機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦
XI
壮烈なるターラント基地攻略戦が開始された。
ミネルバ。
艦内の至るところで、警報が鳴り響き戦闘態勢が発令された。
「艦載機及びモビルスーツ隊は発進準備せよ」
フランソワの命令を伝えるオペレーターの声がこだまする。
格納庫から戦闘機が次々と引き出されて、発着艦デッキへと移動されてゆく。
モビルスーツへと駆け込むパイロット達。
サブリナ中尉とハイネ上級曹長、ナイジェル中尉とオーガス曹長も複座式の新型に乗り込む。
搾取したモビルスーツも全機投入される。
「アイク、ジャン、両名とも搭乗完了しました」
「出撃させてください」
「了解しました」
今回の作戦は総力戦である。
モビルスーツ及びパイロットを遊ばせておくわけにはいかないのである。
作戦に参加する艦艇も、ミネルバ以下の空中戦艦、水上艦艇、陸上部隊と動員できるものはすべて参加していた。
「あの新人、大丈夫でしょうか?」
副長のリチャード・ベンソン中尉が心配する。
「アイクはサブリナ、ジャンはナイジェルに任せてあります。何とか扱ってくれるでしょう」
「二人の競争意欲が邪魔をしなければと思うのですがね」
フランソワとて考えでもないが、それを口にすることは士気の低下を招くことも良く判っていた。
「良いほうに考えましょうよ。オニール准将とカインズ准将もまた競争心によって、絶大な功績を挙げたのも事実なのですから」
「確かにそうではあるのですが……」
煮え切らない副長であった。
オニールとカインズ両名は、有能であるからこそ競争心は向上心となりえた。
アイクとジャンは未熟で能力は未知数である。が、未知数であるからこそ将来もまた有望であるかも知れないのだ。
激烈なる戦闘が繰り広げられる中、アイクとジャンも頑張っていた。
双方ともパイロット役として、操縦桿を握っている。
「右後方に敵機!」
機関士でありナビゲーターでもあるサブリナ中尉が警告する。
「了解!」
振り向きざまに、ビームサーベルを抜いて切りかかる。
「上手いぞ。その調子だ」
サブリナの指揮・指導の元、着々と技術を向上させてゆくアイク。
ジャンとナイジェル中尉の方も同様であった。
「アーレスを発射します。軸線上の機体は待避せよ」
ミネルバからの指令に、サブリナ機及びナイジェル機、その他多くの機体が退避する。
その数分後にミネルバから強力な光が放たれターラント基地を破壊した。
その凄まじさに驚愕した基地司令官は白旗を揚げて降参。ターラント基地はミネルバの手に落ちた。
「作戦終了!これより、この地に留まって撤収指令が出るまで確保する」
メビウス海底基地司令部。
ターラント基地攻略成功の報告が届いていた。
「着々と任務をこなしているようですね」
副官が感心していた。
「まあ、ランドール提督の眼鏡にかなった人物ですからね。それなりの力量は持っている
はずです」
レイチェルの言葉には確たるものがあるようだ。
「ここいらで休息を与えてはどうでしょうか?」
副官の提案にレイチェル・ウィング大佐が答える。
「それはやまやまなのですが、総督軍もミネルバを追い回しているみたいですからね。そ
れにミネルバ級二番艦の【サーフェイス】の完成の間近なようですから」
「ミネルバ級ですか……」
「このミネルバ級と合わせて三番艦まで建造予定でした。いずれもメビウス部隊の所属に
なるはずでしたが、占領の方が早過ぎたのです」
「連邦軍のスティール・メイスン提督の作戦が作戦が素晴らしかったからですね」
「三百万隻もの艦艇を炎で焼き尽くしてね」
「あれには参りましたよ。お陰で共和国将兵は腰を抜かしてしまいました」
「しかし、サーフェイスが完成し実戦配備されると、今後の活動に支障が出ますね」
これまでの勝ち続けの戦いは、最新鋭空中戦艦ミネルバがあってこそのものだった。総
督軍がミネルバ級をもって対戦を挑んできたら勝ち目は遠のく。
「サーフェイスが実戦投入される前に、トランター解放作戦を成功させなけらばならない
ようですね」
という副官のため息とも思える言葉に、
「そのためにもモビルスーツ隊の教練度を上げる必要があります」
レイチェルが作戦の方向性を唱える。
「訓練ですか……例の三人組も?」
「もちろんです。パイロット候補生は一人でも多い方がよろしい」
「分かりました。ミネルバに伝えます」