難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

下垂体機能低下症/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 下垂体機能低下症とは
下垂体は6つのホルモン(副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH))を分泌しますが、これらのホルモン分泌が不十分である疾患を下垂体機能低下症といいます。下垂体ホルモンは、様々な臓器に作用しますので、それが欠けた状態である下垂体機能低下症では全身のいたるところにさまざまな症状が出現します。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
平成13年に行われた成人下垂体機能低下症疫学調査では1464名の方が、当時受診されていたことがわかっていますが、実際の患者さんはさらに多いものと考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか
多くの場合、下垂体を含む脳の腫瘍、炎症、外傷により、下垂体がきずついて発症します。分娩時の大量出血の結果、分娩後の女性におこることもありますが、その頻度は以前に比べて少なくなってきています。生まれついてのものもありますが、頻度はまれです。

4. この病気の原因はわかっているのですか
下垂体を含む脳の腫瘍、炎症、外傷によることが最も多いことが知られています。ほかに、分娩時の大量出血、出生時の異常や障害、遺伝的なものもあります。原因のはっきりしないものもあります。

5. この病気は遺伝するのですか
ほとんどの場合、遺伝とは無関係です。ごく一部に、下垂体ができあがる際に必要なタンパクの異常により生じることがあり、この場合は、遺伝することがあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
不足するホルモンの種類、不足の程度により異なります。ACTHが不足した場合、副腎皮質ホルモンが十分合成できなくなり、その結果、倦怠感、低血圧、低血糖、食欲不振、意識障害などが出現します。TSHが不足した場合、甲状腺ホルモンの合成分泌が低下し、甲状腺機能低下症が発症、倦怠感、寒がり、皮膚の乾燥、脱毛、集中力・記憶力低下などが出現します。LH、FSHの不足では、性ホルモンが不足し、体型が変化したり、性機能が低下したりします。また、不妊の原因となります。GHが不足した場合、小児では成長の遅れが生じます。成人では、体脂肪の増加、筋肉量や骨塩量の低下、気力、活動性の低下がみられます。PRLの不足の場合、授乳中の女性では乳汁分泌の低下が生じます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
原因となっている脳の腫瘍、炎症、外傷がある場合には、それに対する治療が行なわれます。下垂体ホルモンの分泌低下が続く場合には、ホルモン補充療法を行ないます。ACTHが不足している場合には、通常副腎皮質ホルモンの経口投与を行ないます。TSHが不足している場合には、甲状腺ホルモンの経口投与を行ないます。LH、FSHが不足している場合は、必要に応じて性ホルモンの補充をおこない、妊娠を希望される女性の場合や男性不妊の場合、排卵誘発療法や、精子形成をすすめる治療を行ないます。GHが不足している場合、小児では成長の遅れが生じますので、GH補充療法をおこないます。成人では身長には影響しませんがGHの補充をおこなうことが有益であることがわかり、最近補充療法がおこなわれています。RPLに関して補充療法は行われていません。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
原因となっている疾患が治療されている場合、不足しているホルモンを補充している限り、健常な方と同様の生活を送ることができます。ホルモンの必要量は、体の状況に応じて変動しますので、それにあわせて調整することが重要です。とくに、ACTHが不足している場合、副腎皮質ホルモンの補充が必要となりますが、発熱や感染時には、通常より多く服用するなど自分で服用量を調整する必要があります。これらのことができている限り、日常生活に特に制限はありません。


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