(3)シャイ・ドレーガー症候群(しゃい・どれーがーしょうこうぐん)
1. シャイ・ドレーガー症候群とは
シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome:SDS)は、自律神経症状を主要症状とする脊髄小脳変性症の中の一病型です。
オリーブ・橋・小脳萎縮症(OPCA)とよばれる病型や線条体黒質変性症(SND)とよばれるものとは同一の疾患と考えられています。というのは、SDS、OPCA、SNDの3病型の病理所見は、進行例では重なりあうところが多く、また、グリア細胞内に共通の封入体を有すからです。
OPCAは小脳性運動失調を主要な症状とするものであり、SNDはパーキンソン症状を中心とした錐体外路症状を前面に現わし、SDSは、自律神経症状を特徴とする病型です。これらのSDS,OPCA,SNDをひっくるめて多系統変性症(MSA)と呼ぶことがあります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
人口10万人対0.31人、厚生省特定疾患運動失調症調査研究班の全国調査では、146名がみとめられています。脊髄小脳変性症に占める割合は、6.8%とされています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
男性の方が女性に比して約3倍位多いとされています。初発年齢は40-60歳とされています。
4. この病気の原因はわかっているのですか
原因は今の所不明です。
5. この病気は遺伝するのですか
全例が弧発例であり、遺伝する例は知られていません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
自律神経症状が主要な症状であり、それに加えて小脳性運動失調、錐体外路症状としてのパーキンソン症状などを現わします。自律神経症状としては、起立性低血圧、発汗異常、排尿障害、インポテンス、便秘などをきたします。初発症状としては、陰萎、排尿障害、起立性低血圧などです。
起立性低血圧の程度は初期には軽く、進行すると強くなります。患者さんは初期には、耳鳴り、頭痛、肩凝り、倦怠感、立ちくらみを訴えますが、進行すりにつれ、眼前暗黒感や失神をきたすようになります。頻回の失神発作のため臥床を余儀なくされます。血圧の異常としては、起立性低血圧、臥位性高血圧、睡眠侍高血圧、食後性低血圧などがみられます。
排尿障害としては、頻尿、夜間尿、排尿困よりはじまり次第に尿失禁、尿閉へと進行してゆきます。
小脳性運動失調症状は自律神経症状より1年位遅れて現れますが、歩行のフラツキ、書字障害、言語障害などを現わします。また、錐体外路症状として、パーキンソン症状を現しますが、これには筋固縮、動作緩慢などをきたします。
また、特有の金属性いびきが観察されることがあり、また、睡眠時の無呼吸発作など重大な症状の発生も知られています。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
原因が不明であるSDSの原因療法は未だ確立されていません。しかし、自律神経症状やパーキンソン症状に対しては対症療法が試みられています。
起立性低血圧に対しては、ジヒドロエルゴタミン、ドプス、ミドドリン、アメジニウムなどが使用されます。排尿障害に対してはα交感神経遮断薬が使用されます。
下肢のつっぱりなどの痙縮に対しては抗痙縮剤が使われます。また、パーキンソン症状に対しては抗パーキンソン剤が使用されます。運動失調に対してはTRHが有効です。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
緩徐進行性の経過をとります。発病からの全経過はおよそ4〜7年とされています。
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