難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

パーキンソン病関連疾患(大脳皮質基底核変性症)/診断・治療指針(公費負担)

特定疾患情報認定基準

■概念・定義
典型的には (1)中年期以降に発症し、緩徐に進行する神経変性疾患で、(2)大脳皮質症状として前頭・頭頂葉症状(肢節運動失行を代表とするが、観念運動失行、皮質性感覚障害、把握反応、他人の手徴候、反射性ミオクローヌスもみられる)、および (3)基底核症状として無動・筋強剛やジストニーが出現し、 (4)これらの神経症状に顕著な左右差がみられる疾患である。痴呆は中期以降に出現する。しかし、その後の研究により、非典型例として注意障害、記憶障害、失語、痴呆、行動異常、偽性球麻痺、尿失禁などで始まる患者群が存在することが知られるようになった。この病型もやがて左右差の著しい前頭・頭頂葉症状(肢節運動失行など)と基底核症状(無動・筋強剛など)が出現する場合には大脳皮質基底核変性症とみなしてよい。

病理学的には、典型例では前頭・頭頂葉により強い大脳皮質萎縮が認められ、同時に黒質の色素含有神経細胞が減少している。顕微鏡的には皮質、皮質下、脳幹の諸核に神経細胞減少とグリオーシスが認められる。大脳皮質および皮質下諸核にピック細胞に似た腫大神経細胞が認められる。黒質細胞には軽度好塩基性の線維性封入体(神経原線維変化)が出現する。

■疫学
正確な疫学調査はない。米国ではパーキンソニズムを示す患者群の 1% という仮定に基づいて、人口10万人当たり 5〜7 人とする推計がある。わが国のある推計によれば、有病率は進行性核上性麻痺の約1/2.6で、人口10万人当たり2人程度と思われる。

■病因
現在不明である。家族性発症例の報告はあるがまれである。脳神経細胞およびグリア細胞が広範にタウ染色陽性となるところから、タウ変性症(タウオパチー)の一型に含められている。

■発症年齢と経過
患者数に性差はみられない。発症年齢は40〜80歳代、平均60歳代である。死亡までの経過は3〜20年、平均6〜8年である。死因は嚥下性肺炎または寝たきり状態に伴う全身衰弱が多い。

■症状
まず目立つのはパーキンソニズムで、無動・筋強剛が必発である。無動・筋強剛は一側上肢に現れ、続いて同側の下肢、遅れて反対側の上下肢に出現するが、末期まで左右差が著しい。下肢よりも上肢に顕著なことが特徴である。無動・筋強剛のある上肢は初期には坐位・立位で肘の屈曲姿勢(ジストニー姿勢)を示すが、やがて屈曲位で固定して廃用になる。錐体外路性の仮面様顔貌、歩行障害(小股歩行)など、構音・嚥下障害も出現する。手首・手指・足首・足趾が常同的に反復伸展するジストニー運動がみられることもある。姿勢時振戦はみられるが、パーキンソン病のような静止時振戦は少ない。

無動・筋強剛が出現した上肢では随意的運動が拙劣である(運動拙劣症)。やがてその上肢には、思うように指が動かせない、日常的な道具が使えない、という肢節運動失行が明瞭になる。ときには「手で歯を磨くまねをすることができない」という観念運動失行が両手に現れる。そのほかの大脳皮質症状として、皮質性感覚障害、把握反応、他人の手徴候、運動失語などが出現する。痴呆は皮質下型痴呆の形をとりやすく、中期以降に出現する。四肢の姿勢時および動作時に反射性ミオクローヌスが出現することがある。

垂直性眼球運動障害もしばしばみられる。核上性障害で、人形の目現象陽性である。進行性核上性麻痺と異なり上方注視障害の方が著しいのが特徴である。

病気の進行とともにすくみ足、易転倒性が起こり、姿勢反射障害がみられる。末期には歩行不能のため車いす生活または寝たきりになる。また構音不能、摂食・嚥下不能、嚥下性肺炎が起こる。

非典型例として注意障害、記憶障害、失語、痴呆、行動異常、偽性球麻痺、尿失禁などで始まる場合には他疾患との鑑別が難しいが、やがて左右差の著しい前頭・頭頂葉症状(肢節運動失行など)と基底核症状(無動・筋強剛など)が出現する場合には大脳皮質基底核変性症の診断が可能である。

■治療
根本療法はなく、すべて対症療法である。治療の目標症候は無動・筋強剛、ジストニー、ミオクローヌスである。

無動・筋強剛に対して抗パーキンソン病薬のレボドパ、ドパミンアゴニスト、セレギリン、アマンタジン、抗コリン薬(トリヘキシフェニジルなど)が用いられ、10〜30%の症例に有効である。効果の程度は軽度が多いが、ときには中等度有効例もある。しかし、進行抑制の効果はなく、病態の進行とともに効果を失う。進行性核上性麻痺との症候類似性からセロトニン作動薬(アミトリプチリン、タンドスピロン、SSRI など)が試みられ、有効とする症例報告があるが、無効のことも多い。

ジストニーに対して抗コリン薬、レボドパ、筋弛緩薬(バクロフェン、チザニジンなど)が試みられるが、有効性は10%以下である。

ミオクローヌスに対してクロナゼパムが有効である。ただし、眠気、ふらつきの副作用のために長期使用が困難なことが多い。痴呆に対してはドネペジルを含めて有効とする報告がない。

体系的なリハビリテーションはないが、パーキンソン病および進行性核上性麻痺に準じて運動療法を行う。関節可動域(ROM)訓練、ADL訓練、歩行訓練、嚥下障害改善訓練がメニューとなる。

嚥下障害が顕著になると低栄養による全身衰弱、嚥下性肺炎が起こりやすいので経皮内視鏡胃瘻造設術(PEG)を考慮する。

■予後
予後不良で、発症から寝たきりになるまでの期間はパーキンソン病よりも短い(5〜10年)。その後の経過は全身管理の程度によって左右される。


神経変性疾患に関する調査研究班から
大脳皮質基底核変性症 研究成果(pdf 21KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

この疾患に関する関連リンク
  神経変性疾患に関する調査研究班ホームページ

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