美奈の日記 14

「そうだ。せっかく来たんだから、僕の方の診断もしませんか? 今、次の診断までちょ っと空いているんですよ」  先生の診断と言えばジェンダー治療のことだよね。 「先生がそうおっしゃってくださるのなら……。いいわよね、美奈ちゃん」 「うん」  というわけで、先生のジェンダー治療の診察を受けることになった。 「こちらの方はよろしいんですか?」 「大丈夫です。空いていたから、手伝っていただけですから」 「そうでしたか」 「では、僕の診察室まで行きましょう」  椅子を立ち上がって、 「じゃあ、君。僕は、自分の診察の方に戻るから、後は外来担当の先生にまかせるよ」  と女性看護師に伝えていた。 「判りました」 「じゃあ、いつも通りにまず血液を採取するよ。いいよね」 「うん」  血液採取は、血液中のホルモン濃度とか電解質とかを調べるんだそうだ。  飲んでいる女性ホルモンが効率よく効いているかとか、肝臓に異常はないかとかが判る そうだよ。  血液採取が済めば、診断の開始だ。  上着を脱いで、上半身裸になって先生の触診を受ける。  医者とはいえ裸になって乳房を露にするのはやっぱり恥ずかしいよ……。  ごく普通な内科的な診察(打診や聴診器、口腔検査のこと)をしてから、胸の触診に掛 かった。  あん! そこくすぐったい……。  わたしの小さな胸を触診しながら、 「また、少し膨らんだね。会うたびに大きくなっているよ。まあ……成長期だから当然だ けど。一応サイズを測っておこうか」  というので答えてあげた。 「あ、それなら判ります。丁度今日、身体検査があったから。上から73・52・77で す」 「そうか、身体検査ね。その数字でいいか……。その73というのはトップサイズだよね。 アンダーは?」  とカルテに記入しながら尋ねた。 「66です」 「66……と。12歳ならこの程度かな……女性ホルモン量は増やす必要はないね。もう しばらく今のままの処方でいいだろう」 「増やすともっと大きくなる?」 「そうだね。ある程度はね。もっと大きくなりたいの?」 「そういうわけじゃないけど……」 「僕は今のままで十分だと思うよ。女性ホルモンの量を増やすとね、確かに胸は大きくな るけど弊害も出るよ」 「どんな弊害?」 「身長が伸びなくなるんだ。女性ホルモンは骨の成長点の新陳代謝を阻害する働きがある んだ。だからあまり投与し過ぎると身長が伸びなくなってしまうんだよ。美奈ちゃんはも う少し背が欲しいだろう?」 「うん、そうだね」  そうか……。  身長が伸びなくなるんだ。  胸が大きくても、背が低かったらいやだな。  そう言えば、女優でグラマーな人なんか意外と背が低いとかいう話を聞いたことがある。 「もっと胸が大きくなりたいだろうけど、今は身長を伸ばすことの方が大事だよ。胸の大 きさはホルモン次第で成人してからでももっと大きくなるけど、身長は思春期でもある成 長期を過ぎると伸びなくなるんだ。かしこい美奈ちゃんなら判るよね」 「うん。わかったよ」  そうこうするうちに画像診断装置部からの呼び出しがあった。 「それじゃあ、行きましょうか」  一緒に連れ立って、病院の一番北側にある放射線画像診断部へと向かった。  こういうのって緊張するよね。
     
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