響子そして(覚醒剤に翻弄される少年の物語)(R15+指定)
この物語には、覚醒剤・暴力団・売春などの虐待シーンが登場します

(十一)輪廻転生  薬漬け……売春婦……。  わたしは恐怖におののいて、凍り付いた。  覚醒剤に身も心もぼろぼろになってしまった母親の姿が思い浮かんだからだ。  虚ろな瞳を向け、自分の息子と愛人の区別もできなくなって、迫ってきた母親。  あのようにはなりたくない。  あの男は、母親を売春婦として調教していたのだ。いずれ資産を食い潰したあげく には、売春婦として働かせるつもりだったに違いない。吸血鬼のように血の一滴も残 さずに吸い上げ死に至らしめる。  わたしも、このままでは薬漬けにされ、売春婦として生涯を閉じることになるだろ う。  がちゃりと扉が開いて男が入ってくる。手には注射器を持っている。  覚醒剤だ!  逃げようとした。しかし、身体に力が入らない。 「さあ、また射ってあげよう。気持ちが良くなるようにね」  い、いやだ。やめて!  声にならない。  わたしの腕に注射針を突刺される。  しだいに意識が朦朧としてくる。  男が上に重なってきた。  意識が遠くなっていく。  あれから何時間。いや何日たったのだろう。  意識が少しずつ回復するにつれて、鼻につく異臭が漂っているのに気がついた。し かもどこかで嗅いだことのある……。そうだ、これは精液の匂いだ。  ふとわたしの腕に幾つもの注射痕があるのに気づいた。ついさっき注射したばかり のようなものもあれば、かなり日数がたってあざになっているものもあった。  どうやら覚醒剤を注射され続けているようだった。覚醒剤が切れかける度に次々と。  そしてこの精液の匂い。  頭を動かしてベッドサイドを眺めると、ティッシュが山のようになったごみ箱があ り、そこからこの異臭が漂っている。精液の匂いに不感症にさせるか、或は逆の反応 をするようにしむけているのか、わざとそのまま放置しているのであろう。  覚醒剤を注射され、陶酔状態にある時に、犯されているのだ。間違いない。  かつて、わたしの母親がされたような行為が、今まさに自分自身に対して行われて いると確信した。  何の因果か、母娘で同じ覚醒剤にはまってしまうなんて。そういえば明人の母親も そうだった。  わたしの身の回りでは覚醒剤を核とする輪廻転生が巡っているのかも知れない。巡 り巡って、今わたしがその渦の中にいる。  まだ意識が正常なうちに逃げ出さなくては……。  しかし、生きて逃げる事は不可能だろう。どうせまた連れ戻されるに決まっている。  この輪廻から確実に解脱するには、命を投げ出すしかない。  明人は死んでしまった。今のわたしに生きていく希望は何もない。覚醒剤の虜とな り溺れていくだけの人生があるだけだ。  隣の部屋からは何の音もしない。誰もいないようだ。  それまでは逃げ出さないように縛られていたが、今は縛られていない。  すっかり覚醒剤に冒されていて、たとえ逃げ出しても、禁断症状の苦しみからまた 舞い戻ってくる。そういう判断なのだ。  わたしは、覚醒剤の影響でふらふらになった身体を引きずるように、窓辺に擦り寄 った。今気がついたが、わたしは全裸だった。犯す度に、いちいち脱がしたり着せた りするのが面倒だから、脱がしたままにしてシーツを掛けるだけにしていたのだ。  この際どうでもいい。どうせ死ぬんだから。  そして窓を開けて身を乗り出した。  明人待っててね。今いくから……。  ふわりと身体が浮く感じがしてやがて意識がなくなった。
     
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