美奈の日記 21

「へえ……。そんなことがあったんだ」 「それからわね。お母さんと相談して、家族にも性同一性障害であることを知らせようと いうことになったの。でもいきなりだと拒絶反応を起こすから、少しずつ気づかせるよう にしようとしたのよ。わざとシャツの胸元を開いて、ランジェリーが見えるようにしたり ね。当然、家族は気づいてお母さんにご注進するわけね。あなたのパパのことよ。でも、 お母さんはこう答えるわけよ」 『あら、男の子が女の子のランジェリーを着ちゃいけないという法律はないじゃない』 「ってね。言われてみれば確かにそうだけど、ってあなたのパパは納得させられるわけよ。 やがて、スカートを履くことを許されて、家にいる時は毎日スカート姿で過ごすようにな った」 「パパは気が気じゃなかったんじゃない? だんだん女の子らしくなっていく静香さんと 一緒に暮らしているわけだもね」 「女性度が一段上がるたびにどぎまぎしていたわよ」 「あはは、何となく想像できそうだよ。パパの目を丸くしている様子」 「結局、頭の先から足の先まで女の子の姿になったのよね」 「それで、外には出歩かなかったの?」 「そこまではまだ許されていなかったわ」 『外に出たいと思うだろうけど、今はまだ時期相応と思って遠慮して頂戴。性同一性障害 というものはまだ世間に認知されていません。ですから近所付き合いをしなければならな い家族にとっては、ここで暮らしていくには秘密も必要なのです。あなた自身はどう思わ れようとも気にならないと思っても、家族のために我慢して頂戴。もしどうしても女性の 姿で外を歩きたかったら、この家を出てアパート暮らしをするしかありませんね』 「へえ、それでアパート暮らしを選択しちゃったんでしょう?」 「そうよ。やっぱりね……。自分は女の子だと思っているから、女の子の衣服を着て外も 歩きたい。日常的に女性の姿のままで生活してみたいと思ったの。家族にも迷惑を掛けら れないから、家を出てアパート一人暮らしをはじめたのよ。やがて女性ホルモンに手を出 して、その最終的結果が、性転換手術までに至ったと言うわけ」 「そっか。いろいろとあったんだね。性転換手術して、お祖母ちゃんはなんて言った の?」 『やっぱりね。たぶんそうなるだろうとは思っていたよ。だから私はあなたを娘として承 認しましょう』 「って言ってくれたわ。さすがに理解あるお母さんだけのことはあるわ。一つを認めるな らば、すべてを認めましょう。という考えを持っているのよね」  何から何まで、ボクには新鮮な告白だった。  ボクも、この静香さんのように性転換手術を受けるんだ。  ただ違うことは、ボクの場合は元々女の子として社会に認知されていて、それを真のも のとするために性転換手術するということ。  だから性転換手術する前も後も、何ら生活には変化はないんだよね。  今はおちんちんを持っているこの身体が女の子の身体に変わるだけ。  そう……。  家族以外には知られることなくこっそりとそれは行われるんだ。  そのためにも、ボクが男の子であることは、よその人には誰にも内緒だよ。  学校のお友達になった恵美子ちゃんにも打ち明けられないボクの秘密なんだ。
     
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