あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-5
2020.01.27

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-5

 アポロが決断を迫る。
「さあ、人質交換に応じるのかな」
 愛は可愛いが、ゼウスのお気に入りリスト【ファイルーZ】の弘美は、さらに可愛い。
 成長すれば、それこそ絶世の美女となりうるのだ。
 アポロにしてみれば、愛より弘美を選ぶのは当然だろう。
 たじろぐ弘美。
 愛は助けたい。
 かといって、人質交換に応じて、アポロの元に行くのも、吝かやぶさかである。
「どうするかね?」
「本当に愛を解放する気はあるのか?」
 ヴィーナスが確認する。
 アポロの周りを見渡せば、篭絡ろうらくした女の子や神子をはべらしているのだ。
 弘美を手に入れても、愛を手放すとは言い切れない。
「約束しよう」
「言い切ったな。約束したぞ」
 ヴィーナスとディアナが見詰め合って確認している。
「さあ、こちらへ来なさい」
 アポロが手招きする。
 躊躇ちゅうちょするが、愛を助けたい気持ちには変わらない。
 ここにはヴィーナスとディアナという女神がいる。
 愛と自分を助ける算段をしているかも知れないし。
 ゆっくりと前へ、アポロに向かって歩き出す弘美。
 時々振り返りながら。
 後数歩にまで来たときだった。
 突然、弘美を含めたアポロの周囲にバリアーのようなものが発生して、女神との間を遮断した。
「何をした!?」
 ヴィーナスが近づこうとしたが、バリアーが進入を防いで、その身体を弾き飛ばした。
「だましたな!約束が違うじゃないか」
 ディアナが叫ぶ。
「はて?何か約束をしたかな?」
 知らぬ存ぜぬといった風情のアポロ。
「弘美、大丈夫か?」
 何があったのか、茫然自失状態の弘美。
 愛は可愛い、弘美はもっと可愛い。
 女たらしのアポロが、どちらか一方を手放すと思ったのが間違いだったのだ。
 地団太踏んでくやしがる女神。

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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス I
2020.01.26

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス


I


 鳥が飛び交い獣が駆けるジャングルの中、実戦訓練が繰り広げられている。
 ペイント弾が装填された火砲を携えて、慎重に狙撃相手を探す者がいた。
 操縦桿を握りモニターを見つめ、外の気配に耳を澄ますアイクがいた。
 右手方向からガサゴソと音が聞こえた。
「そこか!」
 身を構えて火砲を放つアイク。
 相手は素早く身をかわして木陰に隠れた。
「遅いんだよ。アイク」
 ジャンであった。
 身を翻して反撃してくる。
 アイクとジャンの操縦能力は、ほぼ互角のようであった。
 そのような戦闘状況は、ミネルバの艦橋でもモニターしていた。
「あの二人、なかなかやるじゃないですか。反射速度は並じゃないです。士官学校ではし
ょっちゅうサボっていたらしいですが」
「外見からだけでは判りませんからね。ランドール提督が、その良い例です」
「ああ、噂は聞いていますよ。艦長は提督の後輩でしたね」
「まあね……いろいろと、その人となりを見せ付けられました」
 そんな会話の間にも、二人の戦闘は続いている。
 アイクとジャン以外にも実戦訓練に参加している訓練生は多数いた。
 燃料切れを報告してくる機体が出始めていた。
「意外と早かったですね。もうしばらく動けるはずですが」
「まだまだ未熟だからでしょう。実戦投入はまだ無理ですね」
 頃合い良しとみて、
「訓練は終了。全機帰投させてください」
「了解しました。全機帰投させます」

 ミネルバ艦橋で、ナイジェル中尉とオーガス曹長が、フランソワ艦長に訓練状況の報告
をしている。
「今後も怠りなく、艦内での訓練を続けてください」
「了解!」
「以上です。下がって結構です」
 踵をカッと合わせ、敬礼して退室するナイジェル中尉とオーガス曹長。
 廊下を歩きながら話し合う二人。
「今回の訓練では、例の二人が結構良い動きをしていましたね」
「ああ、意外だった。この分だと、実戦投入一番乗りになるだろう」

 突然、警報が鳴り響いた。
『敵機来襲!総員戦闘配備!!』

「訓練生を回収した後で良かったですね」
「そうだな。急ぐぞ、出撃だ!」
「はい!」
 言うが早いか、発着場へと駆け出す二人。
 既に戦闘機編隊は、飛び立った後だった。
「整備は済んでいるか?」
 整備士に確認するナイジェル中尉。
「はい。燃料、弾薬とも満載です」
「結構!行くぞオーガス」
「あいよ」
 それぞれの分担に分かれて機体を動かす二人。

 艦橋。
「ザンジバル級が五隻接近中!」
 レーダー手の報告に、副長が応答する。
「相手にとって不足はありませんね。前回のように弾薬が尽きるということもないし」
「油断は禁物ですよ」
「はい!」
 戦闘が始まる。
 しかしながら、五隻くらいのザンジバル級では、機動戦艦ミネルバの敵ではなかった。
 とは言え、損傷をまったく受けないというわけにはいかなかった。
 未熟兵が多く、戦闘には不慣れだったからだ。辛うじてミネルバの機動力で何とか凌い
だという状況だった。
「もう一度ジャングルへ降りて艦体を隠しながら修理を急ぎましょう」
 修理には、パイロット候補生は訓練を終えたばかりで疲れているだろうと、その他の訓
練生が任務に当たることになった」
 艦橋で、その様子を見ながらベンソン中尉がため息をもらす。
「将来的にいつまで、このような状況が続くのでしょうか?」
「最終的には、ランドール提督の反攻作戦が開始されて、このトランターへの降下作戦に
至った段階ですね。それまで、我々は内地に留まって戦い続けるだけです」
「致し方ありませんね」
 反攻作戦がいつから始まり、いつ終わるのか、誰にも予想がつかない。ただ言えるのは
ランドール提督次第というだけである。
「それにしても、レイチェル・ウィング大佐殿は、どこで何をしてらっしゃるのでしょう
か?」
「秘密の海底基地があるそうなので、そこで各地に散らばっている仲間への指示・命令を
出しておられるのでしょう」
「海底基地ですか……。そのようなものをいつの間に築き上げたのですかね」
「メビウスは占領機甲部隊ですから、優秀な工作兵も揃っています。秘密裏に作業を進め
ることも可能でしょう」
「一度訪ねてみたいですね」
「そのうち実現するでしょう」
「期待しています」
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銀河戦記/鳴動編 第二部 第五章 アル・サフリエニ I
2020.01.25

第五章 アル・サフリエニ




 アル・サフリエニ方面タルシエン要塞。
 中央コントロール室。
 要塞司令官のフランク・ガードナー少将は、銀河帝国から放映されているアレックス・
ランドールこと、アレクサンダー皇子の元帥号親授式及び宇宙艦隊司令長官就任式の模様
をいぶかしげに眺めていた。
 アナウンサーは、アレクサンダー皇子についての詳細を解説していた。行方不明になっ
てからのいきさつ、統制官としての軍部の改革、そして宇宙艦隊司令長官への抜擢。
 やがてアレックスが登場して、儀典がはじまった。
 大勢の参列者が立ち並ぶ大広間の中央、真紅の絨毯の敷かれた上を、正装して静かに歩
みを進めるアレックス。
 参列者の最前列には皇女たちも居並んでいる。
 エリザベスの待つ壇上前にたどり着くアレックス。
 ファンファーレが鳴り響き、摂政エリザベスが宣言する。
「これより大元帥号親授式を執り行う」
 壇上の袖から、紫のビロードで覆われた飾り盆に乗せられて、黄金の錫杖が運び込まれ
る。錫杖は権威の象徴であり、軍の最高官位を表わしているものである。

 そんな儀典の一部始終を、タルシエン要塞の一同はじっと目を凝らして見つめている。
「やっぱりただものじゃなかったですね。ランドール提督は」
 要塞駐留第八艦隊司令のリデル・マーカー准将が口を開いた。
「ただものじゃない?」
「皇家の血統だとされるエメラルド・アイですよ。またぞろ帝国のスパイ説という議論が
再燃しそうです。解放戦線の将兵達の士気に影響しなければよいのですがね」
「アナウンサーの解説を聞いただろう。幼少時に誘拐されて、その後の経緯は不明だが共
和国に拾われたのだそうだ。生まれは帝国かもしれないが、育ちは共和国だ。生みの親よ
り育ての親というじゃないか。提督は、純粋に共和国人と言ってもいいんじゃないか?」
「確かにそうかも知れませんが、人の感情というものは推し量れないものがあるものです。
仲間だと思っていた人間が、ある日突然皇帝という天上人という近寄りがたい存在となっ
た時、人は羨望や嫉妬を覚えないわけにはいかないのです」
 准将の危惧は当たっているといえた。
 要塞に駐留する艦隊内では、あちらこちらでアレックスの話題で盛り上がっていた。
「大元帥だってよ。えらく出世したもんだ」
 銀河帝国と共和国同盟とでは、軍人の階級については違いがある。
 同盟では、大将が最高の階級である。
「しかも、ゆくゆくは皇帝陛下さまだろ。身分が違いすぎじゃないか?」
「やっぱりあの噂は本当だったということかしら」
「帝国のスパイってやつか?」
「また蒸し返している。赤ちゃんの時に拾われた提督が、スパイ活動できるわけないじゃ
ない」
「そうそう、たまたま行方不明になっていた王子様を同盟軍が拾って何も知らないで育て
てきただけだ」
「だからってよお……。今日の今日まで、誰も気がつかなかったってのは変じゃないか。
時の王子様が行方不明になっているっていうのにさ」
「それは、王子が行方不明になったことは極秘にされたのよ。大切なお世継ぎが誘拐され
たなんて、帝国の沽券に関わるじゃない」

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