あっと!ヴィーナス!!第二部 第一章 part-9
2020.01.15

あっと! ヴィーナス!!第二部


第一章 part-9

 やがてファミレスから二人の後を追うように黒服が出てくる。
「あ、あいつだ」
 飛び出そうとするのを、止めるディアナ。
「なぜ止める!」
「言っているだろ。すでに起きてしまった過去に干渉するなと」
「だからって黙って見ているのかよ」
「そうだ。おまえが出て行けば、おまえが二人になるってことだ。これが判るか?」
「う……」
 図星をつかれて、しどろもどろになる弘美。
 そうこうするうちに、黒服が愛をさらって行く。
「よし、いいだろ」
 というと、手のひらを上向きにして何やら呟くと、その上に小さな天使が現れた。
「あの、黒服が抱えている女の子を追いなさい」
「はあい」
 かわいい声で返事をすると、ぱたぱたと羽ばたいて黒服を追い始めた。
「エンジェルに尾行させるのか?」
「ああ。あの子は、黒服には見えないからな」
「なるほど」
 やがて黒服も小さな天使も空の彼方に消え去った。
「で、これからどうするんだ?」
「なあに大丈夫さ。これがある」
 と、スマートフォンを取り出した。
「スマホか?どこに隠し持ってたんだよ」
「秘密のポケットがあるのさ」
「ドラ〇モンかよ」
「これで天使と連絡を取れる」
「神でも電話するのか?」
「神を馬鹿にするなよ。天上界にはパソコンもインターネット環境も揃っているぞ」
「なんだよ、それ。エンジェルもスマホ持ってるのか?」
「彼女とは探偵バッチで通話できるぞ」
「少年探偵コナンかよ」
「ついでに天使の位置情報を表示することができるぞ、ほら」
 と見せ付けるスマホの画面には、赤い点滅が表示され動いていた。
「眼鏡レーダーじゃないんだな」
「そこまではパクレないわよ」
 スマホ画面を見つめる弘美とディアナ。
 と、突然スマホから音声が、
「あーあー。本日は晴天なり、本日は晴天なり」
 聞こえた。
「なんだ?近くにハム無線局でもあるのか?」
「彼女からの通信だよ」
「あ、そう」
「感度良好だよ。何かあったか?」
 スマホに話しかけると、答えが返ってくる。
「今、黒服が大きな雲の塊の中に入っていきます」
「追えるか?」
「任せてください」
 通信が途絶えた。
「大きな雲の塊ねえ……」
 と空を仰ぐ弘美。
 すでに黒服と天使の姿は見えない。
 真っ青な空に雲一つ見えない快晴。
 なのだが、場違いとも思える巨大な雲塊がゆっくりと流れていた。
「入道雲じゃないな。どうやら、あの雲みたいだ」
 ディアナの言葉を受けて、
「もしかしたらラピュタか?中に城があってさ」
 弘美が推測する。
「うむ、そうかもな。アポロの居城があるのかも知れない」
 意外にも同調するディアナ。
「どうやって、空の上の雲に行く?」
「大丈夫さ。これがある」
 と突然姿を現したのは、ディアナの愛機。
天駆けるあまかける戦車だよ」
 古代ギリシャで使われていた、馬が戦車を引くアレだが、ソレは空を飛べる天馬が繋いであった。
「ソレで近づいたら、アポロに気づかれないか?」
「なあに、アポロは女以外は興味がないし、全知全能のゼウスの息子だ。たかが一般職の神相手には目もくれないさ」
「一般職ってなんだよ」
「知らないのか?」
「知るかよ」
「アポロから見れば、わたしはただの時間管理局の局長だし、ヴィーナスは運命管理局の局長だ」
「なるほど。ゼウスが国王とするならば、アポロは大臣で、ヴィーナス達は各省の政務次官というところか」
「そうなるな」

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あっと!ヴィーナス!!第二部 第一章 part-8
2020.01.14

あっと! ヴィーナス!!第二部


第一章 part-8

「で、どうやってアポロの元へ行くんだ?」
「わからん」
「わからんって……なんでやねん」
「ああ、アポロは居所をちょこちょこ変えるし、隠れ家なんかもあるからね」
「じゃあ、どうやって探すんだよ」
「愛を連れていったのは使徒だ。そいつを追いかければ判る」
「何言ってるの。そいつはとっくに空の彼方だ」
「わたしを誰だと思っている」
「天空の女神だろ」
「で、能力を知っているか?」
「天空を駆け巡り、時を操る……って、おいまさか!」
「そのまさかよ。愛が誘拐されるその時限に遡り、使徒の後を隠れて追いかけ、アポロ
の居場所へ案内してもらうのさ」
「なるほどな」

「では行くぞ」
「おうともよ」
 ディアナが手を前に突き出すようにして、
「ゲート、オープン!」
 と言うと、目の前に扉が現れた。
「なんだ?どこでもドアか?」
「ドラエ〇ンではないぞ」
 扉には【過去への扉】という札が掛かっていた。
「なんだよ、この札は」
「君にも理解できるようにしたつもりだが」
「そうか。では、ノックしてから入るのか?」
「なぜそうする?」
「部屋に入るときは扉をノックするのが礼儀だろう」
「その必要は無い」
 というとディアナは扉のノブを回した。
 目の前には、どこへ続いているか判らぬ暗黒の闇が広がっていた。
「着いて来い!」
 扉の中へと入ってゆくディアナに続いて、弘美も恐る恐る入る。

 暗い扉を抜けた先は雪国、ではなくて弘美が働いているファミレスの前だった。
「なんだファミレスじゃないか」
 行き交う人々の中に、見知った人物がいたので声を掛けようとすると、
「待ちなさい。ここは過去の世界だ、干渉することは許されない」
「未来が変わるとか、パラレルワールドに突入するとかか?」
「それもあるが、アポロに気づかれるかも知れぬ」
「触らぬ神に祟りなしか」
「まあ、そういうことだ。そもそも我々の姿はこの世界の人々には見えない」
「なんだ」
 ファミレスから弘美と愛が楽しそうに出てくる。
「ふうっ!疲れたあ」
 大きく伸びをする愛。
「それにしても……あの人、なんだろうね」
「例の客?まだ食べているのかな」
「ううん……どうかな。もう食べ終わってるんじゃない?」
 談笑しながら帰り道を歩く二人。
「同じこと喋ってるな」
「当たり前だろ」

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あっと!ヴィーナス!!第二部 第一章 part-7
2020.01.13

あっと! ヴィーナス!!第二部


第一章 part-7

「とにもかくにも、お困りのようだな」
「ああ、愛ちゃんが誘拐された」
「取り戻したいか?」
「もちろんだ。出来るのか?」
「出来ないこともない」
「どういうことだ?」
「愛を誘拐したのが、アポロの使徒だからな」
「アポロって、すけべったらしで、とっかえひっかえ女を漁るという奴か?」
「言いたい放題だな。まあ、そのアポロだ」
「で、そのアポロが愛ちゃんを拐ったのはなぜ?」
「ふむ、ちょっとした人違いだったのだがな」
「人違い?」
「これを見よ」
 と差し出したのは、一枚の写真だった。
 そこには学校の校門を出てくる二人の少女。
 愛と少し遅れて自分の姿が映っていた。
「愛ちゃんだ!隠し撮りか?」
「そのようだな。これと同じものがアポロの手にある」
「つまりこの写真に映っている愛ちゃんを誘拐したと?」
「そのようなんだが、実は後ろにいる君が本当の標的だったんだ」
「僕を誘拐するつもりが、人違いで愛ちゃんを拐ったということか?」
「そういうことだな」
「しかし、なんで僕を?」
「ああ、それは極秘事項なので言えないんだ」
「じれったいなあ!愛ちゃんを助け出せるのか、助けられないのかはっきりしろよ」
「助けたいのか?」
「もちろんだよ」
「人違いだと言ったよな」
「ああ」
「愛君の代わりに君がアポロの元へ行けば良い。早い話が、人質交換というわけだ」
「一つ聞いていいか?」
「なんだ」
「僕がアポロの元へ行ったらどうなる?」
「行けばわかる」
「それでは答えになっていないぞ」
「神は気まぐれなものさ。少なくとも命を奪われることはないぞ」
「わかったぞ!女たらしで有名なアポロのことだ。そういうことだな!?」
「そういうことにしておこうか」
「僕が行くと思うか?」
「なれば愛とやらがどうなるか判らんぞ。今頃衣服を引っ剥がされて、乳房をもろ出しに
弄ばれているかもな」
「ううっ。卑怯な」
「行くの?行かないの?」
「わかったよ。行けばいいんだろ!」
「素直でよろしい」

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