真夜中の出来事/流星


 流星

 それは星の降るような美しい夜のことだった。
 空には雲一つ見えず、まるで銀のベールのような天の川が天空を東から西へと流れて地平線の彼方へと消えているのが何とも形容しがたく、かの星雲は淡い光を投げかけ、かの星は大気に揺られて怪しくまたたいていた。
 そんなメルヘンのような夜の世界を、一人の少年が歩いている姿があった。少年は足元に注意しながら、早足で家一つ人ひとりとしていない野道を歩いていた。
「だいぶ遅くなったな。家に帰ったらまた親父にどやされそうだな。もっと早く切り上げればよかった」
 少年は、今までずっと友人の家で遊んでいたのであるが、ゲームにあまりにも熱中し過ぎてたために時のたつのも忘れ、しかも金を掛けていたので負けて金を取られまいと必死になっていたから、こんな時刻になってしまったのだ。しかし、気がついた時には五千円という金と五時間の時を無駄に使ってしまっていた。
「今夜はついていないや」
 と、呟いて空を見上げた時だった。
 空の一角に今まで見たこともないような美しく明るい星がまばゆいばかりに輝いていた。
 少年は一瞬、金星ではないかと思ってみたが、こんな真夜中に見られるわけがなかったし、それに金星とは比較にならないくらいに明るかったのだ。
 それではあの星は一体何なのだ?
 と、じっと食い入るように見つめていると、その星は次第に明るさを増し、かつ大きさも増大していくのだった。
「大流星だ!」
 少年は、突然大きな声を上げた。その星はまさしく少年の立っている地点に向かって、ものすごい速さで突進してきていた。
 危険を感じてその場から逃げようとしたが時すでに遅く、大音響を上げて大地に激突して爆発し、そして少年は死んだ。
「おい、起きろ。起きらんか、こら!」
 その声で、少年は目を覚ました。
「あれ? ここはどこだ。天国じゃないな。なんだ夢か」
「馬鹿野郎! 何言ってやがる。ゲームの途中に居眠りなんかしやがって……。まあいい。もうゲームはおしまいにしょうぜ。おまえの五千円の負けだ」
「そうか、五千円の負けか。そんなに負けたのか……。あれ、もう十一時じゃないか。今頃親父の奴、かんかんになっているだろうな……。帰るとするか」
 少年は、友人に五千円を支払ってその家を出た。
 外はすっかり暗くなっていて、足元さえもはっきりと判らなかった。
 そして、しばらく歩いて野道に差し掛かった時に、ふと呟くように言った。
「だいぶ遅くなったな。家に帰ったらまた親父にどやされそうだな。もっと早く切り上げればよかった」

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