1. 悪性関節リウマチとは
既存の関節リウマチに、血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合、「悪性関節リウマチ」と定義されます。ただし、内臓障害がなく、関節リウマチの関節病変が進行して関節の機能が高度に低下して身体障害がもたらせる場合には悪性関節リウマチとは言いません。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
1年間の受療者数は約4,000人と推定されています。関節リウマチの患者さんの0.6%の頻度と考えられています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
男女比は1:2です。診断されるピークの年齢は60歳代です。関節リウマチよりもやや高齢、性別では関節リウマチよりも男性の占める割合が多い傾向にあります。
4. この病気の原因はわかっているのですか
関節リウマチと同様に原因は不明です。家族内に関節リウマチの人が約12%みられ、体質や遺伝が示唆されます。遺伝因子の1つとして、白血球の組織適合抗原のHLA-DR4は関節リウマチに多く認められますが、悪性関節リウマチにはより多く認められます。また、悪性関節リウマチでは、免疫異常が強く認められます。リンパ球の機能異常、リウマトイド因子(特に、IgGリウマトイド因子)の高値、免疫複合体の形成などが血管炎の発症に関与していると考えられています。
5. この病気は遺伝するのですか
悪性関節リウマチや関節リウマチが、親から子供に100%遺伝することはありません。ただし、関節リウマチの家族内発症率が多いこと(対照にくらべ約3.6倍)、また、関節リウマチでは−卵性双生児では34%の発症率と二卵性双生児の7%に比べ高いことから、遺伝的傾向は認められます。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
全身血管炎型では既存の関節リウマチによる多発関節痛に、発熱 (38℃以上)、体重減少を伴って皮下結節,紫斑, 筋痛,筋力低下,間質性肺炎,胸膜炎,多発単神経炎,消化管出血,上強膜炎などの全身の血管炎にもとづく症状がかなり急速に出現します。末梢型動脈炎型では皮膚の潰瘍,梗塞,または四肢先端の壊死や壊疽を主症状とします。全身血管炎型ではリウマトイド因子高値,血清補体価低値,免疫複合体高値を示します。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
基本方針は、1)それまでの抗リウマチ剤による関節リウマチ自体の治療を継続することを原則とします。また、2)関節機能不全の進行に留意して治療します。3)寛解するまでは入院治療を原則とします。4)その上で悪性関節リウマチに対する治療を行います。悪性関節リウマチに対するの薬物治療にはステロイド剤,免疫抑制剤,D−ペニシラミン,抗凝固剤などがあり,そのほか血漿交換療法も行われます。また、治療法の選択は臨床病態により異なります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
最近の疫学調査成績では、悪性関節リウマチの転帰は,軽快21%,不変26%,悪化31%,死亡14%,不明・その他8%です。死亡の原因は呼吸不全が最も多く、次いで感染症の合併,心不全,腎不全などがあげられます。