1 概念・定義
運動ニューロン疾患のうちで一次(上位)運動ニューロンのみが選択的、進行性に障害され、二次(下位)運動ニューロンは保たれる原因不明の疾患である。若年から中年以降にわたって幅広い年齢層に発症する。PLSは、一次運動ニューロン障害が前面に出た筋萎縮性側索硬化症(ALS)との鑑別が困難な場合があり、前頭側頭様変性症との関連を指摘する意見もある。しかしながら、数はすくないもののPLSの剖検例はALSや前頭側頭様変性症とは異なる病理像を示しており、これらとは異なる疾患と考えられる。一方、臨床的には家族歴の明らかでない遺伝性痙性対麻痺との鑑別は困難であり、この点に留意する必要がある。
2 疫学
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「神経変性疾患に関する調査研究班」が2005年から2006年にかけて全国アンケート調査を実施したところ、日本での有病率は10万人当たり0.1人、筋萎縮性側索硬化症症例の2%という結果であった。
3 病因
本疾患の診断基準では家族歴がないということになっており、この基準をみたすものの原因については全く不明という現状である。
なお常染色体劣性遺伝を示す家族性筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子(ALS2)として同定されたalsinが、その後若年型PLS、家族性痙性対麻痺の原因遺伝子であるという報告もあり、今後疾患概念、診断基準、病因について再検討されるものと思われる。
4 症状
通常50才以降に下肢の痙性対麻痺で発症する例が多いが、なかには上肢、まれではあるが嚥下・構音障害等の仮性球麻痺症状で初発する例も報告されている。一般的に筋萎縮性側索硬化症に較べて進行は緩徐とされている。
筋萎縮や線維束性収縮は通常認められず、筋電図でも二次運動ニューロン障害を示す所見はないとされるが、罹病期間が長くなると軽度の二次運動ニューロン障害を示した症例も報告されている。
頭部画像では、萎縮が確認できない症例から中心前回に限局性した萎縮、前頭葉に広範な萎縮を認めた症例も報告されている。
5 治療
根治的な治療はないが、痙縮に対して内服治療やリハビリテーションが行われる。
情報提供者
研究班名 神経変性疾患
情報提供日 平成21年4月1日
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