美奈の日記 22
夜が明けた。
目が覚めると、同じベッドで眠ったはずの静香さんの姿はすでになかった。
「台所かな……」
パジャマを脱いで、制服に着替えて台所へ向かう。
「ママ、おはよう」
声を掛けて台所に入ると、
「おはよう、美奈ちゃん」
ママと一緒に朝食の支度をしている静香さんから挨拶をされる。
エプロン姿が良く似合っていた。
お味噌汁のいい香りが漂っていた。
「おはよう、静香さん」
「おはよう、美奈ちゃん。お皿を並べてくれるかしら。それが終わったら、パパを起こし
てきて」
「はーい!」
今日は静香さんがいるから、朝食の支度がはかどっているようだった。
一人暮らしをしているせいもあって、静香さんは料理上手で、その手際さはみるものが
あるんだ。
「そりゃあねえ。仕事を持っている身には、朝というものは少しでも時間がおしいし、い
かに簡単に短時間に調理できるか、それでいておいしくなければ意味ないからね。毎日の
ことだからそれなりに試行錯誤でやってるわよ。時は金なりでね、漫然と時間を過ごして
いたら、すぐにおばあちゃんになっちゃうわよ」
社長秘書をやっているだけあって、時間管理には厳しいんだよね。
「ボク、まだ十二歳だよ」
すると、人差し指を顔の前で軽く横に振りながら、
「チッ! チッ! だからこそよ。思春期の物思う年頃の貴重な時間ってことよ。クラス
メートをいじめの果てに死に至らしめたり、乗っていた電車が脱線事故で被害に会うかも
知れないし、この物騒な世の中明日はどうなるか判らないじゃない。命短し恋せよ乙女
よ」
って言われても、実感湧かないなあ……。
ともかくお皿を食卓に並べ、パパを起こしにいく。
いつもよりちょっと早いからちゃんと起きるかしら。
「パパ、朝だよ」
一応、ノックして声を掛けてから、パパとママの寝室に入っていく。
夜中の就寝中なんかに、夫婦の寝室にいきなり入っていくと、ちょっとしたハプニング
に遭遇するので、ノックは絶対なのね。ちっちゃかった時は、時々目をこすりながら「マ
マ、おしっこ!」とか言ってお邪魔していたらしい。
今はママは台所にいるので、遠慮なく入っていけるよ。
パパの身体を軽く揺すって起こしてあげるんだ。
「パパ、朝だよ。ご飯できてる」
ゆっくりと目を開けて答える。
「おう、美奈か。おはよう」
「おはよう。いい天気だよ」
いつものように、着替えを手伝う。
パパがパジャマを脱いでいる間に、下着とかYシャツとかを揃えてあげるんだ。
背広を着込んでネクタイを締めれば、ピシッと決まる。
アットホームパパから、戦うサラリーマンに変身だ。
それにしても男性サラリーマンって大変だよね。
どんなに暑くても、背広姿を維持しなくてはいけないなんて。
その点、女性は楽でいいよね。
制服着用義務のある職場でなければ、ほとんど自由に衣装を選べるんだから。
静香さんなんか、袖なしは無論のこと胸出しルックで悩殺ドレスなんか着ているとか…
…。
といっても毎日じゃないらしいけどね。
うん♪
ボクも、OLする時はやっぱりお気に入りのスーツかなんか着ておしゃれしたいよね。
←
●
⇒
11