第十三章 カーター男爵
Ⅵ  銀河帝国内の情報は、皇女配下の情報部により逐一報告が上がっていた。  アレックスの元にマーガレット皇女とジュリエッタ皇女がいる。 「サセックス侯国のエルバート候は、ウェセックス公国の誘いをお断りになられた そうです」 「そうか。候女を誘拐されたのだから当然だろうな」 「デュプロス公爵とその一派は、帝国内の貴族達の間を駆け回って味方を増やす算 段を繰り広げているようです。宥め賺したり、褒美で釣ったり、言うことを聞かな ければ脅迫など、ありとあらゆる手段で傍若無人に振舞っております。これは国民 に対しても同様であります」 「戦争では勝ち目がないと判断してのことだろうな」 「このまま手をこまねいていれば、戦争に持ち込んで勝利したとしても、貴族にも 国民に対しても私恨を残す懸念があります」 「そうだな……。地球歴第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件のように、 摂政派が早まった行動に出るのを期待して待っていたのだがね」 「戦端のキッカケが欲しいということですか?」 「既にカーター男爵が誘拐事件を起こしています。それを公にして、男爵の引き渡 しなどを要求すればいかがでしょうか? 当然拒否すると思いますので、それを口 実に?」 「いや、誘拐事件はエセックス侯国内の問題だ。彼の国にはあくまで中立を保って 貰うためには、事を荒げることはしたくない」 「だからと言って、このまま放置していれば事態は悪化するばかりです」 「……」  しばらく考え込んでいたアレックスだが、 「そうだな。こちらから動くしかないか……」  ついに決断する。 「マーガレット! ジュリエッタ!」 「はっ!」  姿勢を正して、次の言葉を待つ皇女二人。 「帝国に向けて艦隊を動かす。全艦に出撃命令を出せ!」 「御意!」  同時に答える二人。 「パトリシア!」 「はい!」 「旗艦艦隊とウィンディーネ艦隊に出撃命令だ!」 「かしこまりました!」  こうして、帝国進撃に向けての体制は整った。
     
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