銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 Ⅲ
2020.03.21

第六章 皇室議会




 謁見の間は、相変わらず紛糾していた。
 アレックスの意見具申に対しことごとく反対意見を述べる大臣達。
 いつまでも結論が出ず、結局最後は摂政裁定で議決されるという有様だった。
 ここにはいないロベスピエール公爵の意向がすべてを左右していた。
 傀儡かいらい政権の大臣達には公爵に逆らえるわけがなかったのである。
「統合軍第四艦隊及び第五艦隊に対し出撃を命令し、先行する第二艦隊と第三艦隊の後方
支援の任務を与えます」
 アレックスが意見具申を申し出てから、今日の裁定に至るまで七日という日が無駄に費
やされていた。
 皇女が直接指揮権を有する皇女艦隊と違って、一般の統合軍艦隊は国防大臣(艦隊運
用)及び国務大臣(予算配分)の配下にあった。どちらも摂政派に属しているために、い
ろんな理屈を並べて首を縦には振らなかったのである。
 議論は平行線をたどった挙句、直接戦闘には参加しない後方支援ということで、やっと
のこと日の目をみたという次第だった。
「皇女様に対し敵艦隊との矢面に立たせて、第四・第五艦隊は安全な後方支援とはいかな
る所存か?」
 第四艦隊・第五艦隊司令官からも、なぜ自分達は後方支援なのだという意見具申が出さ
れていた。
 しかし大臣達は、戦闘経験のない艦隊を最前線に出すわけにはいかないという一点張り
で対抗した。

 謁見の間から、統制官執務室に戻ったアレックスだが、思わず次官に対して愚痴をこぼ
してしまう。
「まったく……頭の固い連中を相手にするのは疲れるよ」
「お察し致します。総督軍が迫っていると言うのに、相も変わらず保身に終始しています
からね。総督軍との戦いに敗れれば、皇族も貴族もないのに」
「で、艦隊編成の進み具合は?」
「大臣達のお陰で何かと遅れ気味でしたが、燃料と弾薬の補給をほぼ完了して、やっとこ
さ一週間遅れで出撃できる次第となりました」
「一週間遅れか……。何とか間に合ったと言うところだな」
「後方支援ですからね。ぎりぎりセーフでしょう」
「ともかく後方かく乱されることなく、先行することができるようになったわけだ。一日
でも早く先行する艦隊との差を縮めるようにしたまえ」
「かしこまりました」
 背を向けて窓の外の景色を眺めるようにして、腕組をし考え込むアレックス。
 しばしの沈黙があった。
 やがて振り返って命令する。
「第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令を出せ。四十八時間以内に共和国同盟に向けて出撃す
る」
「了解。第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令。四十八時間以内に共和国同盟へ進撃させま
す」
「よろしい」
 ついに迎撃開始の命令を出したアレックス。
 次官はデスクの上の端末を操作して、統合軍総司令部に命令を伝達した。
 艦隊数にして百五十万隻対二百五十万隻という敗勢必至の状況ではあるが、手をこまね
いているわけにはいかなかった。
 数で負けるならば、それを跳ね除けるような作戦が必要なのであるが……。
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第六章 新造戦艦サーフェイス Ⅷ
2020.03.15

 機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス




 海底基地司令部。
 ミネルバが入港しており、基地技術者によって修理が施されていた。
「次なる指令は?」
 レイチェルに尋ねるフランソワ。
「そうね。超伝導回路用のヘリウム4が不足しているのよ。まだ我々の支配下にあるマストド
ーヤにある生産・供給プラントへ補給艦と共に向かってください」
「護衛の任務ですね」
「そうです。重要なる物質です」
「こういうことになれは、このトランターに来るときに使ったヘリウム4がもったいなかった
ですね」
「あの時は、致し方なかったと理解しています。新型モビルスーツを届けることの方が重要な
任務だったのですから」
「しかし輸送艦が襲われて、結局敵の手に奪取されました」
「無事に取り返したから良いでしょう。ともかく、ヘリウム4の供給を成功させてください」
「判りました」

 艦の修理と、燃料・弾薬の補給、そして乗員達の休息を終えたミネルバは、海底基地を出立
して再び海上へと姿を現した。
 後方には補給艦が追従してくる。
「サーフェイスには出くわさないでほしいですね」
「その時はその時です。補給艦の護衛を優先させます。たとえミネルバが撃沈されたとしても
メビウス部隊の活動は続くのですから」
「そうですね」
「力の限りを尽くすまでです」
「それにしても、カサンドラ・リスキー・マストドーヤと、敵の手中に落ちたものを、次々と
奪還し続けていますね」
「占領はしたものの、地上部隊の大半をランドール提督が自分の配下にして、メビウス部隊に
編入してしまいましたから」
「でも政府側で造船所などを押さえている総督軍には、いくらでも艦艇の増産が可能ですから、
いずれメビウスも窮地に陥ります。いずれ供給施設などに兵力を集中させて、にっちもさっち
もいかなくなります」
「我々は、いわゆるパルチザンであり政府や総督軍に対する撹乱が任務です。戦艦などの機動
力を機動力を使っての華々しい戦いよりも、敵中に潜入しての破壊・煽動活動の方が、より大
切な任務なのですから。このミネルバは、総督軍の関心を引き付けて、そういった撹乱部隊を
援護することです」


 リンゼー少佐の方も、造船所に戻ってサーフェイスの修復を受けていた。
「酷い有様だな」
 造船所長官が頭を抱えていた。
 期待を込めて送り出した艦が、無残な状態を晒して戻ってきたからだ。
「申し訳ありません」
「仕方ないさ。同型艦で戦力は互角でも、敵は新型モビルスーツを繰り出してきたんだろ?」
「はい。あれが問題でした。完全独立飛翔型な上に、火力も並大抵ではありません」
「うむ。さすがに天才と謳われたフリード・ケースンが開発しただけのことはあるな」
「今頃、タルシエン要塞かシャイニング基地の研究所で、さらなる強力な兵器を開発している
でしょう」
「困ったことではあるが、宇宙の彼方のことは考えても仕方がないこと、我々はトランターの
ことに気を使っていればいいのだ」
「そうでしたね。それはそうとミネルバ級三番艦はどうなっていますか?」
「建造が大幅に遅れている。もしかしたらランドールの反攻作戦開始に間に合わないかもしれ
ない」
「それは辛いですね。ミネルバを撃つのにも、もう一艦あればこれほど苦労はしないでしょう
けれど」
「ランドール提督の策略で、トランター現有の戦艦をみんな取り上げられていたからな」
「トランターが陥落するとは思ってもみなかったでしょう。軍部の中で、ランドール提督は今
日のこの日があることを見越していました。それで杞憂となる戦艦を集め、核弾頭ミサイルを
も手中にした」
「頭の痛い問題だ」
「ところでメビウスの方にも、それなりの基地があるはずですよね」
「たぶんな。おそらく大海のどこか深海底にあると思われるものを探し出すのは、ほとんど不
可能だろう。ランドールも馬鹿じゃない、すべて計算済みさ」
「きびしいですね」
「まあ、気長にやろうじゃないか」
「はい」
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銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 Ⅱ
2020.03.14

第六章 皇室議会


II


 そういった情勢の間にも、エリザベス以下マリアンヌまでの皇女達の間では、アレック
スを立太子する方向にほぼ同意がなされていた。皇室議会においてジョージ親王がすでに、
皇太子擁立の詮議が確定してしまっている以上、摂政エリザベスをしてもそれを覆すこと
はできない。とはいっても再審議の際には、家族協議における一致があれば、それを尊重
しないわけにはいかない。
 家族だけが集う午餐会には、アレックスを交えて皇女達が仲睦まじく食事を囲む風景が、
ここしばらく続いている。皇太子誘拐、継承争いにかかる姉妹の断絶、そして連邦軍の侵
略と、内憂外患に煩わされていた日々を清算するためには、まず姉妹の絆を結束すること
からはじめなければならない、と誰しもが思っていたからである。アレックスが戻ってき
た今こそがいい機会なのだと。
 最上位席(つまり食卓の端の席)にアレックスが腰掛けて、その両側に順次第一皇女か
ら並んで腰を降ろしている。
「どうも困った事態になりつつあります。摂政派と皇太子派が一触即発状態にまで発展し
つつあります」
 アレックスの口から最初に出た言葉だった。
 それに呼応してマーガレットが答える。
「それもこれも、皇室議会が皇太子問題を棚上げにしているせいよ」
「ベスには悪いけど、皇室議会は摂政派が過半数を占めていますからね」
 ジュリエッタも批判的な意見だった。
 摂政派……。
 誰が最初に言い出したかは判らない。
 皇太子候補となったロベール王子と父親のロベスピエール公爵一派というのが、真の意
味での正確な表現であろう。
 そして母親であり公爵夫人であるエリザベスが、銀河帝国の摂政として国政を司ってい
ることから、誰から言うともなく摂政派と呼称されるようになった。
 摂政派という呼称を使われるとき、エリザベスは辛酸を飲まされるような気分に陥る。
 しかも血肉を分けた家族から言われる心境はいかがなものであろうか。
「今は摂政派だ皇太子派だと論じている場合じゃない。総督軍の迫り来る情勢の中、早急
に迎撃体制を整えなければならないというのに。とにかく内政に関しては、これまで通り
にエリザベスに任せますよ」
「問題は傀儡政権となっている頭の固い大臣達よ。帝国軍を動かすには予算繰りから人事
発動まで、実際に権限を持っているのは大臣なんだから。何かにつけていちゃもんを付け
てはなかなか動こうとはしない」
「そうね。今動かせる艦隊は、第二艦隊と第三艦隊だけじゃない。叔父様達の自治領艦隊
は動かすわけにはいかないし……」
「合わせて百四十万隻。総督軍は二百五十万隻というから、数だけを論ずるなら確実に負
けるわね」
「あたしの艦隊もあるわ」
 マリアンヌが口を挟んだ。
 第六艦隊の十万隻を忘れないでという雰囲気だった。
「そうだったわね。合わせて百五十万隻よ」
 十万隻増えたところで体勢に影響はないが……。
 幸いにも将軍達は、アレックスに好意的だったので、軍内部での統制はすこぶる良好で
あった。
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