美奈の日記 3

 道行く人々の中に、ま新しい同じ制服を着た女子生徒および男子生徒が増えてくる。ま もなく 栄進中学校が見えてきた。 「なんかどきどきするなあ」  これからはじまる学校生活。  ♪ともだち百人できるかな〜♪  てな感じかな……。 「そうね、でも美奈がいるから気が楽だわ。やっぱりお友達がいると便利」  そうかも知れないね。  何かとはじめてのことには、誰かそばにいると安心するよ。  たくさんの生徒達と共に、校門をくぐるボク達二人。  校内放送が新入生への案内を繰り返していた。 『新入生の方は、校庭の掲示板に張り出されたクラス分け発表を確認してから、それぞれ のクラスへ入ってください』 「クラス分けか。ねえ、同じクラスだといいわね」 「そうね」  家が近いし、これで同じクラスだったら何かと都合がいいのは確かだよね。  宿題とかが出たら、教えてもらいにいけるじゃん♪  新入生達が校庭へと向かっている。  ボク達もその人並みに続いて校庭へと向かう。  人垣ができていた。  人々の視線は臨時に誂えたのだろう編成表の貼られた掲示板。  ボク達は掲示板に向かって、自分の受験番号と名前を確認した。 「あったわ。一年B組よ」  先に自分の名前を発見したのは恵美子ちゃんのほうだった。思わず恵美子ちゃんの指差 す方向に目をやる。  が早いか、 「やったあ! 美奈も一緒よ」  といって恵美子ちゃんがいきなり抱きついてきた。 「え?」 「ほら、あそこ!」  そこには、同じクラスの列にボクの名前があった。 「あたし達、本当についてるわね」 「そうだね」 「行きましょ。一年B組へ」 「うん」  教室に入ると、黒板に 「席は、各自好きなところに座って下さい」  と書いてあった。  へえ……。気が利いてるじゃん。  こういう時は、席次順つまり名前のあいうえお順に、事前に決められているものだけど ね。  そうなると席は早い者勝ちだ。  もちろん校庭側の窓際の席が一番人気だよね。  当然として、先に入ってきた子がすでに占拠していた。 「あたし、ここにするね」  空いた席に座る恵美子ちゃん。  って……、そこは教壇のすぐ前の席……。  どうして?  普通、そこはみんなが嫌がるところじゃないの? 「へへえ……。なんでここ? って思ったでしょ?」 「う、うん……」  図星!  恵美子ちゃんって感が鋭いんじゃない? 「意外とね、教壇の先生の位置からは死角になりやすいのよね。『ここから誰かに読んで 貰いましょう』とかいって、授業中に先生に当てられる確率が低いの知ってる?」 「そうなの?」  へえ……。そうなんだ。  はじめて聞いたよ。  そういうこともあるんだ。 「灯台下暮らしってところかな」  そういわれるとそんな気がしてきたよ。 「なーんてね。ほんとうは目が悪くって前の席じゃないと黒板の文字が見えないんだ。で も今言ったことはほんとうだよ」  なんだ。  それが本音だったんだ。 「眼鏡しないの?」 「やっぱりね……。眼鏡してるとキツイ感じがするじゃない。インテリぶってるとかさ」  まあ、女の子が眼鏡したがらないのは判るけど……。  反面、眼鏡っ娘とかいって、一部のゲームマニアとかには人気があるそうだよ。  って関係ないか……。  キーン♪ コーン♪ カーン♪ コーン♪  予鈴が鳴り響いた。  授業の開始を知らせる本鈴の前に鳴らされる鐘だよ。  小学校じゃ、予鈴なんてなかったけどね。  でもね。  今日は、授業はないんだ。  はじめて顔を会わせる生徒や先生との交流会みたいなものがあるらしいんだ。  ボク達のクラス担任は、編成表に書いてあったけど、本条美津子って女の先生らしい。  さて、どんな先生が来るのかな。  わくわくどきどきの瞬間だよね。
     
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