美奈の生活 for adlut episode-1

【説得】  美奈は真剣に聞き耳を立てていた。  自分自身の性欲処理のために、夫婦の夜の営みを継続させるために、加奈子の身体に美 奈の脳を移植した。  などと本当の事を言えるはずもなかった。  ここは用意していた答えを伝えることにする。 「……というわけで、加奈子の意思のままに美奈の身体に生殖器を移植したとしても、一 生涯免疫抑制剤を投与し続けなければいけないんだ。しかもいつか免疫不全となってせっ かく移植した臓器を、また手術して取り出さなければならない可能性もある。それじゃあ、 何のために臓器移植したのか意味をなさなくなってしまう。このことは美奈も理解できる だろう?」 「うん……」 「しかし、加奈子の身体に美奈の脳を移植すれば、免疫反応を起こすことなく、完全な移 植が成功するんだ」 「でも、ボクの身体はどうなったの?」  当然の質問であろう。  脳を取り出せば、身体が浮いてしまう。 「どっちの手術にしても、莫大な費用がかかるのは判るだろう?」 「でしょうね」 「性転換手術なら、肝臓とか腎臓とかのママの他の臓器を移植するということで、病院側 と交渉がまとめることができる。そして、脳移植なら美奈の身体を提供するということに なる」 「ということは、ボクの時みたいに、誰かがボクの身体に脳移植を行って、ボクに成り代 わるかも知れないということじゃない。街を歩いていて、誰かが脳移植を行ったボク自身 に出会ったらどうすればいいの?」 「あり得ないとは言えないが、致し方ないことだろう。現実問題としてどちらか一方だけ しか生き残る道はなかったんだ。加奈子の身体を取るか、美奈の身体を取るかだ」 「そして、パパはママの身体を選んだんだね。でもそれは代償として、パパの奥さんにな るということだった。中学生から大人の世界にいきなり放り込まれてしまったわ」  昨夜のことを言っていた。 「美奈も悪いんだぞ。裸になっている妻の身体を見たら、男だったら欲情するに決まって いるんだぞ。なにせ加奈子のプロポーションは魅力的だから」  男の生理をまんざら知らないでもない加奈子であった。 「わかっているよ。でも、あれは酷すぎるよ」 「すまないことをした事をしたと思っている。しかし、現実を思い知らせるには、夫婦と しての営みを体験させた方が良いと思ったのだ。それで自分自身が正真正銘の加奈子であ ることに実感させられたはずじゃないのか?」 「そうだけど……ショックだったわ」  しばらく沈黙してしまう二人だった。
     
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