機動戦艦ミネルバ/第二章 選択する時
IV 決断の時  それから数時間後。  アレックスが自分の意思を発表したように、フランソワも自分の意思を艦内放送で 流すことにした。 「ミネルバの乗員に告げます。先の記者会見放送のごとく、共和国同盟はバーナード 星系連邦の手に落ち、旧同盟艦隊は解体され総督軍に再編されることが要求されてい ます。その一方で我第八占領機甲部隊メビウスは、タルシエン方面軍司令官アレック ス・ランドール提督の配下にあります。我がミネルバは提督の意志に従い、レジスタ ンス部隊の用兵としての任務を開始します。ゆえに乗員達には、故郷に弓引く結果を 招くことになります。しかし、それも同盟を解放するための犠牲として考えておいて ください。強制は致しません。意にそぐわなければミネルバから退艦することを許し ます。四十八時間待ちます。それまでに進退を決定してください」  残るも去るも本人の自由意志にまかせることにしたのである。 「あんなことをおっしゃって良かったのですか?」 「この艦に乗艦している者の多くは士官学校を繰り上げ卒業されて特別徴用されてい ます。軍人としての心構えも出来ないうちに無理矢理引っ張り出されたのです。学生 気分のままの者もいます。また家族のいる人もいるでしょう。元々全員、共和国同盟 の軍人なのです、同盟が消滅した時点で、軍人としての身分はすでに消失しているの です。軍人ではなくなったからには、祖国へ帰るのが自然であり、それを拘束する権 利は誰にもないのです」 「確かにそうですね。無理に引き止めても、士気の低下は避けられませんし、謀反も 起きるでしょう」 「レジスタンス活動をする人材は、自らの意思で残ってくれる人だけに限るべきで す」  そんなフランソワの気持ちを察してか知らずか、乗員達はそれぞれに結論を出しつ つあった。 「あなたはどうするの?」 「あたしは、艦長についていきます」 「そりゃ、あなたは艦長をお姉さまと思って慕ってるかんね」 「しかしランドール提督はともかく、うちの艦長さんは士官学校出たての新米艦長だ かんな。俺達の命を預けるには心許ない」 「そうはいうけど、提督が軍法会議にかけられそうになった時に、計略を案じて救っ たのは艦長らしいわよ。つまり今の提督があるのは艦長のおかげというわけね」 「結局、その時もそうだけど、艦長さんは同盟に弓引く定めの星の下に生まれたとい うことかな」 「俺達の任務って、解放軍にとってどんなもんなんだろうか」 「どういうこと?」 「解放が成功するもしないも、結局は宇宙空間における艦隊決戦にかかっているだろ う。惑星を守るのも攻撃するのも艦隊次第で、制宙権を確保したほうが周辺の惑星を 手中にできるということ。となると俺達のやっていることって何なんだろうかと疑心 暗鬼になる」 「そりゃおまえ、自分達つまりトランターにいるミネルバだけを考えるならそうかも 知れないけど、これが同盟の全惑星規模でレジスタンス活動が発起されてかつ綿密に 連絡を取り合えば大きな力になるってことだよ」 「例えば捕虜になって収容所に入れられたとするでしょう。すると敵軍は捕虜を監視 するのに貴重な兵士を裂かなければならないし、脱走されたりなんかしたらさらに捜 索のための警察や軍隊を出動させることにもなる」 「そうそう。戦う能力のない奴は速やかに捕虜になったほうが、自国のためになるっ てことさね」 「捕虜は消極的・受動的ではあるし国家が消滅してしまえば意味をなさないが、より 積極的・能動的な行動に出て国家を再建しようとするのがレジスタンスだな」 「敵の注意を自分達に向けさせ兵力分散させるとともに、隙あらば転覆させてしま う」
     
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