妻に変身した男の話(8)

 問題は、夫と妻、嫁と姑という関係が存在していて、扶養義務があることであった。  すでに夫とは別居中ということを公言し、会社やご近所の人々には認識されている。  この状態で、離婚届を出したら、 「夫は行方不明なんだろ? 署名や印鑑の押印などできないじゃないか。おまえが勝手に 出したんだろう」  と言われるに違いないし、反論もできない。  今更離婚届は出せない手遅れ状態。  あの母親から逃れるには?  嫁と姑という関係を絶つしかないだろう。  となれば、何らかの方法で夫である自分自身をこの世から消し去るしかなかった。  もちろん法律的にである。  夫の失踪宣告を家庭裁判所に提出するという手もあるが、失踪してから7年経っていな ければ受理されない。  離婚を前提とした手続きにしても、二年以上の別居が必要だ。  その間、あの母親との関係もしばらくは続く。  やはり手っ取り早く片付けるしかないだろう。  ここは死んでもらうに限る。  インターネットには闇サイトというものがある。  覚醒剤剤取引や銃器密売、売春斡旋などの、表の世界では扱えない裏取引を行うサイト である。  殺人を請け負うサイトがあっても不思議ではないだろう。  闇サイトに接続するには、自宅の自分のパソコンからでは危険すぎる。  ウィルスやスパイウェアを送り込まれたり、IPアドレスから自分の住所や素性が特定 されないとも限らない。  用心のために、インターネットカフェを利用してネットにアクセスして、闇サイトを探 した。  相手もこの道のプロである。  表示されたホームページはごくありふれた普通のサイトのように見える。  闇サイトであることを容易に悟られないように、巧妙に隠蔽して判りづらいものとなっ ているのだ。  文面を読み解し、隠されたリンクを辿って、真の闇サイトへとアクセスする。  その内容は、至極簡単なものだった。
     
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