美奈の日記 32
その日から、病院内での女の子としての再教育がはじまった。
まずはおしっこの仕方である。
男の子と違っておちんちんがないから、それなりの工夫がいる。ちょっと油断すると股
間をびしょびしょに濡らしてしまうんだ。
足を閉じて膝をすり合わせるようにしなければならないんだ。
用が済んだらトイレットペーパーで拭うんだけど、すぐそばにある肛門に触れて汚れな
いように、必ず前から後へと拭かなければならない。
そして女の子なら、必ずやってくる月に一度の生理。
生理ナプキンの当て方や、生活面での注意点として、常に清潔に保つように心がけるこ
と。
そんなこんなのこと注意点を、静香さんや看護婦さんがやさしく手ほどき指導してくれ
る。
いろいろと大変なこともあるけど、女の子としてやらなければならないことばかり。
やがて退院の日がやってきた。
女の子としてスタートするボクのために、パパが新しい服を買ってくれていた。
もちろん女の子が着る可愛いデザインのワンピースだった。
「静香、よろしく頼むよ。ボクは退院の手続きや支払いとかを済ませるから」
パパは女の子の着替えに遠慮して部屋を出て行った。
普段は性転換者の静香さんに冷たくしているパパも、同じ境遇となったボクのためにも、
意識を切り替えて前向きに接するようになっていた。
「ええ、任せておいて」
パパが出て行って、静香さんと二人きりになった。
「着替えましょうか」
静香さんに促されて、パジャマを脱いで可愛い柄のショーツを履く。
今日ほど女の子用のショーツがしっくりとくる感じはなかった。
もちろんそれは、以前にはあったはずのものがなくなって、股間にピッタリと吸い付く
ようにしっくりと馴染んだから。
「可愛いわよ。やっぱり女の子ね」
その姿を見て静香さんが頷くように言った。
「そ、そうかな……」
改めて【女の子】と言われて、どぎまぎとしてしまう。
確かに、女の子になったのだけれども……。
やっぱり違う。
それは性転換して真の女の子となったからではなく、女の子らしい心の持ちようが変化
したからと言った方がいいかも知れない。
春を迎えて、ボクは恵美子ちゃんと同じ女子高校に入学した。
真新しい制服を着込んで、学校の校門をくぐるボクは正真正銘の女の子だ。
これまでのように隠れてこそこそとしたりすることもない。
女の子同士で着替えることも、水着になってプールに入ることも、裸でお風呂だってO
Kだよ。
「美奈ちゃん、入学式は講堂ですってよ。あっちの建物がそうみたい」
恵美子ちゃんが指差す方向にある建物に向かって新入生達が移動していく。
「そうだね。早く行こう」
「うん♪」
ボクと恵美子ちゃんは同じクラスになっていた。
やっぱり親しいお友達がいる方が、楽しいことも一杯あると思うよ。
これからはじまる新しい高校生活を恵美子ちゃんと一緒に過ごすことになるのだ。
手をつないで講堂へと向かうボク達。
ママがくれた新しい人生。
ボクはそれを大切にして、ママの分まで精一杯生きるつもりだ。
ママ、ありがとう。
天国から温かく見守ってくれると思う。
美奈の日記 了
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