妻に変身した男の話(11)
やがて決行の日がやってくる。
美智子は成田からアメリカへと飛び立ち、日本では極秘裏に身代わり殺人が行われる。
性転換手術、豊胸手術、美顔形成術、それなりの金を積んだだけあって、どれも完璧な
ほどの出来栄えであった。
渡辺美智子として完成した身体をもって、日本に帰ってきた。
そしてすぐに、夫の訃報を聞かされることになったのだ。
「たいへんだよ。あんたの旦那が交通事故で亡くなったらしいよ」
連絡を受けていたのか、アパートの住人の中年女性が青ざめて言った。
「夫が?」
「どうせ別居していた仲だから、これっぽっちも悲しくないだろうけど。一応、実家に挨
拶しに行った方がいいよ」
「そうですね……」
例の人物は、どうやらうまくやってくれたようである。
かつての自分との最期の別れをするのもいいだろう。
美智子は喪服に着替えると、ハイヤーを呼んで夫の自宅へと向かった。
すでに一通りの葬式を終えてひっそりと静まりかえっている夫の自宅。
「あんたが殺したのよ!」
美智子の顔を見るなり、いきなり飛び掛ってくる母親。
もはや妻と夫という関係はなくなり、嫁と姑というのも解消されていた。
母親としては、息子が死んだことよりも、金づるとしての関係がなくなった方に腹を立
てているに違いない。
まあ、確かに夫を殺したのは自分であることに違いはない。
しかし、それを証明する手段はないし、事故当日はアメリカにいたのである。
家族が母親を押さえている間に焼香を済ませて、香典を渡して夫の自宅を退散した。
百万円。
それが香典として入れた額ではあるが、最期に渡す手切れ金の意味合いがある。
外に待たせておいたハイヤーに乗り込んで帰宅の途についた。
すべてが順調に進んでいた。
後は成功報酬の一千万円を支払うだけである。
相手からの連絡を待つ日々が続くが、一向に音沙汰なしであった。
ある日のこと。
会社から帰ると、見知らぬ男が部屋の前に立っていた。
「よお!」
気楽に声を掛けてくる男だが、会ったこともない人物だった。
「あなたは、誰ですか?」
訪ねると、
「一千万円だよ」
いやしく微笑みながら答えた。
喋り方や口調は、まぎれもなく例の男である。
「直接、受け取りにきたの?」
「なあに、依頼をした女がどんな奴だろうかと思っただけだ」
立ち話をしている場合ではなかった。
こんなところをアパートの住人、それも中年の女性に見つかったら。
「とにかく中へ入ってよ」
「それはどうも、助かるよ」
男を部屋の中へ招きいれる。
「夫の運転免許証ね」
「言ったはずだよ。あんたの素性も判るってな。そして、あんたは言ったよ。『その時は、
運がなかったとあきらめるわ』とね」
「確かに言ったわ」
「では、それを実行させてもらおうか」
というと、男はいきなり襲い掛かってきた。
「一千万円は、あんたの身体で支払ってもらうことにするよ」
力の差は歴然だった。
みるまに素っ裸にされて、男が覆い被さってきた。
男の張り裂けんばかりになっているものが、自分の股間にあてがわれる。
性転換手術をしたばかりの膣を押し広げて、それは侵入してきた。
激しい痛みが股間を襲う。
男は、豊かな乳房を弄びながら、腰を前後に激しく打ちつけてくる。
やがて痙攣のような動きをしたかと思うと、そのすべてを美智子の中に放出して果てた。
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