美奈の日記 19
「やっぱりママと感触が違うね」
そう……。ママのも時々触らせてもらっているんだ。
普通、男の子だったら絶対に触らせてはもらえないと思うけど、ボクには触らせてくれ
るよ。
「それは仕方がないわね。全部本物というわけじゃないから」
とにかくママも静香さんも、ボクが本当の女の子になれるように、できることはすべて
してあげようと、精一杯に尽くしてくれるんだよね。
感謝しなくちゃね。
そしてボク自身も、正真正銘の女の子になれるように努力を続けるよ。
その夜、静香さんは泊まっていくことになった。
「それじゃあ静香さん、これ使ってください。わたしのネグリジェだけど」
「お、おい。おまえのを貸すのか?」
「あら、パパ。いけませんか?」
「しかし、こいつは……」
「パパ! いつまでもこだわってないで、静香さんを女性だと認めてあげてくださいな」
「そうだよ、パパ。パパがそんなだと、ボクも性転換した後が心配になるよ」
「い、いや。そうじゃなくて……。美奈ちゃんのことは大丈夫だよ」
「ほんとに?」
「ああ、自分の娘なんだからね」
「だったら、静香さんのことも認めてあげてね」
「ん……。ああ」
まあ、パパの気持ちも判らないでもないんだ。
生まれた時からずっと弟として一緒に暮らしていたんだものね。
ボクだって、パパがある日突然に女性に目覚めて性転換して現れて、
「今日からあなたのママよ。一緒に仲良く暮らしましょうね」
と言われても納得できないと思うよ。
「ねえ、ボクのベッドで一緒に寝ようよ」
静香さんとは、寝物語にいろいろとお話ししたいもんね。
ベッドサイズも一応二人で眠れる大きさもあるし。
「そうね、いいわよ」
「サンキュー!」
というわけで、静香さんと一緒にベッドの中にいる。
「ねえ、静香さん」
「なあに?」
「自分が女の子だと自覚するようになったのはいつ?」
「そうねえ……。やっぱり幼稚園の頃かしら。その頃ある人に恋心を抱いていたのよね。
初恋と言っていいわね」
「幼稚園で初恋したの?」
「そうよ。最初に好きになったのは、お兄さんね。つまりあなたのパパよ」
「パパを好きになったの?」
「そうよ。その頃は、性同一性障害なんて言葉すら知るわけもないから、どうしてお兄さ
んを好きになったのか判らなかったわ。わたしはおとなしくて、よく近所の子からいじめ
られていたの。それをお兄さんがいつも庇ってくれていたの。まあ、兄としては弟がいじ
められているのを黙ってみているわけにはいかないでしょうね。だからでしょうね。当時
としてのお兄さんは、自分を守ってくれるナイトのような素敵な男の子だったのよ。だか
ら恋をしたのね。どうして男の子の自分が、お兄さんに恋心を抱いたのかは不思議だった
けど、とにかく好きでたまらなくて、お兄さんの行くところには良く付いていったわ。お
兄さんとしては、単に遊び相手としてしか考えてはいなかっただろうけど」
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