難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

悪性関節リウマチ/認定基準(公費負担)

特定疾患情報診断・治療指針

19.悪性関節リウマチ

1 臨床症状

 (1) 多発性神経炎:知覚障害,運動障害いずれを伴ってもよい。
 (2) 皮膚潰瘍又は梗塞又は指趾壊疽:感染や外傷によるものは含まない。
 (3) 皮下結節:骨突起部,伸側表面もしくは関節近傍にみられる皮下結節。
 (4) 上強膜炎又は虹彩炎:眼科的に確認され,他の原因によるものは含まない。
 (5) 滲出性胸膜炎又は心嚢炎:感染症など,他の原因によるものは含まない。癒着のみの所見は陽性にとらない。
 (6) 心筋炎:臨床所見,炎症反応,筋原性酵素,心電図,心エコーなどにより診断されたものを陽性とする。
 (7) 間質性肺炎又は肺線維症:理学的所見,胸部X 線,肺機能検査により確認されたものとし,病変の広がりは問わない。
 (8) 臓器梗塞:血管炎による虚血,壊死に起因した腸管,心筋,肺などの臓器梗塞。
 (9) リウマトイド因子高値:2 回以上の検査で,RAHA ないしRAPA テスト2,560 倍以上(RF960IU/m ・以上)の高値を示すこと。
 (10) 血清低補体価又は血中免疫複合体陽性:2 回以上の検査で,C3,C4 などの血清補体成分の低下又はCH50 による補体活性化の低下をみること,又は2 回以上の検査で血中免疫複合体陽性(C1q 結合能を基準とする)をみること。

2 組織所見
  皮膚,筋,神経,その他の臓器の生検により小なし中動脈壊死性血管炎,肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること。

3 判定基準
  関節リウマチの診断基準(アメリカリウマチ協会の1987 年改定基準(表1))を満たし,上記に掲げる項目の中で,
 (1) 1 臨床症状(1)〜(10)のうち3項目以上満たすもの,又は
 (2) 1 臨床症状(1)〜(10)の項目の1項目以上と2 組織所見の項目があるもの,を悪性関節リウマチ(MRA)と診断する。

4 鑑別診断
  鑑別すべき疾患,病態として,感染症,続発性アミロイドーシス,治療薬剤(特に金剤,D-ペニシラミン,ブシラミンなど)の副作用があげられる。アミロイドーシスでは,胃,直腸,皮膚,腎,肝などの生検によりアミロイドの沈着をみる。関節リウマチ(RA)以外の膠原病(全身性エリテマトーデス,強皮症,多発性筋炎など)との重複症候群にも留意する。シェーグレン症候群は,関節リウマチに最も合併しやすく,悪性関節リウマチにおいても約10%の合併をみる。フェルティー症候群も鑑別すべき疾患であるが,この場合,白血球数減少,脾腫,易感染性をみる。

表1:関節リウマチの診断基準(アメリカリウマチ協会改定案1987)
 (1) 少なくとも1 時間以上持続する朝のこわばり(6 週間以上持続)
 (2) 3領域以上の関節の腫張(6 週間以上持続)
 (3) 手(wrist),中手指関節(MCP),近位指関節(PIP)の腫張(6 週間以上持続)
 (4) 対称性関節腫張
 (5) 手・指のX 線変化
 (6) 皮下結節(リウマトイド結節)
 (7) リウマトイド因子の存在
 以上の7 項目中4 項目を満たすものをRA とする。

表2:悪性関節リウマチの重症度分類
1 度  免疫抑制療法(ステロイド薬,免疫抑制薬の投与)なしに1 年以上活動性の血管炎症状(皮下結節や皮下出血などは除く)を認めない寛解状態にあり,血管炎症状による非可逆的な臓器障害を伴わない患者
2 度  血管炎症状(皮膚梗塞・潰瘍,上強膜炎,胸膜炎,間質性肺炎など)に対し免疫抑制療法を必要とし,定期的な外来通院を要する患者,もしくは血管炎症状による軽度の非可逆的な臓器障害(末梢神経炎による知覚障害,症状を伴わない肺線維症など)を伴っているが,社会での日常生活に支障のない患者
3 度  活動性の血管炎症状(皮膚梗塞・潰瘍,上強膜炎,胸膜炎,心外膜炎,間質性肺炎,末梢神経炎など)が出没するために免疫抑制療法を必要とし,しばしば入院を要する患者,もしくは血管炎症状による非可逆的臓器障害(下記@〜Eのいずれか)を伴い社会での日常生活に支障のある患者
 @ 下気道の障害により軽度の呼吸不全を認め,PaO2 が60〜70Torr
 A NYHA 2 度の心不全徴候を認め,心電図上陳旧性心筋梗塞,心房細動(粗動),期外収縮又はST 低下(0.2mV 以上)の1 つ以上を認める
 B 血清クレアチニン値が2.5〜4.9mg/d ・の腎不全
 C 両眼の視力の和が0.09〜0.2 の視力障害
 D 拇指を含む2 関節以上の指・趾切断
 E 末梢神経障害による1 肢の機能障害(筋力3)
4 度  活動性の血管炎症状(発熱,皮膚梗塞・潰瘍,上強膜炎,胸膜炎,心外膜炎,間質性肺炎,末梢神経炎など)のために,3 カ月以上の入院を強いられている患者,もしくは血管炎症状によって以下に示す非可逆的関節外症状(下記@〜Eのいずれか)を伴い家庭での日常生活に支障のある患者
 @ 下気道の障害により中等度の呼吸不全を認め,PaO2 が50〜59Torr
 A NYHA 3 度の心不全徴候を認め,X 線上CTR60%以上,心電図上陳旧性心筋梗塞,脚ブロック,2 度以上の房室ブロック,心房細動(粗動),人工ペースメーカーの装着のいずれかを認める
 B 血清クレアチニン値が5.0〜7.9mg/d ・の腎不全
 C 両眼の視力の和が0.02〜0.08 の視力障害
 D 1 肢以上の手・足関節より中枢側における切断
 E 末梢神経障害による2 肢の機能障害(筋力3)
5 度  血管炎症状による重要臓器の非可逆的障害(下記@〜Eのいずれか)を伴い,家庭内の日常生活に著しい支障があり,常時入院治療,あるいは絶えざる介護を要する患者
 @ 下気道の障害により高度の呼吸不全を認め,PaO2 が50Torr 未満
 A NYHA 4 度の心不全徴候を認め,X 線上CTR60%以上,心電図上陳旧性心筋梗塞,脚ブロック,2 度以上の房室ブロック,心房細動(粗動),人工ペースメーカーの装着のいずれか2 つ以上を認める
 B 血清クレアチニン値が8.0mg/d ・以上の腎不全
 C 両眼の視力の和が0.01 以下の視力障害
 D 2 肢以上の手・足関節より中枢側における切断
 E 末梢神経障害による3 肢の機能障害(筋力3),もしくは1 肢以上の筋力全廃(筋力2 以下)


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