1. 肝外門脈閉塞症とは
小腸からの栄養分を多く含んだ血液を肝臓に運ぶ静脈を門脈といいます。この門脈が肝臓の入り口付近で詰まってしまう病気です。この位置で門脈が閉塞すると、門脈の圧が上昇し、門脈圧亢進症という病態になり、様々な症状が起こります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
肝外門脈閉塞症は、門脈圧亢進症をきたす疾患の中では肝硬変症、特発性門脈圧亢進症に次いで3番目の頻度で発生します。原因のわからないもの(一次性)の年間発生患者数が40−60人、何らかの原因が存在するもの(二次性)の年間発生患者数が300−400人と推定されています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
男性・女性を問わずに起こり、特に男女差はありません。発症年齢では10代以下と40代以降に好発します。
4. この病気の原因はわかっているのですか
一次的なものと二次的なものに分かれます。一次的なものの原因は不明であるとされており、多くは小児期に発症しています。考えられる原因としては門脈の先天性の奇形・新生児期や乳児期の門脈系の炎症等が推測されています。
二次的なものとしては、肝硬変症・特発性門脈圧亢進症等に続いて起こる場合や、胆道系の炎症、血液疾患、肝門部の腫瘤、膵の腫瘍、慢性膵炎、開腹手術、脾静脈・腸間膜静脈閉塞等で門脈の血流が障害されるときに起こるとされています。
5. この病気は遺伝するのですか
一般的には遺伝しないものと考えられています。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
門脈の圧が上昇すると、門脈血の一部が肝臓に向かわずに他の方向に逃げるようになります。このようにしてできた新しい血液の流通経路を側副血行路と総称します。この側副血行路が腹壁の静脈が怒張したり、食道や胃に静脈瘤ができる原因になります。静脈瘤の圧が上昇すると、静脈の血管がその圧に耐え切れなくなり、破裂・出血してしまい、吐血・下血の症状が出ます。また、門脈圧の上昇により腹水がたまったり脾臓が大きくなったりしやすくなります。脾臓が大きくなると脾機能亢進症という状態になり、貧血をきたします。
肝外門脈閉塞症では吐下血の頻度が高い(71.5%)のが特徴で、次いで脾腫大40.2%、貧血15.8%、腹部膨満9.8%となっております。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
肝外門脈閉塞症では、門脈圧亢進症にともなう食道胃静脈瘤と、脾機能亢進症にともなう貧血(汎血球減少症:赤血球、白血球、血小板の全てが減少してきます)が治療の対象となります。
静脈瘤が出血した際には緊急の処置が必要です。放置すると出血のためショックとなり、場合によっては生命が危険にさらされる可能性があります。このような場合は直ちに最寄りの救急病院を受診し、点滴・輸血・静脈瘤に対する専門的止血処置等を受けなければなりません。
静脈瘤に対する止血処置
薬物療法
バルーンタンポナーデ法
内視鏡的治療:硬化療法、結紮療法
脾機能亢進症に対する治療
血球減少が高度の際には脾摘術を考慮する
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
肝外門脈閉塞症は肝機能は一般に正常のことが多いので、食道胃静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば経過は良好であります。
情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(門脈血行異常症)
情報更新日 平成20年5月16日
メニューに戻る