特務捜査官レディー (響子そして/サイドストーリー)
(十八)麻薬取締官へ  もう一度コンビを組むか……。  それが可能だとしたら、やり残した例の事件、磯部ひろしの件を解決したいものだ。 その黒幕の磯部健児を挙げるには、あたし一人じゃとうてい無理……だからこれまで 何もしないでごく普通の女子大生として平穏に暮らしていたのだが……。しかも一介 の警察官のままじゃ、あの生活安全局長にもみ消されてしまう。奴には恨みがある。 あたしや敬がどんなひどい目に会わされたか、とことん思い知らせてやりたい。  ただ、ニューヨーク市警署長のように暗殺じゃだめ。やはり罪状を世間にさらけ出 して社会的に葬り去らなければ気が済まない。  それを実現するには現状のままでは不可能だ。  とにかくもっと上の組織じゃないと……。  地方組織の警察じゃない国家警察的な組織。  しかも麻薬を取り締まれる機関。  一つの解答が浮かんだ。  厚生労働省司法警察員麻薬取締官。  いわゆる麻薬Gメンと呼ばれる組織員だ。  これしかないと思った。  そのためには資格がいる。  国家公務員採用試験、II種(行政)以上の資格。  もしくは国家資格の薬剤師の資格。  どうしても二つの資格を取得する必要がある。  どちらかでもいいのであるが、確実に採用されるためには両方あった方が良いに決 まっている。  しかも司法警察員たる法学の知識も必要だ。採用資格には示されていないが、採用 後には法務省主催の検察事務官中等科、高等科研修などを受講するとともに、国外で は、フィリピンにあるWHO西太平洋地域事務局で開催されている語学研修が行われる ことになっている。  実際にも、採用試験合格採用者には法学部出身が優先しているくらいだ。  採用後と言わずに、今からでも勉強しておく必要があるだろう。  さらには、銃の取り扱いや逮捕術そして語学、麻薬取締官に必要な条件はありとあ らゆる方面に渡っている。これに関しては、元警察官としての銃と逮捕術を習得した 経験があるので有利だろう。もっともこれは薫としての経歴だから表立っては言えな いが……。  幸いにも薬科大学に通う斎藤真樹として薬剤師の道は開けている。  問題は、もう一つの採用条件である国家公務員採用試験が残っているだけだ。  まず自分がこれからしなければならないのは、薬科大学を無事卒業する事。これは 両親を安心させるためにも、麻薬捜査官になることとは無関係に必要最低限なことで ある。  国家試験を受けて薬剤師になること。  国家公務員採用試験の受験と法学の勉強。  受験日程を考えてみる。  まずは薬剤師の方だ。  国家資格の薬剤師受験のためには、薬科大学卒業か卒業見込み。  受験場所。埼玉県さいたま市中央区新都心1番地1   さいたま新都心合同庁舎1号館 関東信越厚生局。  試験科目   (1) 基礎薬学   (2) 医療薬学   (3) 衛生薬学   (4) 薬事関係法規及び薬事関係制度  試験日 平成17年3月12日(土)と13日(日)  合格者の発表   試験の合格者は、平成17年4月6日(水曜日)午後2時に厚生労働省及び地 方厚生局又は地方厚生支局にその氏名を掲示して発表するほか、合格者に対して合格 証書を郵送される。  というわけで、この春の卒業を待って受験ということになる。  続いて国家公務員採用試験だが、どうせなら大学卒業なのだからI種(行政)を挑 戦することにしよう。上を目指すならより上級であった方が後々都合が良いだろう。  こちらは人事院の管轄である。 17年度実施要綱  申込受付期間      4月1日(金)〜4月8日(金)  第1次試験日      5月1日(日)  第1次試験合格者発表日 5月13日(金)  第2次試験日(筆記)  5月22日(日)  第2次試験日(人物)  5月25日(水)〜6月10日(金)  最終合格者発表日    6月21日(火) 出題分野 専 門 試 験(多枝選択式)  80題出題、50題解答  必須問題 政治学J、憲法、行政法K、経済学、財政学Kの計35題  選択問題 次の選択A 〜 C の3つの選択分野から1つを選択し、計15題解答   選択A 政治学D、行政学D、民法(親族・相続を除く。)D   選択B 行政学D、経済政策D、統計学、計量経済学D   選択C 国際関係D、国際法D、国際経済学D 専 門 試 験(記述式)  次の6科目のうち3科目選択   政治学、行政学、憲法、行政法、経済学、国際関係  16年度においては、受験者数8569(女性3151)人のうち最終合格者60(同1 1)人という難関である。  そういうわけで、6月には結果が判明することとなる。  敬との約束には十分間に合う期日である。  とにもかくも、これから忙しくなりそうである。  ちなみに国家公務員試験を受けることを知った両親は、 「構わないけど……。国家公務員行政I種を合格採用なんてことになったら、男性が 遠慮して嫁の貰い手が少なくなるぞ」  と笑って言った。  両親にとっては、良い条件で就職するよりも、素敵な男性を見つけて結婚、専業主 婦として子供を産んで育てるという、ごくありきたりな女の子の将来を希望している ようだった。
文中の詳細は執筆当時のものです。 現在、国家公務員試験は、I種II種という区別がなくなり、I種は総合職、II種は 一般職となっています。 国家公務員総合職試験(院卒、大学卒)中央省庁に採用された者がキャリア官僚 国家公務員一般職試験(本省採用)(大学卒程度) 国家公務員一般職試験(大学卒程度) 国家公務員一般職試験(高卒者) ちなみに、合格者の出身別では、法学部卒が圧倒的に多い。 *国家試験については、執筆当時のものです。
     
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