第十一章 帝国反乱
Ⅱ
タルシエン要塞。
監房の独居房に拘禁されているゴードン・オニール少将。
その髭の伸び具合からして、かなりの日数を閉じ込められていたとみられる。
その房に近づく足音があった。
扉が開けられて、看守が入ってきた。
「オニール少将、出ろ!」
監房内においては、階級は関係ないので、敬語は使われないのは当然。
「腕を出せ!」
大人しく腕を出すと、カチャリと手錠を掛けた。
逃亡されないための用心である。
要塞中央コントロールセンターのフランク・ガードナー中将の前に連行される。
「オニール少将を連れて参りました」
「うむ。ご苦労だった、下がってよし!」
「はっ!」
ゴードンを残して看守は下がった。
「どうやら元気なようだな」
「一応……ね」
ぶっきらぼうに答えるゴードン。
「髭を剃ってきてくれないか。他人みたいで話しづらい」
副官に合図を送る。
「こちらへどうぞ」
手錠を外され洗面所に案内されて、髭剃りの道具を与えられる。
髭を剃り、顔を洗って再びガードナーの所へ戻る。
「早速だが、見せたいものがある。来てくれないか」
言うなり歩き出した。
後を付いていくと、艦隊の駐留機場だった。
修理や燃料補給、休息のための一時待機などの艦艇が立ち並んでいる。
ガードナーの旗艦、戦艦フェニックスの雄姿もある。
そこを通り越してさらに進む。
やがて見えて来たのは、
高速戦艦ハイドライド型改造Ⅱ式だった。
「こ、これは!」
驚愕の表情を表すゴードン。
何故なら、その艦体には水の精霊『ウィンディーネ』が描写されていたからだ。
そして艦の搭乗口タラップ前には、副官のシェリー・バウマン大尉と配下の将兵
が立ち並んでいた。
「お待ちしておりました。閣下! 出航準備完了しております」
一斉に踵を揃え敬礼をする。
『ランドール提督より通信が入っております。ウィンディーネ艦橋へお越しください』
場内アナウンスが流れた。
「さあ、さあ。搭乗して下さい。提督をお待たせしては失礼ですよ」
ゴードンの背中を押して、搭乗口へと案内するシェリー。
搭乗係員に申告するゴードン。
「搭乗の許可願います」
「許可します。これをどうぞ」
係員が手渡したのは、司令官用の徽章だった。
徽章からは微弱電波が発信されており、胸に取り付けていれば、艦内を自由に行
き来きできるようになる。
艦橋へとやってきた。
オペレーター達が一斉に立ち上がって敬礼で迎える。
「お帰りなさいませ、閣下!」