美奈の生活 for adlut episode-1

「美奈ちゃんは、加奈子さんの身体を得ることによって、上から下まで、外から中まです べてに渡って100%本物の女性になれるのよ。臓器移植をして女性になるとはいっても、 所詮は臓器だけの性転換じゃない。身体全体は男のままだから、セックスチェックを受け れば男であることが判ってしまうわ。だからスポーツ選手にはなれないわね。でも脳移植 なら、完全な女性つまり加奈子さんそのものに生まれ変われるのよ。それに何より、あな たにとっては素晴らしいことだけど……。あなたの性欲を満たしてくれる女性である、加 奈子さんが生き返るのよ。夢精して朝の寝床を汚すこともなくなるわ」 「そ、それは……」 「どう? 素晴らしいことじゃない。本当の女性になれる美奈ちゃんと、加奈子さんを取 り戻せるあなた自身。これ以上のことはないわよねえ」  俊介の心は、静香の言葉に揺り動かされていた。  もはや加奈子の心は死んでしまって、二度とは戻ってこない。  そして美奈は性同一性障害者の烙印から解放されて、本物の女性になれる。加奈子とい う身体をもらって、わたしの妻になるということになるのだが……。 「もう一度言うわ。美奈ちゃんに加奈子さんの臓器を移植し、近親相姦の世界に入り浸る か。加奈子さんに脳移植して、奥さんを取り戻すか」  いっそのこと、言い出しっぺの静香の脳を加奈子に移植したらどうか?  ふとそんな考えがよぎったが、そんなことをすればこれ幸いと、離婚手続きをして別の 男の元へ行ってしまうのは判りきっている。  それはやめた方がいいだろう。  やはり、母親の身体ということで、美奈が一番であるし、美奈も納得するかも知れない。  さてどうやってそのことを美奈に伝え、納得させるかである。 「一言加えておくけど、脳移植は美奈ちゃんにとって、母親殺しよ。絶対に賛成しないで しょうね」  先に言われてしまった。  確かにそうかも知れない。 「じゃあ、どうすればいいんだ?」 「決まってるじゃない。美奈ちゃんを騙すしかないでしょう。先の話のように、脳死のマ マを救うには、その臓器を美奈ちゃんに移植して性転換するが一番だとか言いくるめて、 手術台に上らせて勝手に脳移植してしまうのよ。そして、後になってこうなってしまって はしようがないんだとか言って、強引に納得させるしかないわ」 「ところで、脳移植ができる医者なり設備があるのか? どうなのだ」 「わたしが性転換を受けた医者の知り合いが脳移植ができるし、設備も技術も一流どころ が揃っているわ」 「肝心の手術費用のことだが……」 「ああ、それなら心配いらないわ。脳移植すれば美奈ちゃんの身体が残るでしょう? そ の身体を相手に献体することで手術代を肩代わりしてくれるということらしいわ」 「美奈の身体を売り渡すということか!」 「仕方がないでしょ。加奈子さんの脳は死んでいて、美奈ちゃんは生きている。生きてい る脳は一つしかないけど、生きている身体の方は二つ。どっちに転んでもどちらかの一方 しか選べないのよ。美奈ちゃんの手術代のために涙を飲むしかないんじゃない?」  確かにその通りである。  加奈子の身体を取るか、美奈の身体を取るか……。  もう一度良く考えてみる。  美奈の身体を選んだ場合。  子供はいずれ独立して親の元を去ってしまうものだ。せっかく加奈子の臓器を美奈に移 植しても、結婚なりして私から離れてしまったら元も子もないじゃないか。  では加奈子を選んだ場合はどうか。  当然、妻ならば生涯の伴侶として、夫婦円満である限り、私と共に生きることができる ことになる。  やはり脳移植が一番理にかなっているようだ。  美奈を騙すことになるが、加奈子への脳移植にしようじゃないか。 「静香、決めたよ。妻としての加奈子を取ることにする。脳移植の方だ」 「そうね。その方があなたにとっても、そして美奈ちゃんにとっても、一番良い選択肢だ と思うわ」  というわけで静香の計らいで、すべてが用意万端整って、美奈の脳の加奈子の身体への 脳移植が施術されたのだった。  つづく
     
11