純愛・郁よ

(二十二)白状すると  しのごの言いながらも、郁はやり遂げました。  そして退院し、わたしのところでしばらく静養したあと、武司さんの元へ意気揚々 と帰っていきました。  ほんとうは、戸籍変更の手続きを進めるために、居残ってもらいたかったのですが、 あなたのそばにいないと眠れないと言っていましたね。  まあ、性転換が済んで、一安心と思っていたら、今度は結核で自宅療養となりまし たね。  結核は、ホルモン治療などで身体の抵抗力が多少弱っていたことと、都会の雑踏と いう環境から感染したらしいです。あなたの責任ではありません。  毎日、あなたのところに電話して、楽しそうに話しているのを聞いて、幸せに暮ら しているというのは間違いないようでした。  そしてあなたが帰ってくる週末をほんとに心待ちにしていました。あの娘がこんな にも早く回復したのは、あなたのおかげです。精神的安定は回復を早めるのだそうで す。  せっかく戻ってきたのですから、中断しがちだった戸籍変更の手続きを再開しまし た。女性として暮らしてきたことを証明する幼稚園から高校生までの在籍証明書と写 真が映っている卒業アルバムなどを用意し、身体的特徴を示す診断書や証明書を提出 しました。  こうしてすべての手続きが終了して、結審を待つだけとなりました。  そんな矢先に、突然郁がいなくなってしまったのです。  私達に、知らせずにあなたの下にもどっていました。  最初は、あなたが東京へ連れていきました。  今回は、一体何の理由があったのでしょう。  家庭裁判所での審理が結審し、郁はわたし達の長女として戸籍に再登録され、晴れ て女性として生まれ変わることになりました。  早速郁に電話してしてあげて、裁判所の決定通知書のコピーを送ってやりました。  電話口でその喜びようが伝わってきました。  それからしばらくして、結婚の承諾を受けるためにあなたと共に、戻って参りまし た。  さて、帰ってきた郁ですが、どうも様子がおかしい。その日にすぐに聞き出そうと 思いましたが、この後の武司さんの実家訪問がありますから、その後にすることにし ました。これまでの話しから到底承諾を得られずに戻ってくると思っていましたから。  今日の夕食後の片付けが終わった後、わたしは郁を詰問しました。  わたしは郁の母親です。郁は隠し事をしているとピンときました。郁の乳房が授乳 できる状態にあることは、子供を産んだ女性ならすぐに判ります。その理由を問い詰 めたのです。 「おまえの乳房は一体どうしてお乳が出せるようになったの」  ってね。  そして白状したのです。  子供を拾って、警察にも知らせずに育てていることを。
     
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