あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-4
2020.01.23

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-4

 その頃。
 姿を消したエンジェルは、ディアナの特命を受けて、天空城の内部を探索していた。
 ラピュタが飛行石で浮遊していたように、この天空城も何らかの機関が動いているはず
だ。
 その動力源の位置を確かめるためである。
 さすがに神のアポロでも、この巨大な城を神通力で動かすことはできないだろう。
「あーん。広すぎて、どこにあるかわかんないよー」
 ただでさえ、小さな身体である。
 飛翔能力にも限界がある。
「疲れたあ……ちょっと休憩」
 といいながら、小さな突起の上にちょこんと座って羽を休めた。
 折りしもその真下の通路を、衛兵が会話しながら通り過ぎる。
「しかし、すごい機関だよなあ」
「ああ、超伝導磁気浮上システムなんて、誰が考えたんだろね」
「この天空城、実は人間が作った戦争のための要塞だったらしい」
「それをアポロ様が奪い取ったんだよな」
 などと言いながら。
 エンジェルはいいこと聞いたと思った。
 人間が作ったものなら、機関を動かしたり止めたりするマニュアルがあるはずだ。
 気を取り直して、再び飛び出したエンジェル。
 やがて動力機関の心臓部であるコントロールルームにたどり着く。
 ほとんど自動で動いているらしく、人も神子も見当たらない。
 マニュアルは、当然この近くにあるはずだ。
 室内を飛び回って探し回るエンジェル。
「あった!これね」
 本棚に納められているマニュアルらしき本を引き出しに掛かる。
 人間にとって普通の本でも、小さなエンジェルには身が重い。
「ぐぬうう。何のこれしき」
 目一杯羽ばたいて、羽ばたいて、羽ばたいて。
 ドスン!
 と、マニュアルが床に落ちた。
 うまい具合に、閲覧できように上向きで開いた状態で落ちた。
「やったあ!」
 早速マニュアルに飛びつく。
「さてと、動力を止める方法は……」
 人間が書いた文字や図形に困惑しながらも解読を進めてゆく。
 エンジェルとて神の子だ。
 人間に読めて、エンジェルに読めないものはない。
 ページを捲りながら、動力停止の方法を読み解く。
「あった!これだわ」
 じっくりと読んでから、制御盤に向かう。
「ええと……」
 制御盤のボタンを確認して、
「ピッポッパッ、ポーン」
 マニュアル通りに押してゆく。

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あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-3
2020.01.22

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-3

 その頃、神殿に密かに侵入したディアナ達。
「本当にここに連れ込まれたのか?」
 疑心暗鬼の弘美。
「それは間違いありましぇん!」
 弘美の周りを飛び交いながら、先に潜入していたエンジェルが断言する。
「あっ、そう……」
 神殿の冷たい床の上を、あまり音を立てないように慎重に歩を進める一同。
「なあ、とうにアポロに気づかれてるんじゃないの?」
「かもな」
「なら、こんな忍び足は無駄じゃないの?」
「衛兵もいるからな。少しでも争いは避けたい」
 突き進んでいくと、目の前が大きく広がった。
 玉座の間に到着したようだ。
 アポロは、どっしりと構えて玉座に鎮座していた。
「やあ、待っていたよ。ディアナ」
 指名されたディアナが、
「やはり、気が付いてたのね」
 一歩前に進んだ。
「その娘が本命だね」
 ディアナの後ろに隠れるようにしていた弘美を見て、指摘するアポロ。
「ほう、さすがゼウスの目に適う顔つきをしているね」
 穴が開くほど弘美を見つめて品定めしている。
「ゼウス?」
「あれ、知らないの?君は、ゼウスのお気に入り娘リスト【ファイルーZ】の一人なんだ
から。ZはゼウスのZというのは判るよね」
 ファイルーZという言葉を聞いて、首を傾げる弘美。
「それは、何でしょうか?」
 その言葉は、ヴィーナスもディアナも説明していなかった。
 というよりも、秘密にしていたのだから。
 読者の皆さんも、気づいていた方、気づいていなかった方いるでしょうが……。
「まあ、まあ。その話は後でゆっくりと話しましょう。今は、目の前の愛ちゃんを助ける
ことが先決です」
 ヴィーナスが話題をそらす。
「そうだねえ。その娘が、わたしの元にくるなら、この娘は解放しましょう」
 交換条件を示すアポロ。
 当然承諾できるような内容ではない。
「お断りします!」
 きっぱりと答える。
 うろたえる女神。
「そんな、いきなり断るのは……」
「そうそう、できるだけ交渉を伸ばして、時間を稼がなくちゃ」
 弘美に耳打ちする。
「時間稼ぎって、何……? そういえば、エンジェルの姿が見えないようだが」
「しーっ!」
 人差し指を唇に当てて、口止めする。

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あっと!ヴィーナス!!第二部 第二章 part-2
2020.01.21

あっと! ヴィーナス!!第二部


第二章 part-2

 天空城の中にある神殿。
 玉座に座り神子を侍らせて、酒をあおっているアポロがいる。
 そこへ、愛を誘拐した黒服が入場する。
「ご命令のものをお連れしました」
 と抱えていた愛を、慎重に床に降ろした。
「ご苦労だった。下がってよいぞ」
「ははっ」
 静かに退場する黒服。
「ご尊顔を拝見するか……」
 アポロが右手を前にかざすと、愛の身体が浮き上がって、アポロの方へ。
 そしてふわりと、その膝の上に乗った。
「さて、どんな顔をしているかな」
 愛の顎をしゃくりあげるようにして、その顔を眺めるアポロ。
「ほほう。なかなか可愛い顔立ちをしておるな。気に入ったぞ」
 と、ほくそ笑んだその時。
 神殿にテレポートしてきた者がいた。
 ゼウスの妻のヘラだった。
 アポロの膝の上の愛を見て、
「どうやら無事に成し遂げたようだね」
 安堵の表情をしている。
「約束通り、わたしの女にするよ。いいね」
「好きにするが良い」
 念のためにと近づいて、顔を確認するヘラ。
「違う!この子じゃない。人違いだ!」
 驚いた表情のヘラ。
「どうして?写真の女の子だろ?」
 例の写真と見比べている。
「その女の子の後ろにいるのが本物だよ」
「はん?後ろの女の子?」
「そうだ!」
「いい加減な写真を渡すなよ。後ろなら後ろとちゃんと言えよ」
「それは悪かった。とにかく、もう一度やってくれ」
「やってやらないことはないが……。この娘は頂いておく」
「勝手にしろ!」
 というと、いずこへともなく消え去るヘラ。
「いい加減だから、ゼウスにも飽きられるんだよ」
 アポロが呟いた途端、
「今、何か言ったか?」
 忽然と、再び現れたヘラ。
 聞き耳を立てていたのか?
「いや、何も。空耳だろう」
 陰口に戸は立てられぬ、という諺どおりである。
「そうか……では、頼んだぞ」
 念押しして再び消え去る。

「黒服を呼べ!」

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