特務捜査官レディー (響子そして/サイドストーリー)
(四十九)売春斡旋勧誘員  それから数日後だった。 「例の組織の売春婦斡旋勧誘員、つまりスカウトだな。その一人が判ったぞ」  と敬が情報を仕入れてきた。 「ほんとう?」 「ああ……。しかし、本当にやるつもりか?」 「もちろんよ」 「そうか……」  情報は与えてくれたが、あまり乗り気を見せない敬。  当然でしょうね。  自分の恋人を危険な囮捜査に駆り出すことになるのだから。  ただ、組織を壊滅させたいという情熱には逆らえないといったところでしょう。  放っておけばより多くの女性が苦しむことになる。  彼の正義感が、私情を振り払ってまで行動に出ているのである。 「ごめんね……」 「いいさ。それでな……」  そのスカウトの手口は、若い女性に言葉巧みに近づき、 『アイドルになってみませんか?』  誘いに乗ってきた女性をマンションに連れ込む。  写真撮りするなどして一応それなりにアイドルにさせるような素振りを見せながら、 『緊張しているね、この薬を飲むと落ち着くよ』  と、覚醒剤を使う。  やがて覚醒剤の虜となってしまうその女性を、売春婦へと調教していくそうだ。  覚醒剤の魔力によって抵抗する意識を奪われ、スカウトの言いなりになっていく。  今時の若い女性のアイドル願望心理を突いたあくどいやり方だ。 「いつもながら、ひどい話ね」 「まあな……。女性を金儲けのための商品としか見ていないからな」 「今回の任務は、売春婦斡旋業として暗躍する組織員に近づいて、奴らの地下組織を 明らかにすることだ。そこには覚醒剤を射たれ、その魔力によって売春婦に仕立て上 げられようとしている女性達が捉えられている。その女性達を救出する。斉藤真樹」  わたしの名前が呼ばれる。 「はい!」 「心苦しいところではあるが、囮としてその組織員に近づき、地下組織への潜入をは かる役目をやってもらいたい」 「判りました!」 「その組織員に面識のある人物に依頼して、君がアイドルになりたいと紹介させる手 筈になっている。組織員の本当の目的は売春婦斡旋だ。当然のごとくして、君は地下 組織へ送られる事になるだろう。うまく成りすまし潜入を果たしてもらいたい」  課長はたんたんと説明しているが、部下に危険な任務を与えねばならない苦渋の選 択を強いられて、顔にこそ出さないが心底苦悩しているに違いない。 「決行の日は明後日である。くれぐれも慎重に行動してくれたまえ」 「はい!」  自分から志願したこととはいえ、いざ決行となるとやはり緊張する。  早速、先生のところに連絡しなくちゃ……。
     
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