美奈の日記 11

 一人に構ってはいられないので、成功しようと失敗しようと、次々と交代させていく。  順番待ちの列に並ぶボク。 「美奈ちゃんも、跳べなかったね」  先に跳んで、やはり同じように跳べなかった恵美子ちゃんが話しかける。 「うん。何か壁のように高く感じない?」 「そうそう。わたしもそう思った」 「最初から、あの高さは無理だよね」 「うん♪」  同じ跳べない者同士。  考えることは同じだよね。  しかし、ちゃんと跳べる子もいるわけで……。 「はい。初美さん、合格!」  見事きれいにクリアして、着地のポーズを決めちゃったりもする。  パチパチパチと拍手が起こる。 「初美さん、陸上部だものね。跳べて当然じゃない」  という声も聞こえるが、やはり跳べる子は羨ましい。 「あぶない! よけて!!」  背後から叫び声が聞こえた。  しかし……。  ボクは、何が起こったのかも判らずに、そのまま気を失ったの。 「み、美奈……ちゃん」  どこか遠いところでボクの名前を呼ぶ声がする。  ここはどこだろう。  なぜここにいるのだろう。 「美奈ちゃん、しっかりして!」  さらに声は強くはっきりとしてくる。  そうだ……。  この声は、恵美子ちゃんの声。 「美奈ちゃん。聞こえる」  やがて意識が戻ってくる。  目を開くと、目の前に恵美子ちゃんの顔があった。 「あ! 気がついた!」 「あれ、恵美子ちゃん……」  しだいに意識がはっきりしてくる。 「ここは、どこ? 体育の授業中じゃなかったけ……」 「サッカーやってた男の子の蹴ったボールが美奈ちゃんの頭に当たったのよ。そして、美 奈ちゃん、倒れちゃったんだ」 「そっか……。あの時、聞こえた叫び声は……」  思い出した。  危ない! という声が掛かって、振り向こうとした瞬間に気が遠くなってしまったんだ。 「先生! 美奈ちゃんが、気がつきました」  後ろを振り向いて、机に向かって書きものをしていた美津子先生に呼びかける恵美子ち ゃん。 「あら、気がついたの?」  立ち上がって、こちらに近づいてくる。  そして、先生はボクの腕を取って脈を測りながら言った。 「一時はどうなるかと思ったけど……。軽い脳震盪だったのよ。男性教師の方にこちらに 運んでもらって、しばらく安静にさせることにしたのよ」 「脳震盪ですか?」 「ええ、脈拍とか血圧とかは正常だから、大丈夫だとは思うけど、念のために精密検査を した方がいいと思うわ」 「そうでしたか……」 「あなたのお母さんに連絡して迎えに来て下さることになったわ。一応大事をとって、こ の後の授業は受けないで早退するように手配しておいたから」 「早退……ですか?」 「ええ。念には念を入れたほうがいいでしょう。病院によって精密検査を受けるように伝 えてありますからね。授業中の事故なので、学校が入っている保険が適用されるから、費 用の心配はないの」 「精密検査か……」
     
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