機動戦艦ミネルバ/第五章
 ターラント基地攻略戦(5)

 ミネルバ以下の戦艦がカッシーニの森に隠れるように着陸している。
 恒久修理班が損傷した外壁を修理している。
 その間に、パイロット候補生達の訓練が再開された。
 発着格納庫に集められた訓練生に、サブリナとナイジェルが訓示を述べる。
「パイロットになるための訓練はきびしいが、十分な訓練を重ねて立派な戦士になってもらいたい。幸いにも先の作戦で多くのモビルスーツが手に入ったので、各自に一機ずつあてがう事ができるようになった」
「いいか。正規パイロットの先輩達のご好意で、これらの機体を訓練に使わせてもらうのだ。ようく感謝することだ」
「訓練用の模擬弾を装填しているとはいえ、実戦用の機体は訓練機に比べてパワーが違う。心して掛かれよ」
「これよりA班からD班までの四チームに分かれてもらう。チームリーダーとして、A班にはオーガス曹長、B班にはナイジェル中尉、C班にはハイネ上級曹長、そしてD班は私が担当する。A班は戦艦ポセイドン、B班は空母サンタフェ、C班は空母サンダーバードに、それぞれ移乗してもらう」
 搾取したモビルスーツは、ミネルバに随行する各艦にそれぞれ配分されていた。
 戦闘訓練も、各艦から出発するという方式ではじめられる。
「おい。おまえは、B班か?」
「おうよ。おまえと一緒でなくて助かったぜ」
「仲間の足を引っ張るなよ」
「おまえこそ、戦闘でちびるなよ」
 というわけで、A班からC班の三チームは輸送トラックに分乗して、それぞれの艦へと移動する。
「中尉殿、もうしわけありませんが勝たせてもらいますよ」
「何を言うか。おまえが戦うわけでもあるまいし」
「作戦ですよ、作戦」
「作戦だと?」
「ランドール提督だって、どんな不利な情勢でも、作戦によって勝利に導きましたからね」
 ナイジェル中尉とオーガス曹長が言い争っている間にも、訓練生の出発準備が整った。
「中尉殿。B班全員搭乗しました」
 輸送トラックに全員が乗り込み、ナイジェル中尉の合図待ちである。
「おう。それじゃあ、出発するぞ」
 傍らに待たせておいたジープに乗り込むナイジェル中尉。
「オーガス。おまえの作戦とやらをじっくりと見せてもらうぜ」
「たんまはなしですからね」
「抜かせ! おい、出発させろ」
 ジープを発進させるナイジェル中尉。
 地上用発着場からジープが出てゆく。
 それを見送りながら、オーガス曹長はある物が到着するのを待っていた。
「曹長! 手に入れてきましたよ」
「おう、でかした」
 部下が持ってきたのは、訓練の戦場となるカッシーニの森の見取り図だった。
「これで作戦が立てられるぞ」
 見取り図を握り締めてジープに乗り込むオーガス曹長。
 その視線にはハイネ上級曹長があった。
 黙りこんだままジープに乗り込んで出発していった。
「無口なハイネ上級曹長にはチームリーダーとしてやれるのかねえ」
「心配ですか?」
「んなわけないだろ」
「そろそろ出発しましょう。中尉殿が睨んでいますよ」
 サブリナ中尉がこちらをじっと見つめていた。
「おっと、うるさ型の中尉殿に睨まれたら、後がこわいからな」
「そうですね」
「ようし! 出発するぞ!」
 ジープを走らせるオーガス曹長。
 これで全員が出陣していった。
 艦内に残るのは、当艦を母艦とするD班だった。
「ようし、全員それぞれの機体に乗り込め。作戦指揮は状況に応じて、私から指示を出すから通信機に耳を傾けておけ」
 事前の作戦会議は無用。
 サブリナ中尉はそう結論付けていた。
 1対1ならともかく、今回の作戦は4組のチームに分けての乱激戦となる。
 A班と戦っている最中に、横からC班の奇襲を受ける可能性もある。
 敵対する3班の動きを同時に見極め、行動指針を決定するのは並大抵のことではない。
 サブリナには一つの解決方法を見い出していた。
「作戦開始まで時間がある。それまでに機体の微調整と慣らし運転を十分にやっておくのだ」
 ミネルバを母艦とするD班には、移動配備の必要がない分有利だった。その時間を利用しての準備運動を行った。