第十六章 交渉
Ⅱ  帝国内のだいたいの後片付けが済んだのを機に、皇女や参謀たちを集めて会議を開いた。  議題は、もちろんタルシエン要塞についてである。 「この時勢で、要塞を奪取した真意がわかるか?」  静かに質問を投げかけるアレックス。 「帝国と同盟は内紛で政情不安定でした。それが統一されてしまった今、最後のチャンスに賭けてみたのではないでしょうか」  ジュリエッタが答える。 「そうですね。国境を接する銀河帝国方面、三国中立地帯を経ての共和国同盟方面、そのどちらからも進軍は難しくなりました。ですから辺境の地であるタルシエンの橋から攻め立てたというところじゃないでしょうか」  とはマーガレットの意見。 「ふむ。論点を間違えているが……」 「殿下のお考えは?」 「要塞を攻略したのは、和平交渉の席に着くための条件作りだよ」 「和平交渉ですか?」 「そうだ。この時勢で戦争を継続するのはもはや自殺行為だ」 「といいながら要塞を陥落させましたよね」 「交渉の席に着くには、やはり対等の立場でないと不利になるからね」 「実力を見せつけたというわけですか」 「まあ、そういうところだろう」  数日後。  サラマンダーに戻り、共和国同盟に戻る準備をしていたアレックスであるが、バーナード星系連邦より使節団の往訪許諾要請が届いたことをパトリシアが報告した。 「いかがなされますか?」 「断る理由はないだろう。応じようじゃないか」 「会合の場所はどちらに致しますか」 「そうだな……シャイニング基地がいいだろう」 「かしこまりました。  シャイニング基地は、アレックスが少佐となり独立遊撃艦隊の最初の基地とした星である。さらには第十七艦隊司令として赴任したのもここだ。  共和国同盟とバーナード星系連邦は数百年もの長い間戦争を続けてきた。  銀河帝国は、海賊の侵入はあったものの、連邦とは直接の戦争を行っていない。  共和国同盟への一時帰国に際して、マーガレット皇女が同行することとなった。  ジュリエッタ皇女も同行を願ったが、帝国内政をエリザベス皇女一人では辛かろうと残された。  サラマンダー艦橋。  指揮官席に腰を降ろすアレックスの両側には、パトリシアとマーガレット皇女が控えている。  マーガレットの乗艦アークロイヤルは長旅には向かないので、サラマンダーに同乗させてもらったようだ。 「全艦、共和国同盟首都星トランターに進路をとれ!」  サラマンダー以下の旗艦艦隊に命じるアレックス。  首都星アルデラーンからトランターまでは、ワープゲートが開かれていないので、自力でワープしていかなければならない。トランターからは、シャイニング基地まではワープゲートが使える。 「全艦、微速前進!」 「進路、共和国同盟首都星トランター」  和平交渉に向けての道行きがはじまった。
     
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