美奈の日記 17
「病院が見つかったの?」
ママが質問した。
すると静香さんはにっこりと笑って答えた。
「あたりよ。ニューヨークの病院に腕利きのドクターがいて、あちらでは性転換手術では
ナンバー1と有名になっているわ」
「日本ではタイで手術を受ける人が多いみたいたけど……」
「日本人は、ある有名人がどこそこで手術を受けたと聞くと、お伊勢参りのごとくみんな
右へなれしてしちゃうものね。とあるラーメン店が流行りだと聞くと、行列作ってまでそ
の店に行ってみたりする性格だから」
「そうみたいですね。万博でも人気館には何時間待ちしても並んで入ろうとするけど、す
ぐ隣にあるいつでも入れる某国館は見向きもしない。そこにどんなにか素晴らしい展示品
があるかもしれないのにね。ここはいいよと聞くとみんな右ならへしちゃいますものね。
本当にいいものを自分で探そうという気概が足りないわね」
「まあ、タイは費用が安いってこともあるみたいだけどね。手術費用そのものは世界的に
もあまり変わりはないけど、手術の前後に掛かる入院の費用が安いのよ」
「ともかく……。ニューヨークなのね」
「そうよ。手術はたぶん一年後になると思うけど、予約を入れておいたわ。それまでにメ
ンタルヘルスケアチェックを受けるために、美奈ちゃんには数回渡米してもらうことにな
るわ」
「静香さん、ありがとうございます。渡米の際には一緒に同行していただけませんか?」
「もちろん、同行しますよ。美奈ちゃんにとっては一生を左右する大事な手術になるんで
すから、ドクターの診断に対する質問とかに間違いなく答えられるように通訳として行き
ます」
「感謝しますわ」
「なあに、可愛い美奈ちゃんのためですよ」
ボクの性転換手術に積極なママと静香さん。
それに引き換えパパはというと、少し控えめな態度なんだよね。
それはパパが、性転換手術には慎重だからだよ。
確かに今のボクは女の子になることを望んでいるけど、まだ思春期に差し掛かったばか
りで、今後どうなるか判らない。今後素敵な女性と出会って心ときめいて、男の子の心を
取り戻すかも知れない。その時に手術した後だったら手遅れになる。生涯を左右する大事
な性転換手術は、思春期を乗り越えて本物の女の子の心を保ち続けることができた時に行
う方がいいんじゃないか……って、考えているんだ。
まあ、パパの気持ちも判るけどね。
でもママにしてみれば、今の方が大事。
「男の子とばれてしまって、学校や近所の人々から冷たい視線を浴びる方が辛いじゃな
い」
という意見だよ。ボクもこっちの方が問題だよ。
ボクの気持ちは変わらない。
ボクは女の子なんだ。
だから性転換手術を受けるんだ。
ボクの気持ちはパパに伝えてあるから、あえて反対はしていないよ。
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