あっと! ヴィーナス!!第二部(32)

第二章 part-10 「油断したな……。まさか暴力を振るうとは思わなかったよ。可愛い顔している割には豪 傑のようだ。まるで巴御前だな」 「もう一度投げ飛ばしてあげようか?」  袖まくりして息荒い弘美。 「遠慮しておくよ」  と言いながら立ち上がり、椅子にかけ直す。 「まあ、落ち着きたまえ。腰を落ち着けて話し合おうじゃないか」  突然の出来事で面食らったようだが、気を取り直していつものアポロの表情に戻る。 「愛ちゃんを返してくれるんだろうな」 「仕方あるまい。返してあげよう……。ただし」  というと、愛に向かって何やら仕草をした。  すると、愛の身体が石になっていき、やがて石像となってしまった。 「石像の愛だがな。あっはっはあ!」  高笑いするアポロ。  一度手に入れたものを、簡単に返してしまっては、神様としての沽券に関わる。  そして、反骨精神旺盛な弘美も、手なずけるのは困難であろう、 「おまえも石像になるがよい!」  と石化の神通力を掛けた。  身構える弘美。  しかし、何の変化も見せなかった。 「なぜだ?なぜ、石像にならない!?」  身振り手振りを繰り返し神通力を発動させながらも、石像化しない弘美に唖然とするア ポロン。  と、その時だった。 「それは、彼女がファイル−Zの娘だからだよ」  神殿の奥から、荘厳な響きを持った声が届く。  振り返る一同。  そこには全知全能の神、オリンポスの最高神ゼウスの姿があった。 「ゼウス様!!」  ヴィーナスとディアナが同時に叫ぶ。 「ゼ、ゼウス……さま……?」  アポロも意外な神の登場にうろたえる。 「アポロよ。速まったな」 「こ、これには、訳が……」 「ヘラに命じられたか?」 「そ、その通りです」 「そこの愛もか?」 「これはただの石像ですが……」 「そうか」  とゼウスが指をパチンと鳴らすと、愛の石化は無論麻痺化も解けて元に戻った。 「弘美ちゃん!」  目を見開き弘美に駆け寄り抱きつく。 「よかった、よかった」  その身体を受け止めて、強く抱きしめる弘美。 「さて、申し開きを聞こうか、アポロよ」  と詰め寄ると、アポロの身体が石化した。 「ちっ!ヘラの仕業だな。口封じしたか……」  舌打ちするゼウス。 「仕方あるまい。その姿のまま、地上界で頭を冷やして来い」  ポンと肩に触れると、一瞬にして消えた。  そして、その姿はギリシャ時代のエーゲ海の海底へと深く沈んでいた。  やがて考古学者によって発見され引き上げられて、ローマ国立博物館に所蔵されること となった。 「弘美そして愛。済まなかったな、神として謝罪する」  腕まくりする弘美。 「一発殴ってもいいか?」 「それは勘弁してくれないか」  慌てて手を前にかざして横に振るゼウス。 「で、ファイルーZとやらはどうするんだ?」 「それはそれ、これはこれ。ま、クレオパトラとかジャンヌダルクとかと同列に扱われる んだ。栄誉と思って感謝して欲しいな。いずれ君は歴史を変えるような働きをすることに なるのだから」 「いまいちピンと来ないんだが」 「念のためにはっきり言っておこう。ファイルーZは何もわたしの愛人にするとかいった リストではないとだけ。ヘラは何か勘違いしているようだがな」 「本当だろうな?」 「インディアン、嘘つかない!」 「おまえも神夜映画劇場見てんのかよ!」
     

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