美奈の日記 5
先生の手元には、生徒達の小学校での成績やクラブ活動、委員活動とかの詳細を記
した帳簿とかがあるのだろう。それを参考にしながら、各委員をお願いしてまわって
いるってところかしら。
そしてクラス委員全部がうまっちゃったのね。
なんか……。
あのやさしい瞳でお願いされちゃうと、どうしても断りきれない感じで、つい承諾
しちゃうみたいだった。
ボクは委員には推挙されなかった。
ほっと胸をなで下ろしながらも、ちょっぴり残念な気分になるのはどうしてかな…
…?
それから全員の顔が良く見られるように、机の位置を移動する。教室の中央を開け
て内側に向けるようにして、箱型にするのだ。そして、親睦を深めるためのパーテ
ィーゲームがはじまった。
名前でビンゴ!ゲームというものだった。
各自にマス目が印刷されたビンゴカードと名前カードが渡される。各自はまず名前
カードに自分の名前を書いて教壇の上に用意された抽選箱に入れ、それからクラス
メートから名前を聞いて回って、ビンゴカードのマス目に書いていく。この時自分の
名前をマス目の中央に書いておく。全員がマス目を埋め終わったらゲーム開始だ。
クラスメート全員の名前が書かれた名前カードが入った抽選箱から、一枚ずつカー
ドを引いて、各自がビンゴカードに書いた名前をチェックしていく。その時名前を呼
ばれた人は手を挙げる。それを繰り返して、ビンゴカードのマス目の縦横斜めが揃っ
たら、ビンゴ! というわけ。
このゲームの売りは、まだ知らない人にも名前を聞くために、気軽に声を掛けられ
て、ついでに名前と顔を覚えることができること。名前を呼ばれて自己紹介も兼ねら
れること。ただ自己紹介じゃなくて、ゲームの勝利にも関わっているから、意外に覚
えてもらえることである。
ただビンゴカードの作成に時間がかかるのが難点であるが、そこは進行役の先生が、
「はいはーい! 一目ぼれしちゃった人に声を掛けられるチャンスだよ。恥ずかしが
りやの人も照れ屋の人も遠慮なく名前を聞いていこうね。あ、そこの君。手を握っち
ゃだめよ」
とか言いながら煽ってくる。
そしてゲーム開始。
ビンゴゲームをやったことのある人なら、判ると思うけど意外と楽しい。しかもこ
れがただの数字じゃなくて、クラスメートの名前だからなおさらである。
先生が壇上の抽選箱から名前カードを引いていき、各自はビンゴカードをチェック
していく。
「はーい。神林美奈さん! 当たりだよ」
いきなり名前を呼ばれる。
一瞬どきりとするよね。
立ち上がって一礼する。
「美奈ちゃん! 好きだあ! リーチ!」
誰かがどさくさに紛れて叫んだ。
ええ?
教室中にどっと笑いが巻き起こる。
もちろん、ビンゴカードにリーチが掛かったことへの宣言だったのだが……。
ゲームを開始して興が乗ってくると、そんな掛け声が飛び交って、さらに盛り上がっ
ていく。
「おおっと! 衣笠信吾君、リーチですよ。他にはいませんか! いなければ次行き
ます」
信吾君のことが契機となって、女の子の名前でリーチが掛かった男の子の場合、
「○○ちゃん、好きだ!」
というのが、リーチ宣言になってしまった。
宣言される方の女の子は恥さらしだが、ゲームはさらにさらに盛り上がっていく。
女の子の方はというと……。
まさか、
「○○君好きよ!」
とは言い出しにくいので、静かにリーチを表明していた。
男の子と女の子の性格の差だよね。
「次は、深川恵美子さん!」
と先生が名前を挙げた瞬間だった。
「ビンゴ! 恵美子ちゃん、大好きだあああああ!」
ビンゴカードを高々と抱え上げながら大声で叫ぶ。
先ほどの信吾君だった。
「おおっと。ビンゴか、ビンゴが出た!」
恵美子ちゃんを見ると……。
にこにこと笑っていた。
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