機動戦艦ミネルバ/第三章 盗賊達の挽歌

(1)再び戦いの渦中へ  シューマット群島の入り江に停泊する機動戦艦ミネルバ。  軍港を出航直後の戦闘によって生じた艦の外装修理のために、修理ロボットがかい がいしく動き回っている。  甲板上には、揚陸戦闘用機動モビルスーツが上空を睨んで警戒に当たっている。そ の頭上すれすれを通過するミネルバ搭載の戦闘機「ストライク・ファントム」。発進 までの時間を使って演習を行っていたのである。 「こらあ! 貴様、おちょくってるのか?」  モビルスーツのパイロットが無線機に向かって怒鳴っている。  端末に戦闘機パイロットの姿が映し出された。 「中尉殿。興奮すると、また血圧が上がりますよ」 「何を言っておるか。演習なら演習らしくまじめにやれ!」 「とは言ってもですねえ。演習は十分すぎるほどやってるんですけどね」 「馬鹿野郎! 演習はやり過ぎて困ることはないんだ」 「そうは言ってもですねえ……このトランターに来てからずっと演習続きですから」  二人のパイロットの会話でも判るとおりに、戦艦ミネルバの所属する第八占領機甲 部隊「メビウス」は、士官学校からの新規入隊士官を集めて戦闘訓練のために、当地 トランターに赴任してきたのである。 「だがな、ついに戦闘ははじまってしまったのだ。これからは……」  とその時だった。  端末が警報音を鳴り響かせた。 「警報だと。敵か?」  端末には急接近する飛行物体の光点が輝いている。  ミネルバ艦橋。  けたたましく警報が鳴り響いている。 「三時の方向から飛行物体接近!」  艦橋のドアが開いてフランソワ以下のオペレーターが駆け込んでくる。  フランソワ、指揮官席に座りながら状況を尋ねる。 「どちら側の戦艦ですか?」  トランター総督軍にしろ、連邦軍にしろ、ミネルバの敵には違いなかったが、かつ ての味方か敵かによって、士気に相違が出るのは必至である。 「連邦軍です。ザンジバル級揚陸戦闘艦!」 「マック・カーサーの最新鋭戦闘艦ね」  正面のスクリーンにはザンジバル級のデータが表示されていた。 「全体的な戦闘能力にはそれほどの差異はないけど、大気圏内戦闘に限ってはこちら が絶対有利なはずよ。艦体浮上用意!」  フランソワが下令し、副長が復唱する。 「浮上用意!」 「超伝導磁気浮上システム、第三種超伝導体コイル冷却状態、正常! ヘリウム4追 加注入開始!」 「超伝導コイル、正常に磁束密度上昇中! 現在、13.2テスラ」 「マイスナー効果 最大値に達しました!」 「よし、係留解除だ。浮上する」  ゆっくりと浮上をはじめるミネルバ。  それもロケット噴射によらない超伝導磁気浮上システムによる垂直離陸である。