機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦
II  CCU(循環器系集中治療室)では、医師や看護師が二十四時間交代制で緊急事態に 備えていた。  当直の医師に尋ねるフランソワ。 「どんな具合ですか?」 「かなり心臓が弱っています。極度の脱水症状によって、血液量が減少し心臓に戻って くる血液が不足して、空打ち状態となって負担が増し、心室細動などの症状が出ており ます」 「助かりますか?」 「最善を尽くしますが、五分五分というところでしょうか」 「とにかくお願いします」 「はい」  ミネルバ発着場。  訓練生達が全員勢揃いしている。  その最前列に対面するように、サブリナ中尉とハイネ上級曹長、そしてナイジェル中 尉とオーガス曹長が並んでいる。 「我々四人は、君達の訓練教官を任じられた。そちらの二人は、パイロット養成教官の ナイジェル中尉とオーガス曹長。そして私はサブリナ中尉、こっちがハイネ上級曹長。 君達の基礎体力をつけさせるための体育教官である」  ワイワイガヤガヤと隣同士で囁き合っている訓練生達。さしずめハイネ上級曹長のこ とであろう。 「それでは、早速はじめるぞ! まずは場内五十周からだ」  ええ!  訓練生達から悲鳴があがる。  場内外周はおよそ五百メートルほどであるから、五十周となると二万五千メートルで ある。 「先頭をハイネ上級曹長がスローペースで先導する。諸君らは遅れないように、しっか り着いていくように。もし周回遅れとなって追い越されたら、居残り特訓を行うのでそ のつもりでいろ」 「ええ! うそお!」  またもや悲鳴。 「ようし。それじゃ、出発!」  ハイネが走り出す。  それに続いて仕方なく、ゾロゾロと走り出す訓練生達。 「しっかり走れ! 居残り特訓がやりたいのか!」  はっぱをかけられてスピードを上げる。  サブリナ中尉は一緒には走らないようで、号令係というところであろう。  女性であるがゆえに筋骨隆々とはいかないが、その引き締まった身体は相当な鍛錬を していることを物語っている。  パイロット養成官のナイジェル中尉とオーガス曹長は、取りあえずは用がないので、 自分に与えられた新型モビルスーツに乗り込み、システムの調整をはじめた。 「しかし……すごいな。ミネルバと同じ超伝導磁気浮上システムだ。これなら空中を自 由に飛びまわれるぞ」  機関担当のナイジェル中尉が感心していた。 「超伝導ということは、冷却用の液体ヘリウムの補充が欠かせないということですよ ね?」 「しかしシステムは非常にコンパクトにまとめられている。超伝導回路に電力を供給す る核融合炉も、並みの戦艦クラスのパワーゲージがある。つまり、これ一機で戦艦と互 角に戦える。いや、機動力を考えればそれ以上ということか」 「艦長や上層部がこの機体の回収にこだわったのもそのため?」 「そういうことだ。実に素晴らしい機体じゃないか」 「感心するのはともかく、機内に入り込んだ砂をまずどうにかしませんか? 砂漠に長 時間放置されていたので、砂だらけじゃないですか」 「ああ、そうだな」
     
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