銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス IX
2020.03.22

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス


IX


 リンゼー少佐のサーフェイスも、艦の修理を終えて造船所を出立したところであった。
「今度はどこに現れますかね」
「奴らが今一番欲しがっているものは何だと思う?」
「そうですね……やはり超伝導回路用のヘリウム4ですかね。宇宙空間と違って、この大気中
は消耗が激しいですから」
「それだな。となると一番近い供給プラントは?」
「マストドーヤです」
「よし!そこへ急行しろ」
「了解!」


 一足早くマストドーヤに到着したミネルバと補給艦は、ヘリウム4の補給を早速始めた。
 ほぼ半分ほどの補給を終えた頃、
「左舷七時の方向に大型戦艦接近中!」
「おいでなすったわね。何はなくとも補給艦の護衛です。砲弾一発、ミサイル一基たりとも当
てさせないで」
「了解しました」
「ここで決着をつけましょう。どちらかが撃沈されるまで戦い抜くのです」
 サーフェイスにいつまでも追い回されていたら身が休まらなかった。
 不幸にも先に撃沈されたら、後に残された部隊に命運をかける。
 再び激しい戦闘が開始された。


 厳しい表情のフランソワ。
 これ以上の損害を被るのは避けたかった。
「Z格納庫を開けて、アレを出してください」
 それを聞いて驚く副長。
「Z格納庫!最後の切り札を使うのですか?」
「最後の踏ん張りどころでしょう。今が使いどころだと思います」
「分かりました」
 副長がミサイル発射管室に伝える。
「発射管室、Z格納庫を開いて、次元誘導ミサイルを取り出せ!」
 次元誘導ミサイル。
 それは、フリード・ケースンが開発した極超単距離ワープミサイルだった。
 どうしようもないほどの苦境に陥った時のためにと、搭載された最後の切り札だった。
 もちろんミネルバ級の中でも1番艦であるミネルバにしか搭載されていない。
「次元誘導ミサイルを1番発射管に装填しろ!」
「重力探知機による目標着弾点を入力。機関部にセットオン!」
「セットしました!」
「発射体制完了」
「次元誘導ミサイル、発射!」
「発射します!」
 ミネルバ発射管から射出される次元誘導ミサイル。


 サーフェイス側では驚きの声が上がった。
 目の前に迫っていた大型のミサイルが、迎撃態勢に入ろうとする寸前に突然消えたのだから。
「ミサイルが消えました!」
「加速度計は!?」
「重力加速度計からも消えました!!」
 すべての計測器からミサイルの痕跡が消滅した。
「どこへ消えたのだ?」
 次の瞬間だった。
 激しい震動が艦橋を襲う。
「な、なんだ?報告しろ!」
「た、ただいま……」
 機関部から報告がなされる。
「超伝導磁気浮上システムに被弾!損害甚大です。浮上航行不能です!」
「なんだと!」
 地磁気に対しての浮力を失って、徐々に高度を下げてゆくサーフェイス。
「海に着水します!」
「総員何かに掴まれ!」
 激しい水飛沫を上げて、海上に着水する。


「サーフェース、海上に着水。機関部炎上のもよう」
 報告を受けて安堵する艦橋要員。
「見事、心臓部をぶち抜いたようです」
「間合いを取って、こちらも海上に降りましょう」
 静かに海に着水するミネルバ。
 双眼鏡を覗いて敵艦の動静を観察している。
「完全に沈黙したもようです」
「サーフェイスに、十分後に撃沈するからと、敵艦に総員退艦を進言してください」
 強大な戦力を相手に持たせておくわけにはいかなかった。今撃沈しておかなければ、回収・
修理して再戦してくる可能性を排除するためには、海の藻屑とする以外にはない。
 敵艦甲板上では、救命ボートが引っ張り出されて、サーフェイスの乗員が乗り込んでいる。
中には直接海に飛び込む者もいた。
「十分経過しました」
「艦首魚雷室に魚雷戦発令!」
「魚雷戦用意!」
「一発で十分でしょう」
 救命ボートが、サーフェイスから十分離れたところを見計らって、
「魚雷発射!」
 下令する。
「魚雷、発射します」
 ミネルバからサーフェイスへと続く海面上に、一条の軌跡が走る。
 魚雷が命中して、火柱が上がる。
 やがて大音響を上げて沈んでゆく。


 沈むサーフェースを遠巻きに見つめながら、
「やられましたね」
 救命ボート上の副官のミラーゼ・カンゼンスキー中尉が嘆いていた。
「ああ、ミネルバには幸運の女神がついているようだ」
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銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 Ⅲ
2020.03.21

第六章 皇室議会




 謁見の間は、相変わらず紛糾していた。
 アレックスの意見具申に対しことごとく反対意見を述べる大臣達。
 いつまでも結論が出ず、結局最後は摂政裁定で議決されるという有様だった。
 ここにはいないロベスピエール公爵の意向がすべてを左右していた。
 傀儡かいらい政権の大臣達には公爵に逆らえるわけがなかったのである。
「統合軍第四艦隊及び第五艦隊に対し出撃を命令し、先行する第二艦隊と第三艦隊の後方
支援の任務を与えます」
 アレックスが意見具申を申し出てから、今日の裁定に至るまで七日という日が無駄に費
やされていた。
 皇女が直接指揮権を有する皇女艦隊と違って、一般の統合軍艦隊は国防大臣(艦隊運
用)及び国務大臣(予算配分)の配下にあった。どちらも摂政派に属しているために、い
ろんな理屈を並べて首を縦には振らなかったのである。
 議論は平行線をたどった挙句、直接戦闘には参加しない後方支援ということで、やっと
のこと日の目をみたという次第だった。
「皇女様に対し敵艦隊との矢面に立たせて、第四・第五艦隊は安全な後方支援とはいかな
る所存か?」
 第四艦隊・第五艦隊司令官からも、なぜ自分達は後方支援なのだという意見具申が出さ
れていた。
 しかし大臣達は、戦闘経験のない艦隊を最前線に出すわけにはいかないという一点張り
で対抗した。

 謁見の間から、統制官執務室に戻ったアレックスだが、思わず次官に対して愚痴をこぼ
してしまう。
「まったく……頭の固い連中を相手にするのは疲れるよ」
「お察し致します。総督軍が迫っていると言うのに、相も変わらず保身に終始しています
からね。総督軍との戦いに敗れれば、皇族も貴族もないのに」
「で、艦隊編成の進み具合は?」
「大臣達のお陰で何かと遅れ気味でしたが、燃料と弾薬の補給をほぼ完了して、やっとこ
さ一週間遅れで出撃できる次第となりました」
「一週間遅れか……。何とか間に合ったと言うところだな」
「後方支援ですからね。ぎりぎりセーフでしょう」
「ともかく後方かく乱されることなく、先行することができるようになったわけだ。一日
でも早く先行する艦隊との差を縮めるようにしたまえ」
「かしこまりました」
 背を向けて窓の外の景色を眺めるようにして、腕組をし考え込むアレックス。
 しばしの沈黙があった。
 やがて振り返って命令する。
「第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令を出せ。四十八時間以内に共和国同盟に向けて出撃す
る」
「了解。第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令。四十八時間以内に共和国同盟へ進撃させま
す」
「よろしい」
 ついに迎撃開始の命令を出したアレックス。
 次官はデスクの上の端末を操作して、統合軍総司令部に命令を伝達した。
 艦隊数にして百五十万隻対二百五十万隻という敗勢必至の状況ではあるが、手をこまね
いているわけにはいかなかった。
 数で負けるならば、それを跳ね除けるような作戦が必要なのであるが……。
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス Ⅷ
2020.03.15

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス




 海底基地司令部。
 ミネルバが入港しており、基地技術者によって修理が施されていた。
「次なる指令は?」
 レイチェルに尋ねるフランソワ。
「そうね。超伝導回路用のヘリウム4が不足しているのよ。まだ我々の支配下にあるマストド
ーヤにある生産・供給プラントへ補給艦と共に向かってください」
「護衛の任務ですね」
「そうです。重要なる物質です」
「こういうことになれは、このトランターに来るときに使ったヘリウム4がもったいなかった
ですね」
「あの時は、致し方なかったと理解しています。新型モビルスーツを届けることの方が重要な
任務だったのですから」
「しかし輸送艦が襲われて、結局敵の手に奪取されました」
「無事に取り返したから良いでしょう。ともかく、ヘリウム4の供給を成功させてください」
「判りました」

 艦の修理と、燃料・弾薬の補給、そして乗員達の休息を終えたミネルバは、海底基地を出立
して再び海上へと姿を現した。
 後方には補給艦が追従してくる。
「サーフェイスには出くわさないでほしいですね」
「その時はその時です。補給艦の護衛を優先させます。たとえミネルバが撃沈されたとしても
メビウス部隊の活動は続くのですから」
「そうですね」
「力の限りを尽くすまでです」
「それにしても、カサンドラ・リスキー・マストドーヤと、敵の手中に落ちたものを、次々と
奪還し続けていますね」
「占領はしたものの、地上部隊の大半をランドール提督が自分の配下にして、メビウス部隊に
編入してしまいましたから」
「でも政府側で造船所などを押さえている総督軍には、いくらでも艦艇の増産が可能ですから、
いずれメビウスも窮地に陥ります。いずれ供給施設などに兵力を集中させて、にっちもさっち
もいかなくなります」
「我々は、いわゆるパルチザンであり政府や総督軍に対する撹乱が任務です。戦艦などの機動
力を機動力を使っての華々しい戦いよりも、敵中に潜入しての破壊・煽動活動の方が、より大
切な任務なのですから。このミネルバは、総督軍の関心を引き付けて、そういった撹乱部隊を
援護することです」


 リンゼー少佐の方も、造船所に戻ってサーフェイスの修復を受けていた。
「酷い有様だな」
 造船所長官が頭を抱えていた。
 期待を込めて送り出した艦が、無残な状態を晒して戻ってきたからだ。
「申し訳ありません」
「仕方ないさ。同型艦で戦力は互角でも、敵は新型モビルスーツを繰り出してきたんだろ?」
「はい。あれが問題でした。完全独立飛翔型な上に、火力も並大抵ではありません」
「うむ。さすがに天才と謳われたフリード・ケースンが開発しただけのことはあるな」
「今頃、タルシエン要塞かシャイニング基地の研究所で、さらなる強力な兵器を開発している
でしょう」
「困ったことではあるが、宇宙の彼方のことは考えても仕方がないこと、我々はトランターの
ことに気を使っていればいいのだ」
「そうでしたね。それはそうとミネルバ級三番艦はどうなっていますか?」
「建造が大幅に遅れている。もしかしたらランドールの反攻作戦開始に間に合わないかもしれ
ない」
「それは辛いですね。ミネルバを撃つのにも、もう一艦あればこれほど苦労はしないでしょう
けれど」
「ランドール提督の策略で、トランター現有の戦艦をみんな取り上げられていたからな」
「トランターが陥落するとは思ってもみなかったでしょう。軍部の中で、ランドール提督は今
日のこの日があることを見越していました。それで杞憂となる戦艦を集め、核弾頭ミサイルを
も手中にした」
「頭の痛い問題だ」
「ところでメビウスの方にも、それなりの基地があるはずですよね」
「たぶんな。おそらく大海のどこか深海底にあると思われるものを探し出すのは、ほとんど不
可能だろう。ランドールも馬鹿じゃない、すべて計算済みさ」
「きびしいですね」
「まあ、気長にやろうじゃないか」
「はい」
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