第六章 皇室議会
V  謁見の間は、相変わらず紛糾していた。  アレックスの意見具申に対しことごとく反対意見を述べる大臣達。  いつまでも結論が出ず、結局最後は摂政裁定で議決されるという有様だった。  ここにはいないロベスピエール公爵の意向がすべてを左右していた。  傀儡かいらい政権の大臣達には公爵に逆らえるわけがなかったのである。 「統合軍第四艦隊及び第五艦隊に対し出撃を命令し、先行する第二艦隊と第三艦隊の後方 支援の任務を与えます」  アレックスが意見具申を申し出てから、今日の裁定に至るまで七日という日が無駄に費 やされていた。  皇女が直接指揮権を有する皇女艦隊と違って、一般の統合軍艦隊は国防大臣(艦隊運 用)及び国務大臣(予算配分)の配下にあった。どちらも摂政派に属しているために、い ろんな理屈を並べて首を縦には振らなかったのである。  議論は平行線をたどった挙句、直接戦闘には参加しない後方支援ということで、やっと のこと日の目をみたという次第だった。 「皇女様に対し敵艦隊との矢面に立たせて、第四・第五艦隊は安全な後方支援とはいかな る所存か?」  第四艦隊・第五艦隊司令官からも、なぜ自分達は後方支援なのだという意見具申が出さ れていた。  しかし大臣達は、戦闘経験のない艦隊を最前線に出すわけにはいかないという一点張り で対抗した。  謁見の間から、統制官執務室に戻ったアレックスだが、思わず次官に対して愚痴をこぼ してしまう。 「まったく……頭の固い連中を相手にするのは疲れるよ」 「お察し致します。総督軍が迫っていると言うのに、相も変わらず保身に終始しています からね。総督軍との戦いに敗れれば、皇族も貴族もないのに」 「で、艦隊編成の進み具合は?」 「大臣達のお陰で何かと遅れ気味でしたが、燃料と弾薬の補給をほぼ完了して、やっとこ さ一週間遅れで出撃できる次第となりました」 「一週間遅れか……。何とか間に合ったと言うところだな」 「後方支援ですからね。ぎりぎりセーフでしょう」 「ともかく後方かく乱されることなく、先行することができるようになったわけだ。一日 でも早く先行する艦隊との差を縮めるようにしたまえ」 「かしこまりました」  背を向けて窓の外の景色を眺めるようにして、腕組をし考え込むアレックス。  しばしの沈黙があった。  やがて振り返って命令する。 「第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令を出せ。四十八時間以内に共和国同盟に向けて出撃す る」 「了解。第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令。四十八時間以内に共和国同盟へ進撃させま す」 「よろしい」  ついに迎撃開始の命令を出したアレックス。  次官はデスクの上の端末を操作して、統合軍総司令部に命令を伝達した。  艦隊数にして百五十万隻対二百五十万隻という敗勢必至の状況ではあるが、手をこまね いているわけにはいかなかった。  数で負けるならば、それを跳ね除けるような作戦が必要なのであるが……。
     
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