機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ

「高速推進音接近! 魚雷です」
 聴音機(パッシブソナー)に耳を傾けていたソナー手が報告する。
「急速浮上! デコイ発射」
 魚雷が急速接近してくる。SWSは急速浮上してこれを交わしながら、デコイ(囮魚雷)で魚雷の目標を反らしてしまおうというのだ。
「アクティブ・ソナー音が強くなってきます。敵艦接近中」
 超音波を出して、その反響音から敵艦の位置を探るのがアクティブソナーである。敵艦を補足して、頭上から爆雷を投下するのが、攻撃の手順である。
 敵艦を探知するには確実であるが、逆に言えば音源を発していることから逆探知されることを意味して、隠密を前提とする潜水艦側から使用することはまれである。
「爆雷です!」
 イヤフォンを急いで外しながら、再び叫ぶソナー手。
「取り舵十度! 深度百メートル」
 逃げ回るしかなかった。
 水上艦対潜水艦の一対一の戦闘の場合、圧倒的に水上艦の方が優位だとされている。艦の速度差、探知装置の充実性、攻撃力の相違など、水中にある潜水艦は劣勢に立たされる。よって水上艦と接触したら逃げ回るしかないのが現状である。
 最上の方策が、敵の攻撃や探知の届かない深深度潜航で逃げるのが一番である。
 しかしこの艦長は、反撃を企んでいるのか、浅い水域を逃げ回っていた。
 一回目の爆雷攻撃を終えた水上艦は一旦離れていった。が、やがて引き返してきて攻撃を再開するだろう。
「もう一度魚雷がくるはずだ。それを交わして次の爆雷攻撃の直後に、潜望鏡深度に急速浮上して、魚雷攻撃を敢行する。狙いはつけられないが、必ず当てられるはずだ」
 予想通りに魚雷が襲い掛かってくる。
「アンチ魚雷発射! 五十まで浮上」
 迫り来る魚雷を直接破壊する迎撃魚雷である。
 難なく魚雷を交わして、次の攻撃を待つ。
「さて、次にくる爆雷攻撃の後が肝心だ。艦尾魚雷発射管に魚雷を装填。発射角度を三度で調整」
 逃げ回ってはいるが、余裕綽々の艦長であった。そもそも潜砂艦として建造された構造上、通常の潜水艦に比べて外壁に格段の相違があったのだ。その厚さだけでも二倍以上あるし、砂の中を進行する為に非常に滑りやすくできていた。仮に爆雷が炸裂してもビクともしないし、魚雷もつるりと滑って反れてしまう確率が高い。
 ソナー音が近づいてきた。
「おいでなすったぞ」
 やがて水上艦からの爆雷攻撃が再開された。
「よおし。潜望鏡深度まで浮上! 魚雷発射準備」
 爆雷の雨の中を上昇するSWS。
 すでに水上艦はすれ違いを終えている。
「今だ! 魚雷発射!」
 艦尾魚雷が発射される。
 扇状に開きながら、敵艦に向かう魚雷。
 そして見事に敵艦に命中した。
 火柱を上げながら沈んでいく水上艦。
 SWSの艦内にも、きしみ音を上げて水没していく様子が、水中を渡って響いてくる。
「撃沈です」
「よし。皆、よく耐えて頑張ってくれた。これより基地に帰還する」
 乗員達の表示に明るさが戻ってくる。
 久しぶりの基地帰還である。
 艦内ではできなかったシャワーを浴びたり、豪勢な肉料理にかぶりついたり、そして何より、しばしの休暇が与えられるの一番の喜びだった。

 第四章 了

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