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2021.05.31

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梓の非日常/第三部 神条寺家の陰謀 part-2
2021.05.14

神条寺家の陰謀


partー2

 床下を四つん這いになって進む。
 やがて、前の部屋のような床下収納庫と思われる場所に出た。
 ボックスこそないが、埋め込み半回転式の取っ手の裏側が突き出ている。
 直接上に出られるようだ。
 そこには、犯人が待ち構えているかもしれないが……。
 耳を澄ませて、上の床の音に耳を傾ける。
 足音などの生活音がないか。

 静かだった。

 少し蓋を持ち上げて、部屋の中を懐中電灯で照らしてみる。
 誰もいないようだ。
 音を立てないように、静かに床下から這い上がる。
 台所のようで、ドアが二つあるだけで窓のない殺風景な部屋だった。
 一つは玄関ドア。もう一つは隣の部屋に通じているようだ。
 調べ回ってみたが、何も見つからなかった。

 玄関ドアのカギを開けて外へ出ようとしたが、ここも鍵が掛かっていて出られなかった。

 仕方なく、玄関は無視して隣の部屋に向かいます。
 こちらも真っ暗だったが、ドアの壁際に照明スイッチがあった。
 やはり照明はあった方が良いだろう。
 ドアを閉めてから、照明を点けた。

 ソファーやら書棚とかが置いてあって、リビングルームという感じだった。
 ふと疑問が沸いた。
 殺人部屋はベッドはあるものの、まるで物置みたいだったが……。
 この住居の全体像が想像つかない。
 アパートなのか? 個人の住宅なのか?

 ともかくリビングを調べ始める。

 まずは本棚からだ。
 よくある話に、本棚がスライドして隠し通路が現れるとかがある。
 試しに本棚を横から押してみたが、ピクリとも動かなかった。
 どこかにスイッチがあって、電動で動くかもしれない。
「片っ端から、本を動かしてみるか……」
 ともかく本棚の右上段から順番に本を動かしてみる。
 探す途中で、本のページからはみ出た紙切れが見つかった。
 紙切れには、色覚テストに使われるような模様が描かれていたが、複雑すぎて何が描かれているか判読できない。
 五段ある本棚の三段目まで調べ終わる。
「何か仕掛けがあるとしたら、普通は手を掛け易い目の高さ辺りだと思うのだが……」

 さらに念入りに、本棚をさらに調べてみると、一番下の本の隙間に何か隠れていた。
 取り出してみると、チュールと呼ばれる猫のオヤツが一本入っていた。
 役に立つか分からないが、ともかく持っていくことにした。


 ソファーを調べてみる。
 見た目は、ごく普通のソファー。
「座面を持ち上げると、小物入れになっているものがあるよな」
 持ち上げようとしたが、残念ながら固定されていた。
「外れたか……」
 横へずらしてみようとしても駄目だった。
「腰が痛え……」
 床下を這いずり回っていたので、足腰を痛めたようだ。
 ソファーの背もたれに持たれかけて、思いっきり背伸びしてみた。
「うわわっ!」
 背面側に重心を持っていきすぎたのか、ソファーの前脚部が持ち上がって、後ろに倒れ込んでしまう。
「こ、これは⁉」
 ソファーが倒れたことで、床に隠し扉が現れた。
 床下収納庫……? ではなさそうだった。
 蓋には鍵穴が仕込んであったのだ。
「金庫か? それとも下へ続く通路か?」
 試しに、持っていた鍵の束で開けてみる。

 カチャリ!

 鍵の一つが合って、蓋が開いたのだった。
「階段だ! 地下室に通じているのかな?」

 ここは降りてゆくしかないだろう。
 念のために部屋の電気を消してから、いざ! 地下室へと向かった。

 階段を降りると、鍵の掛かった扉があったが、先ほどの鍵で開いた。
 扉側の壁にスイッチがあったので点けてみる。
 ここまできたら、スイッチに罠があるかなんて、もうどうでもよくなっていた。
「また部屋かよ……」
 中は、画廊のような風景であった。
 いくつかの彫刻と絵画が展示されていた。
「そとに通ずる道は?」
 入ってきた反対側に、横スライド式の電動らしきドアがあった。
 手でこじ開けようとしたが、びくともしなかった。
「どこかに電動ドアのスイッチがあると思うんだけどな……」
 それらしきものはあった。
 ドアの側の壁際に銀行ATMでよく見るような、暗証番号入力式のプッシュキーが並んでいた。
 適当に打ち込んでみようかと思ったが、間違った場合に警報が鳴るかもしれない。
 3回間違えるとロックされるとか……。
「忘れた場合に備えて、どこかに暗証番号書いたメモ帳とかないかな?」
 まずは絵画の裏を探してみる。
 額縁を動かすと、一枚の赤色をした透明シートがヒラヒラと舞い落ちた。
「赤の透明シート? そうかアレだ!」
 ピンとくるものがあった。
 本棚の本に綴じてあった、色覚テスト用のような紙切れだ。
 透明シートで紙切れを透かして見る。
「5963か」
 電動ドアの暗証番号だと思われる。
 こんな手間暇かけるより、素直に紙に番号を書いておけばいいのに……。
 と、思ったが考えるのをやめた。
 すぐ分かる場所に、すぐ分かる方法で残していたら暗証番号の意味がない。

 自動ドアの所に戻って、プッシュキーを押す。
「ごくろうさん……と」
 ピポパポと音がして、ドアが開いた。

 そのまま出ようとも思ったが、念のためにさらに部屋を探してみる。
 彫刻の中に手の上に何かを持っている仏像があった。
 調べてみると、今度はグレーの透明シートが入っていた。
「グレー透明シートか……。また何かを透かして見るのかな?」
 とりあえず貰っておく。

 他には見当たらないので、自動ドアから外へと向かった。

 そこは通路で、正面と両側に4つのドアがあった。
「とりあえず手前から調べてみるか」
 手前左のドアを開けようとするが締まっていた。
 持っている鍵束で開けて入ってみる。
「ハズレだ! 何もねえや」
 手前右の扉も何もなかった。
 先方左手ドアは、合う鍵がなくて開けられない。次だ。
 先方右手ドアを開けると……。

 そこには、猛獣のライオンが待ち構えていた。
「なんでこんなところに、ライオンがいるんだよ!」
 とっさに持っていたナイフで応戦する。
 ライオンを倒して、部屋の中を探してみる。
「ライオンが守っていたんだ! きっと重要な何かが隠されているはずだ!!」
 丁寧に隅から隅まで探してみる。
 机が置いてあり、引き出しから新たな鍵が見つかった。

 その部屋を出て、通路に残る正面の扉の前に立つ。
 鍵束の鍵は合わなかった。となると……、
「さっき手に入れたばかりの鍵か?」
 ライオンを倒して得た鍵を差し入れてみると、開いた。

 そこはまた別の部屋だった。

 ガランとして何もない部屋だった。
 扉も今入ってきた所しかない。

「しかし何もないってことはないんじゃないか?」
 今まで手にしてきたアイテムを取り出してみる。
 まだ使っていないのは、猫用おやつのチュールとグレーの透明シートだ。
 猫はどこにもいないから、今使うのは透明シートか……。
 グレーの透明シートで部屋の壁を透かして見る。
 すると壁の一カ所に何やら浮かんできた文字があった。
「そうか! これは偏光板だったんだ」

 参考=Nitto実験動画「偏光板 魔法のフィルム篇

『ここまで来た中に猫のいる部屋がある。最後の鍵は猫が持っている』
 猫のいる部屋? 鍵を持っているだと? ライオン(ネコ科)のことじゃないよな。
 ともかく戻って、もう一度よく確認してみよう。

 先ほどの五つの部屋があった通路に戻ってみる。
「何もないと思ってみたが、何かあるのか?」
 画廊から見て手前右手扉に入ってみる。
「猫はいるか?」
 いないようだ。
 手前左手扉の部屋にも、猫どころか鼠もいない。
 最後に、先方左手扉の部屋だ。
「ここは鍵が合わなかったよな……。待てよ、最後の鍵といっていたな」
 よく見ると、ドアの下側に小さな扉があった。
「これか!? 猫用通路口だ!」
 前回見に来た時は、下の方に目がいかなかったので気付かなかったようだ。
 この扉の中に鍵を持った猫がいるのか?
「猫ならコイツに反応するかな……」
 チュールを開封して、猫通路口から差し入れてみる。
 すると、中の方でコトンと音がした。
「にゃーん!」
 猫がチュールにしゃぶりついてきた。
 チュールを手前に引くと、釣られて猫も外へ出てくる。
 その首には鍵がぶら下がっていたのだ。
 猫を捕まえて、最後の鍵を手に入れた!
 チュールを全部舐め終わった猫が、足元にじゃれついてくる。
「よしよし。いい子だ」
 最後の鍵を使って、その扉の錠前に差し込んでみると、見事に開いた。
「ここが最後なのか?」
 部屋の中に入る。

 そこは窓のある明るい部屋だった。
 開いた猫用のゲージがあり、餌皿と水飲みが置いてあり、ここで放し飼いされているらしい。
 ということは、いずれ飼い主がやってくるかもしれない。
 もしかしたら、そいつが殺人犯か?
 もちろん、トットと逃げ出すに限る。
 ドアには、円筒錠というごく普通の錠前が付いていた。
 外からは鍵が必要だが、内からは鍵なしで開くという奴。
 手を掛けて回してみると、何の抵抗もなく開いた。
 外へ出てみると、光ある世界だった。
 振り返ってみると、今までいた所は何やら研究所のような建物だった。

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梓の非日常/第二部 第三章・スパイ潜入(二)旧体制VS新体制
2021.05.13

続 梓の非日常/第三章・スパイ潜入


(二)旧体制VS新体制

「それで、他になにか情報はあるの?」
「もうこれは既知の情報では有りますが、梓さまが立ち上げられた宇宙開発事業が正式に動き始めました。米国フロリダ州ケープカナベラル基地に隣接する広大な土地に、真条寺家の手による宇宙空港の建設が始まりました」
「その話は聞いているわ。宇宙ステーションの建設資材を、宇宙へ打ち上げるための専用宇宙空港よね。スペースシャトルの連続打ち上げと常時回収の両方が同時にできるマルチセッション多様型宇宙空港だと聞いたわ」
「宇宙ステーションの開発設計は、篠崎重工側に新たに設立された宇宙開発推進事業部が担当しています。なお当事業部は、篠崎重工アメリカが発足次第、そちらへ移管されることが決まっております」
「篠崎重工か……こいつも目の上のタンコブだわよね。本家と分家が利権争いをしている間隙をついて、漁夫の利を得て発展してきたくせに、いけしゃあしゃあと真条寺家と結託しくさりおってからに」

(というよりも、どちら側についたら自分に有利かを判断したのかと思う)
 黒服は口には出さなかったが、現状においては明らかに真条寺家に軍配が上がるのは目に見えていた。
 資源探査では一歩も二歩も先んじられて将来の資源開発を掌握され、今また宇宙開発においても制宙権を確保されようとしている。このまま行けばジリ貧となって消え行く運命にあると言えた。
 古今東西、マケドニアのアレクサンダー大王、ローマのカエサル、フランスのナポレオン、トルコのチンギス&フビライ・ハーン、世界征服を目指したいずれの超大国とてやがて歴史の彼方に消え去っていった。日の沈まぬ国として世界の海を制覇したかつてのスペイン帝国も大英帝国も今ではすっかり影を潜めている。
 投げ上げられた石はやがて地面に落ちる。地球という重力に縛られたような、古い慣習に固執する葵の母親のような権力者では、この石のように、重力に引きずられて発展から停滞に減速され、さらには急降下で落ちていくだろう。ただ財産を蓄えることしか頭になく、抵抗勢力を抹殺しようという考えでは進歩がない。それは安寧から停滞へ、そして衰退へと坂道を転がるように堕ちていくだけである。
 梓のように、全財産の三分の一の資産をも投じて未知の世界へ飛び出すような、急進的な思考を持ってこそ発展の道も開かれるのである。

「まあ、こっちの方は梓を陥落させてからでも十分だわ。真条寺家がなくなれば主要取引先を失って倒産に追い込まれるはずよ」
「そう上手くいきますかね」
「やらなきゃならないでしょ。もちろん姑息な手段を使わず正々堂々と勝負よ。ところで、梓の持つ財産て現時点でどれくらいあるの?」
「総資産はおよそ六千五百兆円となっております。ちなみに先程の原子力潜水調査船一隻だけで六千億円になります。宇宙開発にその三分の一を投入する予定のようですが、十年・二十年先には月資源や火星などの資源を独占したり、無重力における特殊な環境が及ぼす新素材開発とかが軌道に乗れば、投資を上回る資産形成をなすことが期待できると考えられております」
「でしょうね。そういった未来志向ができる梓やその母親がいるからこそ、今日の真条寺財閥が存続しているのよ。
 それに引き換え、わたしの母親や神条寺財閥は旧態依然の「鉄」にこだわりつづけて、梓達の「新素材」への転換に踏み切れないでいる。確かに「鉄」は溶鉱炉を建設し稼動させれば資産を生み出してくれはする。しかし将来に渡っての保証はない。実際にも、資源探査においてはARECに今後の資源を押さえられては身動きが取れなくなる。
 それに引き換えて、「新素材」は莫大な研究費用を投入しても、最終的な研究成果が資産を生み出してくれるとは限らない。結果、資産を食い潰してしまわないとも限らない。総資産二京円におよぶ神条寺家と、同じく六千五百兆円の真条寺家の違いがそこにある。研究開発に莫大な資産を投入してきたから、総資産では真条寺家は神条寺家の三分の一にまでに差が開いた。しかし将来に話を移せば、決して楽観はできないのよ」
 とここまでいっきに喋りとおし、
「どうしてそのことを、お母様は理解してくれないのよ!」
 突然大声でいきりたつ葵だった。
 黒服は思った。
 確かに、この神条寺葵の考えるとおりである。
 旧態依然の体制に固執し、敵対する者を闇に葬ろうとする当主の神条寺靜。
 一方の真条寺家は将来を見据えて行動し、世代交代も素早いから常に新鮮な雰囲気に満ち満ちている。そして現当主の梓は資産の三分の一を投げ打って新事業に乗り出し、かつまた配下の参画企業の社員全員が誠心誠意バックアップする好環境が作り上げられていた。
「このままでは、神条寺家は滅びるわ。そうならないように当主の交代を願い出たけど聞き入れてはくれない。おそらく死ぬまでは当主の座に収まろうとするでしょうね。でもわたしは手をこまねいているつもりはないわよ」
 母親に対して謀反を起こすつもりか……。
 まあ、それはそれでいいかも知れない。
 どっちにしろ葵が言うように、地を這い蹲る(はいつくばる)しか能のない靜が当主のままでは神条寺家の未来はないのは確かである。

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