難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

1★生活保護とは

 生活保護は「国で定める最低生活費を下回る場合に、足りない部分について保障する」制度です。仕事の給与、年金、各種福祉手当、仕送などを合計して、なお最低生活費に満たない場合に、その足りない部分がお金(保護費)として支給されます。
 生活保護は世帯を単位として適用されます。ですから、世帯全体の収入を合計して、最低生活費を上回るときは適用されません。借金がたくさんあって生活ができない、父親が酒ばかり飲んで家に金を入れないといったケースでは、保護は認められないことになります。こういった場合には自己破産や協議離婚など、別の方法で世帯への援助を図っていくことになります。

■働ける人には働いてもらう
 基本的に障害や病気で働けないなどが対象。
 「専業主婦で今まで働いたことがないから、仕事は無理」
 「就職活動中で、決まるまでの間だけでも」
 といった理由では、保護の適用は認められません。
 あくまで、身体状況や生活状況、社会情勢等により、客観的にやむを得ないと認められる場合に限られます。

■資産価値のあるものは処分してもらう
 自動車の保有はできません。処分することになります。但し僻地に住んでいて自動車が必要不可避な場合や、障害などがあって通院・通学・通勤に必要とされるなど一定の条件を満たしている場合に認められる場合がある。
 持家もローン支払い中の場合は処分が必要で、場合によっては自己破産となります。
 完済している場合は、資産価値や生活状況をみて相談することになります。
 パソコンや携帯電話の保有については明確な指標(厚生労働省からの通知など)がなく、福祉事務所が個別的に判断しているのが現状です。
 なお、手持金や預貯金は、合計で数万円程度しか保有は認められません。これ以上の手持金がある時は、生活費等に消費してから申請を受け付けることになります。基本的に1ヶ月の生活費に対して三分の一程度の金額。
 預貯金は、すべて調査されて把握されてしまうので、隠し通すことはできない。その残高分はすべて生活保護費から差し引かれてしまうので、受給額が減ってしまう。差し引きゼロ。
 生命保険などの貯蓄性・資産性のあるものは解約。

■援助できる身内がいればその人に援助を求めてもらう
 三親等内の親族には扶養義務が発生します。通常は、「親兄弟子供」が扶養の範囲に入ると考えてください。
 生活保護の申請後、通常は扶養義務者に「扶養照会」と呼ばれる手紙が送付されます。対象となる人には、かならず事前に連絡するようにしてください。扶養できないという回答があれば、保護の申請が受理されます。

■利用できる制度があれば利用してもらう
 「他法他施策の原則」と呼ばれています。高齢者なら年金や介護保険、母子家庭なら児童扶養手当・児童手当、失業中なら失業保険など。どんな制度が対象になるのかは、生活保護の相談にいくと教えてくれます。
 それらを利用してもなお生活最低費に満たない部分が、生活保護費として支給されます。


2★保護の内容

 保護は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、葬祭扶助、生業扶助の八種類があります。

■生活扶助
 生活困窮者が、衣食、その他日常生活の需要を満たすための扶助であり、飲食物費、光熱水費、移送費などが支給される。主として第一類と第二類に分け計算され、第一類が個人ごとの飲食や衣服・娯楽費等の費用、第二類が世帯として消費する光熱費等となっている。

■教育扶助
 生活に困窮する家庭の児童が、義務教育を受けるのに必要な扶助であり、教育費の需要の実態に応じ、原則として金銭をもって支給される。

■住宅扶助
 生活困窮者が、家賃、間代、地代等を支払う必要があるとき、及びその補修、その他住宅を維持する必要があるときに行われる扶助である。原則として金銭をもって支給される。
 地域によって上限額が異なる。
 入院が長期に渡った場合(6ヶ月以上)、住宅扶助を打ち切られることがある。その場合アパートの賃貸契約が解除され、家財道具などは管理会社に委託されることになる。

■医療費扶助
 生活困窮者が、けがや病気で医療を必要とするときに行われる扶助である。原則として現物支給(投薬、処理、手術、入院等の直接給付)により行われ、その治療内容は国民健康保険と同等とされている。なお、医療扶助は生活保護指定医療機関に委託して行われるが、場合により指定外の医療機関でも給付が受けられる。予防接種などは対象とならない。
 医療費扶助によって、入院中・通院に掛かる保険適用分の治療費はすべて無料となる。事前に役所で医療券の発券をしてもらってから病院に通うことになる。

■出産扶助
 生活困窮者が出産をするときに行われる給付である。原則として、金銭により給付される。

■生業扶助
 生業に必要な資金、器具や資材を購入する費用、又は技能を修得するための費用、就労のためのしたく費用等が必要なときに行われる扶助で、原則として金銭で給付される。平成17年度より高校就学費がこの扶助により支給されている。

■介助扶助
 要介護又は要支援と認定された生活困窮者に対して行われる給付である。原則として、生活保護法指定介護機関における現物支給により行われる。介護保険とほぼ同等の給付が保障されているが、現在普及しつつあるユニット型特養、あるいは認知症対応型共同生活介護、特定施設入所者生活介護は利用料(住宅扶助として支給)の面から制限がある。

■葬祭扶助
 生活困窮者が葬祭を行う必要があるとき行われる給付で、原則として、金銭により給付される。


3★保護受給に至る手続

 1、事前の相談
  ・生活保護制度の説明
  ・生活福祉資金、障害者施策等各種の社会保障施策活用の可否の検討

 2、保護の申請
  ・預貯金、保険、不動産等の資産調査
  ・扶養義務者による扶養の可否の調査
  ・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
  ・就労の可能性の調査

 3、保護費の支給
 4、医療機関への入院、保護施設等への入所

 必要書類など
 生活保護申請書(申請者の住所・氏名、扶養義務者や家族の状況、申請理由)
 収入申告書(世帯全員の収入状況)
  ・ 前年度の給与証明書か所得証明書。
 資産申告書(土地・建物・現金・預貯金・生命保険などの状況)
  ・預金通帳のコピー(残高証明)など。
 同意書(正しい援助を行うため、収入や資産内容について、保健福祉部が関係先に照会することに同意していただくものです。同意書がないため調査ができないときは、保護の決定ができない場合があります)
 アパートの賃貸契約書のコピー。(住宅扶助を受ける場合)

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