■定義
閉塞性血栓血管炎とも呼ばれ、四肢の主幹動脈に閉塞性の血管全層炎をきたす疾患である。とくに下肢動脈に好発して、虚血症状として間欠性跛行や安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍、壊疽(特発性脱疽とも呼ばれる)をきたす。また、しばしば表在静脈にも炎症をきたし(遊走性静脈炎)、まれに大動脈や内蔵動静脈にも病変をきたす。
■疫学
年間の全国推計患者数は約10,000人(95%信頼区間8,400〜12,000人)であり、男女比は9.7対1と圧倒的に男性が多い。推定発症年齢は男女とも30代から40代がもっとも多いが、現在の患者の中心は45歳から55歳であり、患者の高齢化が示唆される。
■病因
特定のHLA(human leukocyte antigen)と本症発症の関連性が強く疑われており、ある遺伝性素因に何らかの刺激が加わると発症するとの説が有力であるが、原因はいまだ不明である。発症には喫煙が強く関与しており、喫煙による血管攣縮が誘因になると考えられている。最近の疫学調査では患者の93%に明らかな喫煙歴を認め、間接喫煙を含めるとほぼ全例が喫煙と関係があると考えられる。歯周病との関連が疑われ検討が行われている。
■症状
四肢主幹動脈に多発性の分節的閉塞を来すため、動脈閉塞によって末梢の虚血の程度に応じた症状を認める。虚血が軽度の時は冷感やシビレ感、寒冷暴露時のレイノー現象を認め、高度となるに従い間欠性跛行や安静時疼痛が出現し、虚血が最も高度となると四肢に潰瘍や壊死を形成して特発性脱疽と呼ばれる状態となる。
また爪の発育不全や皮膚の硬化、胼胝を伴い、わずかな刺激で難治性の潰瘍を形成する。
最近増加している閉塞性動脈硬化症と同様な症状であるため、鑑別診断に注意を要する。
■治療
間接喫煙を含め、禁煙を厳守させることが最も大切であり、このために適切な禁煙指導を行う必要がある。また患肢の保温、保護に努めて靴づれなどの外傷を避け、歩行訓練や運動療法を基本的な治療として行う。
薬物療法としては経口抗血小板製剤や抗凝固薬、プロスタグランジンE1製剤の静注などが行われる。重症例に対しては末梢血管床が良好であれば、バイパス術などの血行再建を行う。
血行再建が適応外とされる症例では、交感神経節切除術やブロックが行われている。
肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療の有用性が明らかになってきている。
■予後
生命予後に関しては閉塞性動脈硬化症と異なり、心、脳、大血管病変を合併することはないため良好であるが、四肢の切断を必要とすることもあり、就労年代の成年男性のQOL(quality of life)を著しく脅かすことも少なくない。
難治性血管炎に関する調査研究班から
ビュルガー病(バージャー病) 研究成果(pdf 20KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。
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