性転換倶楽部/特務捜査官レディー 遺言状公開(R15+指定)
2019.04.23
特務捜査官レディー
(響子そして/サイドストーリー)
(五十四)遺言状公開
「ひろしは……いや、響子だったな……。響子は、私を許してくれるだろうか?」
京一郎氏は、母親殺しに至った孫のひろしに対して、祖父として何もしてやれなか
ったことを後悔していた。実の娘である弘子を殺されたことと、手に掛けたのが孫の
ひろしということで、人間不信に陥ってしまっていたのである。
「磯部さんの気持ちは判ります。響子さんだって、自分のしたこととして反省をすれ、
祖父であるあなたを恨む気持ちなどないでしょう。双方共に許しあい手を取り合えば
気持ちは通じるはずです。血の繋がった肉親ですからね」
「あなたにそういってもらえると少しは気持ちも治まります。ありがとう」
「どういたしまして」
「それでは、響子を迎えに行くことにしましょう」
ということで、磯部氏は出かけていった。
屋敷内に残されたわたし。
「さて、わたしも屋敷内を見回ってみるか……」
健児を迎えて、想定されるすべての懸案に対して、どう対処すべきか?
逃走ルートはもちろんのことだが、健児のことだ拳銃を隠し持っている可能性は大
である。
銃撃戦になった場合のこと、メイドに扮した女性警察官を人質にすることもありう
る。
あらゆる面で、屋敷内での行動指針を考え直してみる。
「それにしても広いわね……」
つまり隠れる場所がいくらでもあるということになる。
遺言状の公開は大広間で行う予定である。
問題はすべて大広間で決着させるのが得策である。
事が起きて、大広間から逃げ出されては、屋敷内に不案内な捜査員や女性警察官に
は不利益となる。
何とかして大広間の中で、健児をあばいて検挙するしかないだろう。
「うまくいくといいけど……」
計画は綿密に立てられた。
必ず健児はぼろを出すはずである。
やがて磯部氏が響子さんを連れて戻ってきた。
車寄せに降り立った磯部氏と響子さんの前にメイド達が全員勢ぞろいしてお出迎え
する。
「お帰りなさいませ!!」
一斉に挨拶をするメイド達。
響子さんの後ろで、もう一人の女性がびっくりしていた。
誰だろうか?
予定にはない客人のようだった。
計画に支障が出なければいいがと思い悩む。
執事が一歩前に出る。
「お嬢さま、お帰りなさいませ」
全員女性警察官にすり替わっているのだから、メイド達のことを響子さんが知って
いるわけがないが、この執事だけは顔馴染みのはずだ。
「お嬢さまだって……」
女性が響子さんに囁いている。
「そちらの方は?」
執事が尋ねると響子さんが答えた。
「わたしの親友の里美よ。同じ部屋で一緒のベッドに寝るから」
そうか、例の性転換三人組の一人なのね。
名前だけは聞いていた。
「かしこまりました」
「わたしのお部屋は?」
「はい。弘子様がお使いになられていたお部屋でございます」
引き続き執事が受け答えしている。
メイドには話しかける権利はなかった。
相手から話しかけられない限り無駄口は厳禁である。
「紹介しておこう。響子専属のメイドの斎藤真樹くんだ」
磯部氏がわたしを紹介する。
「斎藤真樹です。よろしくお願いします。ご用がございましたら、何なりとお気軽に
お申しつけくださいませ」
とメイドよろしくうやうやしく頭を下げる。
「こちらこそ、よろしく」
「響子、公開遺言状の発表は午後十時だ。ちょっとそれまでやる事があるのでな、済
まぬが夕食は里美さんと二人で食べてくれ。それまで自由にしていてくれ」
「わかったわ」
そういうと執事と一緒に奥の方に消えていった。
他のメイド達もそれぞれの持ち場へと戻っていく。
残されたのは響子と里美、そしてわたしの三人だけである。
「里美に、屋敷の案内するから、しばらく下がっていていいわ」
響子がわたしに命じた。
「かしこまりました、ではごゆっくりどうぞ」
下がっていろと言われて、それを鵜呑みにしてしまってはメイド失格である。
わたしは響子さんの専属メイドである。
主人の身の回りの世話をするのが仕事であり、万が一に備えていなければならない。
目の前からは下がるが、少し離れた所から見守っていなければならなかった。
響子さんが、里美さんを案内している間にも遠めに監視を続けることにする。
やがて夕食も過ぎ、午後九時が近づいてとうとう遺言公開の時間となった。
次々と到着する親類縁者たち。
響子さんの専属であるわたしを除いた他のメイド達が出迎えに出ている。
自分の部屋でくつろぐ響子さんと里美さん。
「ぞろぞろ集まってきたみたい」
窓から少しカーテンを開けて覗いている響子さんと里美さんだった。
遺言公開の場に出ない里美さんはネグリジェに着替えていた。
「お嬢さま、旦那様がお呼びでございます」
そうこうするうちに、別のメイドが知らせにきた。
「いよいよね」
「頑張ってね。お姉さん」
何を頑張るのかは判らないが……。
里美さんを残して部屋を出て、響子さんを大広間へと案内する。
わたしと別のメイドの後について、長い廊下を歩いていく。
大広間の大きな扉の前で一旦立ち止まって、
「少々、お待ち下さいませ」
軽く会釈してから、その扉を少しだけ開けて入って行く。
「お嬢さまを、ご案内して参りました」
「よし、通してくれ」
「かしこまりました」
指示に従って、大きな扉をもう一人のメイドと共に両開きにしていく。11
性転換倶楽部/響子そして 散策(R15+指定)
2019.04.22
響子そして(覚醒剤に翻弄される少年の物語)R15+指定
この物語には、覚醒剤・暴力団・売春などの虐待シーンが登場します
(二十四)散策
わたしと里美、そしてわたし付きのメイドが残っている。
「里美に、屋敷の案内するから、しばらく下がっていていいわ」
「かしこまりました、ではごゆっくりどうぞ」
メイドが下がって、二人だけになる。
「ふう……。息がつまったわ」
とたんに表情を崩す里美。
広い屋敷にあって、大勢のメイドに囲まれたりするような経験がないから当然だろ
う。
「せっかく来たんだから、屋敷内を案内するわ」
「サンキュー」
屋敷内の調度品に多少の変更はあったが、ほとんど昔暮らしていたままだった。
「まるで美術館ね」
壁という壁には、洋館にふさわしく大きな油彩の洋画が飾られている。
「昔、洋画家を目指していた祖父の趣味よ」
「これ全部、本物の画家が描いたものなんでしょねえ」
「まあ、それなりにプライドがあるから、贋作は飾ってないと思うよ」
中には美術誌で見たような見ていないような作品もあるが、本物か贋作かは判らな
い。
鑑賞会よろしく壁に沿って絵画を鑑賞しながら、中庭へとでてきた。
ニンフが水辺で戯れている風情を表現した彫刻のある、円形噴水のそばの大理石の
ベンチに腰掛ける。
「ねえ。お母さまは、なぜこの屋敷を出たのかしら。何不自由なく暮らせるのに」
「それは親子水入らずの生活をしたかったからよ。わたしを自分の手で育てたかった
みたい。ここにいればメイド達が何でもやってくれるけど、ぎゃくに言えばメイドを
遊ばせないために、自分でやりたいこともやらせなければならないということもある。
たぶんわたしは乳母に育てられていたかもね。自由でいてちっとも自由じゃないの。
まあ、ものぐさな人は楽でいいと思うでしょうけど」
「そうか、自分の子を自分で育てられないというのも問題ね。でも愛人を作るような
父親だったら、こういう生活の方がいいんじゃない? メイドに手をつけることだっ
て可能だから。ああ、だからお母さま、あえて出ていったのかもよ。父親の性格に気
づいてたんじゃない?」
「でも結局そのことが仇になって、覚醒剤の売人を近づけさせることになったわ」
「そうね、この屋敷なら売人も簡単には入ってこれないもんね」
そういいながら中庭からの屋敷の景観を眺める里美。
「あら、メイドさんが立ってる」
「ああ、真樹さんね」
中庭に出てくる扉のところに真樹さんが待機して、こちらをうかがっている。
「下がれと、命令されたんじゃない?」
「だから目立たないところまで下がってるわよ。いくら言われたってそれを鵜呑みに
するものではないわ。わたしに万が一があったら、責任を問われるのは真樹さんなの
よ。雇い主であるおじいちゃんから直接言われない限りは、メイドとしての職務は引
き続いているのよ。いろいろ気を遣わなければならないから大変な仕事なんだから」
「ふーん。そうなんだ……」
別のメイドが食事の用意ができたと伝えに来た。
自分の部屋で食べると言って返す。
「里美、お食事にするわよ」
「お姉さんの部屋ね」
「お母さんの部屋だったところよ」
「息子だった時の部屋は?」
「ないよ。お母さんの部屋は決められていたけど、わたしの部屋は来訪する都度に用
意されたの。正当な相続人はお母さんだから。それに子供の時は、お母さんと一緒に
寝ることが多かったし」
部屋への道すがら里美が尋ねる。
「ねえ、響子さんのおじいさんの資産って、どれくらいあるの?」
「そうねえ。千億は下らないんじゃないかな……」
「この屋敷だけでも数百億かかってるんじゃない?」
「そうね。土地の広さだけでも、確か三万坪くらいはあるかな。さっき里美が迎賓館
みたいと言ってたけど、丁度それくらい」
「三万坪……。次元が違うわ。超資産家令嬢じゃない」
「そっかなあ……。考えた事ないから」
「これだもんね。付き合いきれないわ」
「何言ってるの、あなただって縁談がうまくまとまれば、行く末は社長夫人じゃない」
「でも、倒産するかも知れないじゃない」
「社長さんが言ってたじゃない。将来まで幸せであるよう尽力するってね。その時は
きっと援助してくれるわよ。わたしだって妹を見捨てるつもりはないし」
「お姉さん、ありがとう。だから大好きよ」
「これこれ、抱きつくんじゃない」
部屋に戻ってしばらくすると、料理が運ばれて来た。
一流ホテルで良く見掛けるテーブルワゴンに乗せて次々と料理が運ばれてくる。
フルーツトマトのカッペリーニ、白アスパラガスのカルボナーラ仕立て、白ポレン
タのミネストラ、ノレソレと葉わさびのスパゲッティーニ、平目のソルベ・キャビア
とじゃがいものスープ、和牛のタリアータ・香草のサラダ添え、グレープフルーツと
レモングラスのジュレ・ヨーグルトのソルベ添え、カッフェ。
ワイン係りがそばにいて、それぞれに最適なワインを出してきてくれる。
それらの料理に目を丸くしながらも平らげていく里美。
「ふう……。おいしかったわ。一皿残さず食べちゃった」
「ほんとに良く食べたわね。シェフも料理のしがいがあったでしょうね」
「わたしはお姉さんや由香里ほど、女性ホルモン飲んでる期間が長くなかったから、
胃腸がまだ女性並みになってないみたいなのよね」
「だからといって、油断してると太るわよ」
「はーい」
最後のコーヒーをいただきながら、そんな会話している。
ドア寄りに待機している真樹さんに聞かれているとは思うのだが、躾が行き届いて
いるらしく、表情を変えたりはしない。11
銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第三章 狼達の挽歌 VII
2019.04.21
機動戦艦ミネルバ/第三章 狼達の挽歌
VII カサンドラ訓練所
その頃。
モビルスーツパイロット養成機関「カサンドラ訓練所」を抱えるパルモアール基地。
基地の空港の一角に輸送艦が停泊しており、警戒のためのモビルスーツが待機して
いる。
そのかたわらで明らかに新型と思われる真新しい機体、ぎこちない動きを続けるモ
ビルスーツがあった。
「どうだ、調子は?」
「どうだと言われましても、この機体にインストールされているOSは、手足を動か
して移動させる程度の輸送用のOSなんですよ。ちゃんとした起動用のプログラムを
インストールしなければ、とても戦闘に使えませんよ」
「やはりな。輸送艦内を探しているのだが、起動用プログラムが入ったディスケット
が見つからん」
「輸送艦のコンピューター内に保存してあって、そこからコピーして使用するという
ことはないですか?」
「ああ、その可能性もあるだろうと思ってな、システムを調査させているところだ」
「とにかくOSがない限り、こいつはまともに使えませんよ」
「判った。今日はもういい。その機体を格納庫に収納しろ」
「了解しました」
地響きを立てながらよちよち歩きのような格好で格納庫へと移動するモビルスーツ。
さて、その輸送艦とモビルスーツは、フランソワがタルシエン要塞から遠路はるば
る運んできたものだったが、トランター本星への輸送を完了したものの、「メビウ
ス」に渡る前に接収されてしまっていたのであった。
基地に隣接する、カサンドラ訓練所。
次の世代を担うモビルスーツパイロット候補生達が日々の研鑚を続けていた。
「駆け足! 全速力!!」
グラウンドでは、訓練用の機体に乗り込んでの操縦訓練の真っ最中だった。
地響きを立てながら整然と隊列を組んでグラウンドの周囲を走り回っていた。
「こらあ! そこ遅れるな!!」
訓練生達の機体のそばでジープに乗り込んで後を追いかけながら、拡声器を使って
指示を出している教官。
パイロットにも各人各様、習熟度が違う。
機体を完全に乗りこなしている優秀なパイロットがいれば、今日乗り込んだばかり
というような不慣れなパイロットもいる。
「すみませーん!」
黄色い可愛い女性の声が訓練機体から返ってくる。
共和国同盟では男女均等法によって、男女区別なくパイロットとして士官できる。
「まったくおまえはどうしようもなくどんくさい奴だ! これが終わったら、その足
でグラウンド十周!!」
「そ、そんなあ」
- CafeLog -
2019.04.23 15:10
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