美奈の日記 6
学校での楽しいひとときを終えて、家に帰る時間となった。
もちろん今朝知り合ったばかりの、ご近所さんである恵美子ちゃんと一緒。
家に帰るにはまだ早すぎるような気がするけど、これといってどこ行く当てもないもの
ね。それに、ママも心配しているだろうから、まっすぐ帰ることにしたんだ。
「楽しかったね」
「そうだね」
やがてボクの家が見えてきたよ。
「ねえ、上がってく?」
せっかくお友達になったのに、このまま別れちゃうのが、何だか寂しく感じたんだ。
「うん……」
恵美子ちゃんも、そう感じていたのかな。すぐにOKしてくれた。
玄関の扉を鍵で開けて中へ入る。
ママがいるはずだけど、最近は物騒なので家に居ても錠を掛けたままにしているんだ。
各自持っている鍵で開けて入ることにしている。
「ただいま!」
玄関に入って、たぶん台所にいるはずのママに聞こえるように言う。
すると、台所から顔を出して、
「美奈ちゃん、お帰りなさい。あら……」
恵美子ちゃんの姿を見て驚いた風な感じの声を出した。
「おばさま、お邪魔します」
と、ぺこりと頭を下げる恵美子ちゃん。
「あらら。早速お友達になったのね」
「うん、クラスも一緒になったよ」
「それは良かったわね。恵美子ちゃん、これからもよろしくね」
と挨拶するママだった。記憶力がいいので朝に名乗ったのをちゃんと覚えているんだ。
「はい。こちらこそ、お願いします」
「はい。よろしくね」
にこにこと満面の笑顔のママだった。
女の子のお友達ができたことを本当に喜んでいるみたいだ。
本当は男の子のボクに、より女の子らしくなってもらうには、やはり本物の女の子がお
友達としていたほうが一番と考えているみたいなんだ。
「もうすぐお昼だけど。恵美子ちゃん、一緒にお食事しない?」
学校のほうは、授業がなくて二時間くらいで終わっちゃったから、まだお昼前だったの
ね。
「いえ、遠慮させていただきますわ。うちの方でも用意しています。美奈ちゃんのお部屋
を見せていただいたら帰ります」
「そうそう。はじめての急な訪問なんだから、そこまでは早すぎるよ」
「そう……。残念ね」
本当に落胆している感情を見せているママだった。
「でも、今度来た時には、いつでも遠慮なく食べていってね」
「はい。ありがとうございます。そうさせていただきます」
というわけで、挨拶を終えてボクの部屋へと向かった。
「へえ。可愛いお部屋ね」
入るなり感想を述べる恵美子ちゃん。
そりゃそうだろうね。
少しでも女の子らしくって、ママがいろいろと取り揃えてくれていたんだ。
ピンク系の壁紙や淡い緑色のカーテン、部屋の中はいかにも女の子って感じの色調で統
一されていた。
ドレッサー(鏡の付いた化粧台のこと)や全身を映せる姿見とか女の子の必需品もちゃ
んとあるよ。
洋服ダンスの中には、いわゆるゴスロリ(ゴシックロリータ)フリル一杯のドレスとか
が並んでいる。ほとんどパパの趣味で、何かにつけて買ってきてくれるんだ。下側にある
引き出しには、可愛い系のランジェリーが一杯あるよ。こちらはママの趣味で揃えてある。
もちろんお人形とかぬいぐるみとか女の子アイテムもたくさん並んでるよ。
男の子を連想させるものは何一つないんだ。
それから他愛のない会話をして、お昼だからと恵美子ちゃんは帰っていった。
明日はボクが恵美子ちゃんの家に遊びに行く約束したよ。
「恵美子ちゃんて、いい娘みたいね」
玄関先で恵美子ちゃんを一緒に見送りながらママが言った。
「このままずっと仲良しでいられたらいいね」
「うん……」
その夜。
ボクにとって嫌な時間がやってくる。
お風呂である。
本当は女の子ではなくて、男の子であることを自覚させられる。
裸になれば、見たくないものが足の間についているのがどうしても目に付いちゃうじゃ
ない。
女の子には決してあるはずのないものだよね。
だからお風呂は好きにはなれない。
できれば入りたくないと思ったりもするけど、女の子は清潔が一番。
できるだけ見ないようにしてはいるけど、身体を洗うときはどうしても見なければいけ
ない。それだけじゃなく、それを触らなければ洗えないよ。
そう……おちんちん。
おちんちんもきれいに洗わなければいけないよね。
皮を被っているから、それを手で剥いて中まできれいに洗うんだ。
ママがいうには、そこにたまる垢は「恥垢」といって、体臭としては一番臭いんだそう
だよ。
女の子がそんな匂いをぷんぷん発散させていたら興ざめだし、男の子だってばれちゃう
よ。
だからとても丁寧に洗ってやるんだ。
しかしその部分は皮膚じゃなくて粘膜だから、丁寧に洗わないと傷がついちゃう。ソフ
トにかつ垢がきれいに落ちるように時間をかけて洗うんだ。
お風呂から上がったら、さっそく就寝前のお肌のお手入れ。
ボクはホルモン剤を飲んでいるせいか、どうしてもホルモンバランスが崩れて、放って
おくと肌が荒れる原因になるんだ。若いのに顔にしわなんて、いやだよ。
弱酸性のアストリンゼンで肌を引き締め、皮膚からの水分損失を防ぐ乳液をしっかりと
塗っておくんだ。
ほんとに女の子って大変だよね。
お肌のお手入れが終わったら、ネグリジェに着替えておやすみなさいだ。
あ……、そういえば新学期には恒例の身体検査があるんだった。
下着は見られてもいいように、可愛い清潔なものはいていかなくちゃ。
え?
男の子だってばれないかって?
まあ、なんとかなると思うよ。
これまでだって身体検査を受けて、うまくばれないできたもの。
というわけで……。
明日はいいことがありますように……♪
おやすみなさい。
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