妻に変身した男の話(6)
やがて新人歓迎会も盛況に終了した。
少なからずも親睦を深めた良い機会となったようだ。
翌日。
出社すると、思ったとおり二日酔いに苦しむ同僚達がいた。
隣の席の真弓である。
真っ青な顔をして今にも吐き出しそうである。
「美智子は平気なの?」
「ええ、あまり飲んでいないから」
いかにもげんなりとしている真弓。
それに引き換えても、営業方の女性達は、平気な表情をしている。
契約を結ぶために酒の席を設けることは営業として良くあることであるから、酒が飲め
なくては仕事にならないし、先に酔っ払ってしまわないように、日頃から酒には強くなく
てはならない。
「社長は参加しなかったわね」
「ま、遠慮しているんでしょ」
「飲めるのかしら」
「飲めるなんてもんじゃないわよ。うわばみっていう噂があるわよ」
「へえ、そうなんだ」
「さてと……。いつまでもこうしてちゃだめね」
とばかりに、自らを元気づける真弓。
社長が出社してきていた。
醜態をさらけ出しているわけにもいない。
仕事! 仕事!
である。
美智子も営業方の方から回されてきた伝票を帳簿に付け始めた。
そうこうするうちに、時計の針が5時を指し示して終業時間となる。
「美智子、駅前に新しい喫茶店ができたのよ。一緒にのぞいてみない?」
真弓とは結構馬が合うらしく、なにかと美智子を誘うようになっていた。
「いいわよ」
せっかく向こうから誘ってくれるのである。断る理由はなかった。
ほぼ同年齢で女性同士の友人を作ることは大切である。
確たる女性としての生活基盤作りとしての付き合いである。
女性としての生活は、見るもの聞くものすべてが新鮮であった。
男性として生きてきたことが馬鹿らしくなってきていた。
今更にして、どうして女性として生まれてこなかったのかと残念でならない。
まあ、過ぎてしまったことをとやかく言っても仕方がない、これからは新たらしい人生
をエンジョイすればいいのだから。
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