特務刑事レディー・特別編
(続・響子そして)

(七)再会の日  卒業式を迎えることとなった。  女子大生よろしく、袴スタイルで着飾って友人達と仲良く記念写真におさまる。  大学生活をエンジョイしながらも、国家資格試験&採用試験に向けての勉強は忘れ ていなかった。  その年の六月までには二つの試験に合格し、八月に行われる予定の麻薬捜査官の受 験資格を得たのである。  実際に受験するかは、敬と相談の上で決定することにする。  敬は一緒に仕事しようとは言ってくれているが、それはあくまで警察官同士という ことだと思う。だから麻薬捜査官になるのには難色を示すかもしれない。国家公務員 と地方公務員では、同じ職場を共にすることはできないからである。  しかし地方公務員では、あの局長と健二を捕らえることはできない。  そしてついに、敬との再会の日を迎えた。  その日は朝から、念入りに化粧を施し、時間を掛けて慎重に衣装を選んだ。 「どうしたの? 今日はずいぶんとおめかしして」  母が何事かと首を傾げている。 「うん……ちょっと」 「デートかしら?」  図星を当てられて当惑する。 「やっぱりね。女の子ですもの、好きな人ができて当然。楽しんでらっしゃい」  母親として理解ある言葉だった。 「できれば、その男性を紹介してくれると嬉しいんだけど……」 「はい。もしそれができるようでしたら、紹介します」  敬のことだ。会ってみて、以前のままのやさしい彼だったら、現在の母にも会って くれるはずだ。  ただ傭兵部隊に入隊していたというから、それがどんな部隊か判らないが、スナイ パーとして腕を磨いたという発言から、人殺しも是とする集団なら、心が荒んでしま っている可能性もある。  あの日以来、連絡はなかった。  今日会ってすべては動き出す。  意気投合し、仕事を共有した後に幸せな結婚生活になるか。  相容れずに別離の果てに敬は傭兵部隊の一員として戦場で散り、自分は涙に暮れる か。  ともかくも敬と会って相談して決めよう。  そして今、約束の大観覧車の前に立っている。  敬の姿はない。 「ここでいいんだよね……時間は午後八時。ちょっと少し早いけど……」  果たして姿形の変わったわたしを、敬が気づいてくれるだろうか?  あの日のデートの時に着ていた服にすれば良かったかな……。それには実家に取り に行かなければならないし、いくら母がいつでも帰っていいよと言ってくれていると はいえ、そうそう帰ってもいられない。但し電話連絡だけは欠かしていない。母親と いうものは、病気してないだろうかと毎日のように心配しているからである。  大観覧車に乗車する人々は、午後八時という時間からかほとんどがカップルであっ た。家族連れには遅すぎる時間帯である。  楽しそうに乗車するそれらのカップルを見つめながら、自分と敬も一組のカップル として乗り込んだものだった。  一人の女性として交際してくれる敬に、ぞっこん惚れていた。プロポーズされた時 の嬉しさは言葉に尽くせない感動であった。