美奈の日記 20
「ふうん……。パパに恋しちゃったんだ」
「そうよ。その後、恋する対象相手はお兄さんから、他の人に移っていったけど、なぜか
みんな男の人ばかりだった。小学校の男性の教諭やクラブ活動の男の先輩、かっこいいク
ラスメートの男の子。そのうちに自分は男じゃなくて、女じゃないかって思うようになっ
たの」
「性同一性障害者ということを自覚するようになったんだね」
「まあ、今風に言えばそういうことになるわね。それで、自分が女じゃないかって思うよ
うになってからは、着ている服にも不快感を抱くようになったの。それで家族の目を盗ん
で、こっそり女性の服を着るようになったわ。最初の頃は、お母さんのランジェリーを持
ち出して隠れて着ていたわ。上着の服の下に着るランジェリーなら外から見えないでしょ
う? ショーツとかスリップとか、毎日のように着ていた」
「お母さん、つまりボクのお祖母ちゃんにはばれなかったの? 自分のランジェリーが見
当たらなかったら不審に思って調べるんじゃない?」
「そうね。やっぱりばれちゃったわよ。ある日、わたしが隠し持っていたお母さんのラン
ジェリーを突きつけられて追及されちゃった。『この下着がどうしてあなたの部屋にある
の?』ってね。証拠を見せ付けられては、白状するしかなかったわね」
「それでお祖母ちゃんはどうしたの?」
「美奈ちゃんも知っていると思うけど、お母さんは良く気が付く理解のある女性よ。ちゃ
んとその理由を聞いてきたわ」
『あなたはこれを着たくて持ち出したの? それとも単に収集し眺めるために持ち出した
の?』
「って、聞いてくるのよ。もちろんわたしは、自分が着たくて持ち出して、毎日着ていま
したって、正直に答えたのよ」
「そうしたら?」
「お母さんはこう答えたわ」
『あなたが女の子みたいな性格をしているのは知っています。たぶんその性格から女性の
衣料を着たいと思うようになったのも理解できます。しかし泥棒みたいに、他人のものを
盗むようなことをするのは、許されていいものではありません。自分の気持ちを正直に打
ち明けて、女性の衣料が欲しいなら欲しいと、何故言わなかったのですか?』
「お祖母ちゃんがそんなことを言ったの?」
「そうよ。それで自分の気持ちを正直に話したのよ。自分は実は女の子の心を持っている
んだってね。そうしたら……」
『あなたの気持ちは良く判りました。正直に答えてくれてありがとう。ではこうしましょ
う。あなたのために女性用のランジェリーを買ってあげましょう。家の中にいる時は、そ
れを着けていることを許します。今後のことは一緒に考えましょう』
「そう言ってくれたのよ。感激したわ。ここまで理解のあるお母さんだとは思わなかった。
性同一性障害という言葉もお母さんから始めて聞かされたわ。わたしが、それなんだと気
が付いたのよ。それからはお母さんに、何でも打ち明けるようになったのよ」
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