣営とで鍔迫(つばぜ)り合いやっててさ」
「何の話をしている?」
「エジソンは、交流の危険性を訴えるために、電気椅子の公開実験をやったそうだ」
「だから、何の話をしているかと聞いておる」
「結局、自由に電圧を変えられる交流に軍配が上がったのさ。でもさ、本当は直流の方が送電ロスという面では優れていたんだ。技術が発達して、簡単に直流交流変換が容易になって、再び直流送電が行われるようになってる」
「……もういいよ」
 長々と説明を続ける弘美に、耳ダコ状態になったハーデースだった。
 ふと、マッサージチェアの方を見てみると。
「ほほう、これは楽ちんだな」
 イの一番に、その恩恵に預かっていたヴィーナスだった。
 適度にモミモミされて、肩や腰などが揺れ動いている。
「まるで天国にいる気分じゃ!」
 実に気持ち良いという表情をしている。
 天国気分とか、天上人の言葉ではないが。
「おまあなあ!俺を差し置いて、真っ先に按摩椅子に乗っかるとは間違ってないか!?」
「女神とて疲れるんだぞ。日頃から歩くなどしたことないのに、地を掘り進んできたんだ。それに、レディーファーストという言葉を知らぬのか?」
「それは、足腰立たぬほどまで酒に溺れているからじゃないのか?」

「まあまあ、喧嘩するな。あと二台出してやるから」
 というと、下僕の骸骨が電気椅子をさらに二台運び出してきた。
「こらこら、電気椅子と言うなよ」
 文章が長くなるからです。
 新聞紙が字数を減らすために、コンピューターを電算機と呼ぶのと同じです。
「新聞ねえ……。気持ち悪くなるから止めてくれ!」
 マッサージチェアが二台、弘美たちの前に置かれた。
「そいじゃ、遠慮なく」
 ハーデースの御前において、マッサージチェアに身体を委ねる三人。
 ゆらゆらと身体が揺れて気持ちよさそうである。
「なんか、忘れてるような……」
 ヴィーナスがぼそりと呟いた。
 我に返る弘美。
「そうだった!こんなことしてる場合じゃなかったあ!!」

↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v



にほんブログ村 本ブログ 小説へ
にほんブログ村



11

- CafeLog -