難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

モヤモヤ病(ウイリス動脈輪閉塞症)/特定疾患情報(公費負担)

認定基準診断・治療指針

1. モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは
ヒトの脳は左右の内頸動脈と左右の椎骨動脈の合計4本の血管によって栄養されており、これら4本の血管は脳底部で互いに繋がって輪(ウイリス動脈輪といいます)を形成しています。この動脈輪は動脈が一本詰まっても他の血管から血液が流れこむための安全装置として働いています。モヤモヤ病とは内頚動脈が頭蓋内に入り最初に血管を分岐する直前で左右とも急速に狭窄ないしは閉塞する病気で、ウイリス動脈輪が機能せず脳血流が不足します。その結果動脈輪近傍の本来は細いはずの毛細血管が多数拡張して側副血行路を形成し脳血流を維持しようとします。血管撮影検査などでこれらの毛細血管が立ちのぼる煙のようにもやもやと見えるためこの病気がモヤモヤ病と名づけられました。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
欧米に比較するとアジア系民族に約10倍多く、日本は最多、ついで韓国に多いと報告されています。2003年の調査では本邦の患者数が7700名と推定され、10年間で2倍近く増加しています。

3. この病気はどのような人に多いのですか
男女比は1 : 1.8と女性優位で、好発年齢は5歳を中心とする小児型の高い山と30〜40歳を中心とする成人の低い山の二峰性を示すとされています。最近は成人例が増加し、また無症状で見つかる例が増えています。

4. この病気の原因はわかっているのですか
自己免疫や血管炎説が考えられてきましたが未だ不明です。現在家族性モヤモヤ病の方の遺伝子解析を行うことにより原因を追及しています。

5. この病気は遺伝するのですか
約10%の患者さんに家族例が認められます。遺伝形式は浸透率の低い常染色体優勢遺伝が考えられています。現在までの研究で第3, 6, 17番染色体との連鎖が報告され、特に17番染色体異常が疑われています。家族性モヤモヤ病では片側モヤモヤ病が家系内に散見されることも分かってきました。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
脳の必要血流量が保たれなくなったときに症状を出す脳虚血型と、出血型に二分され、少数ですが痙攣発作が主症状のてんかん型、手足の不規則な動きを主症状とする不随意運動型があります。脳虚血型は吹奏楽器を吹く、熱い物を吹きさましながら食べる、啼泣などの過呼吸運動によって手足の脱力、言語障害、意識障害などを呈し、数分で治まる一過性脳虚血発作の場合と、症状が残る脳梗塞とがあります。また出血は小児では稀で、成人になると半数近くに達します。出血の部位、程度により症状は様々で重篤で頭痛、麻痺、重篤な場合は命に関わります。また約7%の方に頭痛が認められ(頭痛型)小児に多く生じます。起床時から午前中にかけて吐き気や嘔吐を伴う強い頭痛があり、昼ごろまでに治まり、午後は改善するのが典型的です。また現時点で無症候性な方(無症候性モヤモヤ病)でも、年間2〜3%の脳卒中を生じることが分かっており注意が必要です。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
内科的治療としては脳虚血型やてんかん型モヤモヤ病に対して脳血流改善剤や抗てんかん剤がそれぞれ投与されます。外科的治療としては脳虚血型に対する脳血管バイパス術が有効であることが知られているため広く行われています。出血型に対しては現時点で有効な治療法は残念ながらありませんが、バイパス術により毛細血管に対する血流負担を軽減し出血を予防できる可能性があることから、出血型モヤモヤ病におけるバイパス術の効果を検証するJapan adult moyamoya trial: JAM)が2001年より継続中です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
脳虚血型では虚血発作が反復するにつれ麻痺や知能障害が増悪していく例が見られ、小児例では発見時にすでに重度の脳梗塞に陥り予後が悪い場合があります。そのため脳虚血型では症状が悪化固定する前にバイパス手術を施行することが好ましいと考えられます。出血型の症状は一般に重篤で死亡例の半数は脳出血です。モヤモヤ病の脳出血を予測する因子としてMRIでの脳内微小出血巣が示され、全国的調査を開始しています。

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